四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

 

祈りを込めた「野山の見舞い」。

 桜の季節が終わり、芽吹いた新芽や新緑がいきいきと輝く季節。京都盆地を囲む山々も、日々鮮やかさを増し、生命力に満ち溢れた姿を見せている。北は比叡山から南は伏見稲荷大社のある稲荷山へと続く東山連峰。東の鞍馬山から西の愛宕山へと連なる北山連峰。北の愛宕山から嵐山を経て、天王山へと続く西山連峰。普段の暮らしの中で目に留まる山の姿は、鴨川の流れとともに、京都が都市でありつつも自然と共存する街であることを実感させてくれる。
 山々に分け入れば、足元を彩るのは可憐に花を咲かせる野花。その空気を切り取り、届けるような初夏の便りが「野山の見舞い」だ。タツナミソウやイワギリソウ、ハナシノブなどと次々と移り変わって咲く野花をごく小さな鉢に植え、和紙の袋にそっと収めた。袋に描かれたプリミティブな花と実、虫の絵にも、落ち着かない日々を明るく過ごしてほしいと見舞う気持ちが込められている。小さな植木鉢に見立てたのは、友禅染の工程で糊を置くために使われる糊筒の先端を切り取ったもの。柿渋を塗り重ねた筒は、用の美を持つ道具。深く落ち着いた色合いが、野花の可愛らしさを際立たせる。なにげない日常にありがたみを感じるような、山からの便りだ。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2020年7月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。