「One Rugbyの絆」連載第5回、タグフットボール協会・岡村剛さんに聞く魅力

 日本ラグビー界に新たなうねりを起こすべく立ち上がった「NPO法人One Rugby」。元日本代表主将の廣瀬俊朗氏が代表理事を務める団体では、15人制や7人制(セブンズ)、車いすラグビーといった一般になじみのあるものから、10人制ラグビー、デフラグビー、ブラインドラグビー、タッチラグビー、タグフットボール、ビーチラグビーまで、「ラグビー」に分類されるあらゆる競技が協力し、競技の持つ魅力を広く社会に伝えていくことを目的とする。

「One for all, all for one」の精神で1つのボールを全員でゴールまで運び、試合終了の笛が鳴れば、敵味方関係なく互いの健闘を称え合う。ダイバーシティ=多様性のスポーツと言われるラグビーが、現代社会に提供できる価値は多い。「THE ANSWER」では、「One Rugby」を通じてラグビー界、そして社会が一つになれることを願い、それぞれのラグビーが持つ魅力を伝える連載「One Rugbyの絆」をお届けしている。

 第5回は、タックルの代わりに腰につけた2本のタグを取り合うタグフットボールだ。オーストラリアから日本へ初めて競技を輸入し、現在はNPO法人日本タグフットボール協会代表を務める岡村剛さんに聞いた。

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 タグフットボールは1992年にオーストラリアで始まったスポーツだ。1チーム8人が戦うグラウンドは、15人制の約半分の大きさで、試合は20分ハーフ。スクラムやタックルはなく、腰につけた2本のタグを1本取るとタックル成立と見なされ、プレーは中断。6回タグが奪われると攻守交代し、トライのみで加算される得点で勝敗を決する。

 日本では小学校の体育の授業でタグラグビーが採用されているが、両者は似て非なる物。岡村さんは「タグフットボールは大人のタグラグビー、と紹介しています」と話す。大きな違いは、タグフットボールではキックが使えること。そのため、より15人制のラグビーに近いスタイルだが、コンタクトプレーがないので安全に楽しめる。競技人口はオセアニア地区を中心に世界で25万人以上を数え、2012年からは3年ごとにワールドカップ(W杯)を開催。日本も第1回大会から参加し、ラグビー元日本代表の北川智規氏らが出場している。

 岡村さんがタグフットボールと出会ったのは、1996年から10年を過ごしたオーストラリアでのことだった。学生時代にラグビー部だった岡村さんは、働きながら現地クラブチームでプレー。だが、一年中ラグビーをする日本とは違い、オーストラリアではラグビーは冬季限定スポーツで、夏にはクリケットや水泳、テニスなど他競技を楽しむ人がほとんどだった。

「1年の半分しかラグビーがなくて悲しいと思っていたら、現地の友人に夏のスポーツとしてタグフットボールというものがあるからやらないか、と誘ってもらったんです」

 興味津々に出かけ、体験してみると、想像以上に楽しかった。コンタクトプレーがないため故障リスクが少ない。そのため、子どもたちにとってはラグビーを始める入口として、一線を退いた経験者にはラグビーに代わる楽しみとして、幅広い層の人々が「生涯スポーツ」として楽しんでいる光景があった。

タックルの代わりに腰につけた2本のタグを取り合う【写真提供:JTFA】

「足が遅くてラグビーを諦めたという子が、誰よりも活躍して貢献することも」

 冬はラグビー、夏はタグフットボールを楽しむ生活を続けた岡村さんは、2005年に帰国すると日本でタグフットボールの楽しさを伝える活動を始めた。2013年にはNPO法人日本タグフットボール協会を立ち上げ、代表に就任。2016年からは淡路島で全国大会を開催している。全国大会には約200人の参加者が集い、国内の競技人口は推定1000人にも上る。だが、「どうしても子どものスポーツというイメージがあるのか、なかなか普及できていないのが正直なところです」と明かす。

 タグフットボールの魅力はどこにあるのか。岡村さんは「本当に15人制のラグビーに近くて、遊びだけではなく真剣勝負も楽しめるところです」と話す。

「ボールやルールが同じだけではなく、本当にスキルフルな競技で、キックも使えるし、コンビネーションプレーもできる。昔、本気でラグビーをしていた人は、当時を思い出すようなラグビーができるんです。一方で、ラグビーをしたいけどタックルが怖いとか、一歩踏み出せないジュニア世代には、ラグビーを始める導入部分にしてもらえればいい。そこで好きになったら、本格的に15人制に移ってもらう形でもいいと思います。

 もちろん、タグフットボールにはタグを取るという独自のスキルも必要です。でも、実は足が速い子でもタグを取るのが苦手な子はいて、いつまでたっても取れない子は取れない。逆に足が遅くてもディフェンス面で活躍して、タグを上手く取る子もいる。足が遅くてラグビーを諦めたという子が、タグフットボールでは誰よりも活躍してチームに貢献することもあるので、新たな気付きも多いんです」

 また、コンタクトのないタグフットボールは、ラグビー離れを食い止める一つの解決策になるのではないか、と岡村さんは考えている。

「タグラグビーは小学生が一つの区切りになっているので、本当にタグラグビーが好きな子が中学生になって続ける場所がなくなってしまうことが多いんですね。そういう子どもたちにタグフットボールに参加してもらってスキルアップを図り、高校生になったらラグビー部に入ってもらえたら。私の生まれた大阪では小学校からフルコンタクトのチームがあって、クラブ活動としてラグビーがある中学もありますが、隣の兵庫県の中学にはほとんどありません。ここでラグビー離れが起きてしまう。タグフットボールはそれを繋ぎ止める一つの道になるのかなと。

 また、15人制ラグビーでは、足は動くけれど首を怪我したからコンタクトプレーができず、引退しなければならないという方もいます。そういう方にタグフットボールを選択してもらえるような循環が生まれたらいいなと思います」

タグフットボールには「生涯スポーツ」としての魅力も【写真提供:JTFA】

昨年のW杯後には体験の問い合わせが多数「親子で体験してみたい」

 昨年のラグビーW杯で日本代表が大活躍した後には、タグフットボールにも多くの問い合わせが寄せられたという。中でも多かったのが「親子で体験してみたい」という声だった。

「これまではお父さんがラグビー経験者だから子どもにも勧めるパターンが多かったんですが、今回はW杯を見てお父さん自身がラグビーボールを持ってみたいと思うことが多かったようです。タグフットボールならタックルがないから、お母さんも一緒に家族で体験してみたいという問い合わせが多かったですね」

 実はタグフットボールには、家族全員で世界を目指せる魅力もある。2012年から始まったW杯はクラス分けがされていて、A代表に等しい男女それぞれのオープンクラスを頂点に、男女混成クラス、30歳以上、40歳以上、50歳以上といった年齢別クラスがある。「何歳になっても世界を目指せる、世界一に挑戦できるという楽しみもありますね」と岡村さん。子どもがオープンクラスの代表となり、親が年齢別代表になって、W杯に出場するケースも生まれるかもしれない。

 今回「One Rugby」に参加したのは、こういったタグフットボールの魅力だけではなく、広くラグビーの持つ魅力を伝えたいという思いがあるからだ。これまで「One Rugby」のメンバーと話し合いを重ねる中で感じたのが「やはり土台として、みんなラグビーが好きなんですよね」と笑う。

「不思議なもので、初対面でもお互い『ラグビーやってます』って言うと、すぐに馴染んでしまうんですよね。どの国だろうがどの人種だろうが、垣根なく話ができる。ラグビーという一つのワードでまとまれるのは素晴らしいと思います。その中でもタグフットボールはマイナーなスポーツなので、他の競技の方に助けていただくことが多いとは思いますが、協力して大きな固まりとしてアピールし、それぞれの競技が世に知られるようにしていきたいですね」

 コロナ禍による自粛期間中に「One Rugby」のミーティングを重ね、少し先の未来に向けていろいろなアイディアが出てきたという。「組織としてまとまることができた時間だったと思います」という岡村さん。今後の活動に注目が集まる。

【岡村さんが見る「車いすラグビー」のここがスゴイ!】

 それぞれの競技を体験してみたいという気持ちがありますが、特に車いすラグビーは一度やってみたいですね。私自身、年齢的にももう落ち着いていると思っていますが、見ているだけでも、あの激しいぶつかりあいから、何か違う感情が沸いてきそうな競技ですよね。実際にプレーしたら、ズタズタにされるんじゃないかと思っています(笑)。

(次回はデフラグビーの大塚貴之さんが登場)(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)