「NBAバズ動画解剖」―プレーオフにSNS上で話題を呼んだ動画を渡邉拓馬が分析

 米プロバスケットボール(NBA)のプレーオフでは、トップ選手たちが世界最高峰のワザで競演している。「THE ANSWER」はプレーオフ期間に特別企画「NBAバズ動画解剖」を実施中。期間中にSNS上で“バズったプレー”を元日本代表・渡邉拓馬氏が独自の視点で解説する。第8回はNBA公式インスタグラムが9月8日に投稿し、約12万件の「いいね!」が集まった「レブロンの高速ノールックパス」だ。

【バズ動画はこんなプレー】西地区準決勝のロケッツ―レイカーズ第3戦、第2クォーター(Q)残り10分。35-38で追うレイカーズは、トップでボールを持つレブロン・ジェームズがドリブルを仕掛けた。2歩踏み込んだところでゴール下でフリーのアレックス・カルーソへノールックパス。ハイスピードのボールを受け取ったカルーソは、落ち着いてゴールを決めた。

 現役最高の呼び声高いレブロンが演出したゴールだが、知ればバスケが面白くなる渡邉氏が見たポイントとは――。

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 これは凄かったですね。トップからレブロンの1on1のシーンですが、ロケッツがゾーン気味に守っていてレブロンのドライブを阻止しようとしていました。画面中央にいるコビントン(33番)がレブロンの近くまでヘルプに来ていて、レイカーズのダニー・グリーン(14番)とカルーソ(4番)のマークをウエストブルック(0番)が1人で2人を守るようなスタイルです。

 画面奥のコーナーにいるクーズマ(0番)にはゴール下のジェフ・グリーン(32番)が寄りますが、ここでロケッツのディフェンスがコミュニケーションミスをしました。ウエストブルックが背後にいるカルーソの位置を把握してなかったのがマークのミス。本来ならゴール下にいるジェフ・グリーンが『下にいるぞ』とウエストブルックに伝えて、ウエストブルックは2人が見える角度にならないといけない。

 もう少し体を斜めにして、ダニー・グリーンとカルーソの位置がわかる体勢をとっていれば反応できたはずです。加えて、レブロンの速いパスと状況判断でパスを通させてしまいました。この状況でレブロンはゴール下の様子をうかがっています。おそらくウエストブルックが自分しか見ていないと気付いている。自分がドリブルした時にその位置が変わらなければノーマークになると予想していると思います。

 ここから左にドリブルをした時にジェフ・グリーンが右に移動しているのが見えている。ゴール下の2人が完全にカルーソを見ていないので、次のドリブルでパスを出します。レブロンのパスはもちろん凄い。パスが速いし、強いです。でも、一番のミスはウエストブルックの位置とジェフ・グリーンのコミュニケーション。ウエストブルックの身体能力なら、準備をしていればこのパスに反応できたと思います。

 スーパースターがいるチームに対して、ディフェンスはこういうシフトをとりますが、一番重要なのがコミュニケーション。試合の中で一人でもコミュニケーションミスをするとこうなってしまいます。ミスに加えて、これを見逃さなかったレブロンの凄さがありますね。

 レブロンはバスケIQの塊です。今シーズンはPGをやっているので、あの身長(206センチ)でシュート、パス、ドリブル、ダンク、ディフェンス、地味なプレーも全てできます。本当に史上最高のオールラウンダー。若い頃から年上のレジェンドとプレーしたり、ドリームチームで経験を積んだり、ファイナルで何度も負けたり。いろいろな経験で学んできたと思います。

 あとは自分勝手ではなく、チームメートを生かすという彼の人間性がスタイルに出ているのかと。他の選手の伸ばし方、生かし方をいろいろな経験で身につけたのだと思います。

 私がジュニア選手に一番学んでほしいところは、ノーマークにしっかりパスができるというところ。自分よがりではなく、チームが勝つためにノーマークの選手にはパスをする。そこがチームスポーツの素晴らしさです。逆にずっと自分がボールを持つ方法もありますが、どちらが最終的に強いかというとチームでボールをシェアしていくことだと思います。

 味方にしっかりパスを通すことで自分にチャンスが来る。パスをもらった選手が何かを始めた時に自分がノーマークになる。ディフェンスを動かすことで最終的に自分にチャンスが来る。そういう流れを知ってほしいと思います。今はSNSやYouTubeで世界のプレーを見ることができます。実際のコートでは見え方も違い、パスがどれだけ難しいかわかりますし、楽しくなると思うのでそういうところを見てほしいですね。

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 相手のミスを見逃さない冷静な状況判断と質の高いパスでゴールを演出したレブロン。レイカーズは112-102で勝利を手にした。世界最高峰の舞台だが、日本のジュニアも学ぶべきポイントが詰まっているシーンだった。(THE ANSWER編集部)