四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

 

モダンな「苔よせ」。

 京都の庭に欠かせない植物といえば、まず思い浮かぶのは苔だ。しっとりと雨に濡れる梅雨の頃の美しさはもちろん、芽吹く春もまた溌剌とした美を感じさせてくれるもの。ふさふさとした玉苔、シダのような忍(しのぶ)苔、緑の色が鮮やかな砂苔、杉の葉のような姿の杉苔、地面を這う淡い黄緑の這(はい)苔、細い葉のような山苔。日本に2000種近くある苔のうち、表情の異なる苔をモザイク調に並べ一幅の絵のように仕立てたのが『みたて』春のあしらい。自然を写し取るような植え込みや盆栽に使われる苔を、あえて苔同士の境を直線的にすることでモダンさを醸し出し、デザイン性を加えた。苔の個性を際立たせつつも調和を見せている。
 桜が終わり新緑に心奪われるこの季節、足元に広がる苔を愛でたい寺社も数多い。苔寺の名で知られる西芳寺は夢窓疎石の作と伝わる庭を、120種以上の苔が埋め尽くす。ふかふかとした絨毯のように庭一面に広がる苔を楽しむ三千院。重森三玲の作、立体感ある苔が市松に配された東福寺の本坊庭園・北庭。野趣を感じさせる起伏に富んだ境内を苔が覆う常寂光寺。庭を装う姿はもちろん鉢植えでの展示も楽しめる祇王寺。花や木々ばかりが、主役ではない。苔を愛でるのもまた眼福と思わせる、春のひとときを楽しみたい。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2020年6月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。