社会現象を起こしたきくちゆうき氏による4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』が、『100日間生きたワニ』としてアニメーション映画化。新型コロナウイルス感染症の影響により公開を延期していましたが、いよいよ2021年7月9日(金)より全国ロードショーとなりました。


本作は、2019年12月12日から2020年3月20日まで、原作者きくちゆうきのTwitterにて100日間毎日投稿された、何気ないワニの日常を綴った4コマ漫画が原作。『カメラを止めるな!』の上田慎一郎さんが監督を務める映画では、その100日間のワニの日常と、そこから100日後、大切なものを失った仲間たちのその後の姿が描かれます。

主人公・ワニの声優を務めるのは、神木隆之介さん。俳優としての活躍に加え、スタジオジブリや新海誠監督作品で声優を務め、最近では『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にも出演し反響を呼びました。

そして、またしても話題作『100日後に死ぬワニ』で主演に抜てき。名監督たちは、神木さんの“声”のどこに惹かれて起用しているのでしょうか? 今回は、神木さんが過去出演した作品と演じた役を、魅力と共に振り返って行きましょう。

■声変わりまでキャラクター表現にしてしまう、神木隆之介の“声”


1995年、わずか2歳で子役デビューした神木さん。声優としては、2001年にジブリ映画『千と千尋の神隠し』の坊役に出演し、それが声優デビュー作となりました。甘やかされて育った傍若無人な赤ちゃんという役を、あどけない声で熱演。千尋との交流、油屋以外の世界を初めて知り成長していく様子を、当時8歳という年齢で表現しました。

その後、同じくジブリ映画『ハウルの動く城』にマルクル役(2004年)、『ドラえもん のび太の恐竜2006』にピー助役(2006年)、『ピアノの森』に雨宮修平役(2007年)として出演。ピー助に至っては「ピューイ」という鳴き声のみのセリフに、喜び、怒り、悲しみなど全ての感情を詰め込み、多くの人たちを感動させました。



そして、筆者が「神木さんの声優としての才能をステップアップさせた」と思うのが、2009年に演じた『サマーウォーズ』(細田守監督作)の小磯健二。ここで神木さんは、声変わりを経験します。気弱な高校2年生という役どころに、安定しない少し高音を残した声がぴったり! 特に、高い音程を出そうとすると出てしまう上ずったかすれ声に、思春期の男の子らしさが溢れていました。


また、物語前半での内気な性格から、後半にかけての精神面での成長も声を使って表現しており、声にも演技にも1本“芯”が通った印象を持ちました。

■『アリエッティ』で新境地! 優しさと残酷さを持つ少年役


声変わりを経ても、中性的さを残し、良い意味で素朴さのある声となった神木さん。その後に出演したのは、またもやジブリ作品。『借りぐらしのアリエッティ』で落ち着いていて大人びた少年・翔役を演じました。

その性格を表わすような穏やかで優しい声は、清廉されているようで、どこか感情を隠しているよう。悲しみも喜びも最低限の反応で、ときには残酷な言葉を投げかける難しい役柄でしたが、神木さんは見事に演じ切りました。

■『君の名は。』で確かな成長、そして『シン・エヴァ』碇シンジ役へ


神木さんのもう1つの声優としての転機となったのは、2016年公開の映画『君の名は。』(新海誠監督作品)ではないでしょうか。
オーディションではなく、新海誠監督の指名で主人公・立花瀧役に選ばれた神木さん。その理由を、新海監督は「中性的な魅力や演技力の確かさを考えると、神木さん以外には行き着かなかったです」とインタビューで語ります。その要望通り、神木さんは「男女が入れ替わる」と設定に合わせ、男女二役を熱演。高い演技力を見せつけました。

そして、本作では神木さんの声優としての成長を“息遣い”から感じることができます。
キャラクター性だけでなく作品そのものを息遣いで表現し、視聴者をスクリーンに釘付けにさせる技術は、劇場で観ていて「なんて繊細なお芝居なんだろう」と感じたことを覚えています。

この年、『君の名は。』での演技が評価され、声優アワードの主演男優賞にも輝きました。


声優としての確かな功績を経て、今年、2度の公開延期を経て上映された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で、なんと成長した碇シンジ役を演じました。事前告知のない出演だったので、ファンは驚き。なぜ緒方恵美さんがそのまま演じなかったのか? 現在たくさんの憶測が飛び交っていますが、真相は明らかにされていません。
しかし、これまでとは違う「新しい世界で大人になったシンジ」と考えると、大人びた顔つきに神木さんの中低音が合っていたと感じます。

■日本を代表するアニメ監督を魅了する神木隆之介
宮崎駿監督、細田守監督、新海誠監督、そして庵野秀明監督と、日本を代表するアニメーション監督を魅了する神木さん。

7月9日に公開された『100日間生きたワニ』で神木さんをワニ役に選んだ理由について、上田監督は「ワニが持つ天真らんまんさ、まっすぐさ、素朴さにぴったりだと思いました」と語っています。

まさにその通り。神木さんの本来持つ真っ直ぐで芯のある演技、良い意味で素朴さを持った声、変に“作り過ぎない”キャラクター作りなど、神木さんの声の魅力は役に合わせた等身大の表現だと感じます。

原作が多くの人の胸に感動を届けたように、おそらく映画も素晴らしい大作になっているような予感がする『100日間生きたワニ』。神木さんの演じるワニが、どんな魅力あるキャラクターに仕上がっているのか、ぜひ劇場に足を運んでチェックしてみてくださいね。


『千と千尋の神隠し』(C) 2001 Studio Ghibli・NDDTM
『サマーウォーズ』(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS
『借りぐらしのアリエッティ』(C) 2010 Studio Ghibli・NDHDMTW
『君の名は。』(C)2016「君の名は。」製作委員会
『100日間生きたワニ』(C)2021「100日間生きたワニ」製作委員会