「東北『夢応援』プログラム」の中間発表イベントにオンラインで参加

 東北南部が梅雨明けする前日の8月1日、福島県南相馬市の小学生たちが元バスケットボール日本代表選手とオンラインを通じて有意義な時間を過ごした。この日、オンライン会議システム「Zoom」上で行われたのは「東北『夢』応援プログラム」の中間発表イベント。ここで福島出身の渡邉拓馬氏と鹿島ミニバスケットボールスポーツ少年団の子どもたち16名が交流を図った。

 東北「夢」応援プログラムは、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子供たちの夢や目標を応援するプログラムだ。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子供たちがそれぞれに掲げる1年後の目標に向かって、遠隔指導ツール「スマートコーチ」でサポート。1日限りのイベントで子供たちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられるという画期的な試みだ。

 通常であれば、渡邉氏が現地に赴き、子どもたちと直接対面。バスケットボールの技術指導やコミュニケーションを図りながら、子どもたちの成長を確かめる場となっているが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響によりオンラインでの実施となった。

 冒頭で「今回そちらには行けませんが、皆さんの日頃の成長は『スマートコーチ』で見ていますよ。今日は楽しく取り組んで下さい」と呼びかけた渡邉氏は、まずは家でもできるウォーミングアップを伝授。床に座って脚を伸ばした姿勢をとり、脚の周りを指先でドリブルしながらボールを動かしたり、立った姿勢で10秒間、左右の手でそれぞれ思い切り速くドリブルをしたり。普段はやりなれないウォーミングアップに苦戦する子どもたちもいたが、渡邉氏は笑顔を見せながら「頭の位置はなるべく変えないで」「お尻をしっかり落とすイメージで」と的確なアドバイスを送った。

渡邉氏が語る身長の伸ばし方は…【写真:編集部】

身長を伸ばすために大切なことは…「よく寝て下さい」

 ウォーミングアップが終わると、いよいよ個人面談のスタートだ。遠隔指導を受けている11人の子どもたちは、渡邉氏とそれぞれ約5分間、オンライン上ながら2人きりで話せる貴重な機会を得た。渡邉氏は事前に、子どもたちの目標・課題と中間発表用の動画をチェック。「シュートの確率を上げる」という目標を掲げた6年生の佐藤悠生(はるき)君には、「とてもいいシュートでした。これをぜひ継続して」と背中を押した。さらに、もう1段階上を目指すポイントとして「シュート後のフォロースルーを意識すること」「シュートを打つ時、右利きは右足が少し前に位置すると打ちやすいこと」などを伝えた。

 同じく6年生の竹田晴翔(はると)君は「レイアップでのシュートを上手くなりたい」という目標を持っていたが、ここでも渡邉氏は「とても素晴らしくて上手。動画を見る限りでは修正点はあまりないです」と絶賛。さらなるレベルアップに向けて「左手でも同じようにレイアップができるようにしたり、ディフェンスをイメージしながら練習するようにしたりするといいと思います」とコツを伝えた。

 オンライン上とはいえ、渡邉氏と2人だけの空間に最初は恥ずかしげな様子を見せる子どもたちが多かったが、的確なアドバイスと温かな応援の言葉をもらうと柔らかな表情に。子どもたちから渡邉氏も活発に質問が投げかけられた。「どうしたら大きな選手を相手に上手くディフェンスできるようになりますか?」という質問には、「まずは自分がやられて嫌なことをやっているといい。フットワークも大事だけど、ボールに手を出されると嫌なもの。ハンドワークも意識してみて下さい」と、実戦で役立つ答えが返ってきた。

 中でも多かったのが「どうしたら身長が伸びますか?」という質問だ。現在は188センチと長身を誇る渡邉氏だが、「小学校6年生の時は152センチくらいでした」と明かす。そして、身長を伸ばすために一番有効だったと振り返るのが「よく寝ること」だ。「僕は好き嫌いはないので何でも食べましたし、よく寝ました。高校生の頃まで1日10時間くらい寝ていたと思います。体を休めることは大切だし、寝ている間には成長ホルモンが出るので、ぜひよく寝て下さい」とアドバイスした。

子どもたちは個人面談で渡邉氏のアドバイスを受け取った【写真:東日本大震災復興支援財団提供】

個人面談に見る新たな可能性「子どもたちの本心が聞きやすい。いい発見」

 約1時間半にわたる中間発表イベントは、あっという間に終わりを迎えた。子どもたちとの時間を楽しんだ渡邉氏は「今日はどうもありがとうございました。中間発表動画を見て、みんなが自分なりに頑張っている姿がうれしかったです。新型コロナウイルスの影響で不自由な環境にはありますが、そういう時こそ自分で考えて工夫するチャンス。常に自分と向き合いながら頑張っていって下さい」と呼びかけ、イベントを締めくくった。

 社会状況が許せば年内にも現地を訪れたいという渡邉氏が、次回以降も続けていきたいと感じたのが、今回初めて取り組んだ個人面談だ。「マンツーマンで話せた方が子どもたちの本心が聞きやすいし、こちらもそれぞれに合ったアドバイスを伝えやすい。やはりそれぞれ個性があるので、同じ選手には育ちません。言葉のチョイスも大切だということも分かり、自分自身のためにもなりました。とてもいい発見になりました」と振り返る。

 スマートコーチを使った遠隔指導と、オンラインを使った個人面談。新たな生活様式に合わせた指導方法は、今後もさまざまな可能性を見出すことができそうだ。(THE ANSWER編集部)