今年も10月31日から「第34回東京国際映画祭」が開催される。昨年に続いて僕がジャパニーズ・アニメーション部門のプログラミング・アドバイザーを担当する。今回は今年の編成の狙いを解説したいと思う。

9月28日、東京国際映画祭のラインナップ発表会見が開かれた。そこに僕も登壇してジャパニーズ・アニメーション部門の内容を紹介した。昨年の発表会では、僕は新任となることを紹介されただけで、特に部門についての狙いを話す機会はなかった。なので今回の登壇では、まず自分がこの部門をどう考えているか、以下のような内容をかいつまんで説明した。

1958年の『白蛇伝』公開をひとつの節目とすると、戦後日本のアニメーション産業が本格的に立ち上がってから今年で63年になる。この63年の中、アニメの表現を進化を重ねてきた。その進化に大きな影響を与えた大きな存在のひとつが、先行する実写映画の表現だ。実写映画の表現の影響を色濃く受けた画面づくりは、日本のアニメの特徴といえる。このように単に長編アニメーションが制作されているだけにはとどまらない深い関係性が、アニメと「映画」の間には存在するのだ。

一方でアニメは「フレームの中を作り込むメディア」であるのに対し、実写は「フレームで世界を切り取るメディア」であるという違いも存在する。また、中にはアニメは「役者の身体を撮っていない」から「映画ではない」という極端な考えもある。こう考えるとアニメ映画と実写映画は本質的に異なったメディアであるというのもまた事実だ。

ストレートに「実写映画」の中に繰り込むには遠く、しかし「映画」とは深い関係性にあるアニメ。アニメ映画と実写映画の関係性は、親しいところと遠いところが共存する「不即不離」の関係にあるのだ。それを「うんうん、これもまた“映画”だね」という形で包摂しているのが――特別に独立得した形で設けられた――ジャパニーズ・アニメーション部門であろう、ということだ。

これは関係者が考えた部門設立の狙いなどとはあまり関係なく、あくまで僕が自分なりに、「なぜ映画祭の中に独立した部門という形でアニメ部門があるのか」という点を考察した、その回答だ。

ジャパニーズ・アニメーション部門のコンセプトは、この「不即不離」の関係を前提にした。ひとことでいうと、映画を「入口」にして興味を持ってもらい、最終的な「出口」はアニメになるようなプレゼンテーションを目指したのだ。

具体的には「現在」と「歴史」が大きな柱になる。「現在」では、最新のアニメ映画をピックアップすることで、今アニメの作り手がどのような問題意識で作品に向き合っているかを示す。「歴史」では、どのような経緯でアニメが「今」に至ったのかをプレゼンテーションする。

東京国際映画祭では、上映だけでなく関係者などが語り合う一種のシンポジウム「マスタークラス」も設けられる。そこで、特集上映とマスタークラスのテーマを同じに設定して、マスタークラスを作品の「解説」的な位置づけにすることで、関係者の言葉で「今」と「歴史」をより明確に伝えられるように組み立てた。

例えば昨年は「今」を伝えるために「2021年、アニメが描く風景」という特集を組んだ。そして特集で上映する作品と特別招待作品の監督4人に登壇していただいてマスタークラスも行った。マスタークラスの様子は今もYoutubeで見ることができる(https://youtu.be/FeSQUgUjTB4)。

このような考えの下、今年の特集プログラムも組み立てた。

まず「今」を伝える特集については、「2021年、主人公の背負うもの」というテーマを掲げた。ここではジャパンプレミアとなる湯浅政明監督の『犬王』を筆頭に、東京国際映画祭が初お披露目となる『フラ・フラダンス』(総監督:水島精二、監督:綿田慎也)、『グッバイ、ドン・グリーズ!』(監督:いしづかあさこ)、そして本年6月公開の『漁港の肉子ちゃん』(監督:渡辺歩)を上映する。4作品のうち3作品が未公開作品という点で、映画祭らしいラインナップになったと思う。

そして「歴史」を伝える特集は、本年3月に亡くなられた大塚康生氏の仕事をフィーチャーする「アニメーター・大塚康生の足跡」。こちらでは氏がキャリアの初期に原画で参加した『わんぱく王子の大蛇退治』(監督:芹川有吾)と、氏の代表作の一つ『じゃりン子チエ』(監督:高畑勲)、そして記録映画『飄々〜拝啓、大塚康生様〜』(監督:宇城秀紀)を上映する。昨年この「歴史」パートでは、『劇場版ポケットモンスター』のレトロスペクティブを行ったが、今年はより「アニメの歴史」そのものにフォーカスしている。

そして3つ目の特集は昨年同様、「特撮」を扱っている。「特撮」は2019年にジャパニーズ・アニメーション部門が設けられた時から、部門の中に組み込まれることが決まっていた。これは「特殊撮影」が対象になるというよりは、アニメの隣接領域として、キャラクター性の強いもの――端的にいうと怪獣やヒーロー――を扱うコーナーを期待されていると解釈した。そこで昨年は「戦隊シリーズ」、今年は「仮面ライダー」をピックアップすることを決めた。

『仮面ライダー』は50周年を迎えた今年5月、新企画を3つ発表した。それが『シン・仮面ライダー』(庵野秀明監督)、『仮面ライダーBLACK SUN』(白石和彌監督)、アニメ『風都探偵』の3作品である。そこでジャパニーズ・アニメーション部門では「『仮面ライダー』の未来へ」というタイトルを掲げ、新企画3作品のオリジンとなる『仮面ライダー』『仮面ライダーBLACK』『仮面ライダーW』の劇場用作品を上映することにした。「特撮」であっても、「今」と「歴史」という観点は同じで、新企画が「今」を担っているので、それに対する「歴史」を振り返る形で上映作品を決めた。

以上が2021年のジャパニーズ・アニメーション部門の概要だ。マスタークラスはYoutubeで配信されるので、東京の上映に来られない人にも是非見てもらいたいと考えている。