「徳島インディゴソックス球団代表・谷田成吾の野球note」第3回

 昨年12月、野球の独立リーグ・四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスで、26歳(当時)という日本最年少の球団代表に就任した谷田成吾氏。「由伸2世」の異名を取り、アマチュア球界で名を馳せた元スラッガーが、26歳の若さで球団経営に飛び込んだ想い、独立が置かれているリアルな現状、人口減少している野球界に対する未来など、本人が自らの言葉でつづる。

 第3回は「コロナ禍と闘う独立リーグの今」。就任1年目で迎えた今シーズンは新型コロナウイルス感染拡大により、リーグ全体が大きな影響を受けている。そんな苦境でどんな想いを抱えながら、未曾有の感染症と闘ってきたのか。現状をレポートする。

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 開催すら危ぶまれた四国アイランドリーグplus2020シーズンでしたが、6月20日に開幕し、リーグ、各球団、球場の連携の下、徹底した感染症対策や多くのファンの皆さんのご協力のおかげで、最終戦まであと1か月を切りました。

 開幕の遅れや中断期間もあり、ハードな試合スケジュールの3か月でしたが、徳島インディゴソックスは大きな怪我での離脱もなく、選手にとっての運命のNPBドラフト会議を10月26日に迎えようとしています。

 観客動員数減少による全国・世界のスポーツチームの経営悪化が表面化していますが、徳島インディゴソックスも観客動員数は例年の半分ほどとなり、影響を受けています。多くの企業と同じように国や行政の補助を申請し、なんとかこの状況を乗り切るべく、シーズン中も走り回りました。

 なかでも、球団代表として印象深かったのは、シーズン開幕が遅れていることや現状をスポンサー企業の皆様にご説明させていただいた際、多くの方から「一緒に頑張りましょう!」と温かい言葉をかけていただいたことです。苦しい状況下でもお心遣いをいただき、本当にありがたかったと同時に、この窮地を頑張って乗り越えようと思えました。

 新型コロナウイルスと一進一退の攻防を繰り広げながらも、世間の状況は少しずつ好転していると感じていますが、スポーツチームへの影響はこれからさらに本格化します。

 コロナ禍で初めて行われるオフシーズンのスポンサーの契約更新が例年通り行くのか。世界中の企業の状況が大きく変わっている中で、何も影響がないわけがありません。

 球団・クラブの収入の多くを占めるスポンサー収入に影響があるということは、経営そのものに大きな影響があるということ。どの企業も今一番、大切なのは現金だと思いますが、球団・クラブにその影響を乗り切るだけの現金があるかどうか。今、正念場に立たされています。

スペシャルシリーズで開催された野球教室に参加した高橋由伸さん【写真:球団提供】

意識したのは「球団として今できることは何か」

 新型コロナウイルスの影響で試合やイベントができない期間中も、徳島インディゴソックスでは「プロスポーツとして今できること。やるべきこと」を意識し、活動を行ってきました。

「手洗いうがい啓発動画」の作成・拡散のほか、試合がなくともファンの皆さんとの交流の場として「オンライン乾杯チャレンジ」、活動自粛中の野球少年に向けた「オンライン野球教室」、おうち時間の増加による運動不足を解消するための「自宅でできるトレーニング動画」の作成など、市や県などの行政機関と連携し、スポーツチームとしてオンラインの側面から地域に貢献する活動にチャレンジしました。

 徳島インディゴソックスなどの地域スポーツチームは、地元に多くのフォロワーを抱えているため、たとえ数十万人というフォロワーがいなくても、地域に対する影響力はとても大きいです。

 選手も、NPBの一流選手ほどの影響力はないにしても、地元のスポーツ選手として一定の発信力があります。特に徳島インディゴソックスのファンの皆さんはしっかりと見てくれているので、選手には身近な人々を守れるように発信していって欲しいと伝え、実践してくれました。

 特に、友居京太郎主将はコロナ禍の「おうち時間にグラブを磨こう」という投稿で自分の道具を磨く動画を紹介。最近ではメンバーシップと呼ばれるYouTubeの有料会員コミュニティで、試合後の食事風景や愛猫とのツーショットなどを撮影し、ファンの間ではその姿が「尊い」と話題となりました。自ら動き、ファンを獲得する素晴らしい動きだなと感じています。

 また、新型コロナウイルスとの付き合い方も新たなフェーズに突入してきたと思っています。NPBの観客動員上限数も5000人から球場収容人数50%(2万人前後)に引き上げられ、これからは収容人数に合わせた感染対策の上、“正しく恐れていくこと”が重要となります。

 徳島インディゴソックスもしっかりと対策を行った上で、9月には前巨人監督の高橋由伸さん、お笑いコンビ・TIMのレッド吉田さんをお招きしたスペシャルシリーズを開催しました。

徳島インディゴソックスの谷田成吾球団代表【写真:球団提供】

高橋由伸さんを呼んで実現したスペシャルシリーズに「今年で一番楽しかった!」

 私の大学の先輩でもある高橋さんについては、当初、開幕戦に行うはずだったスペシャルシリーズに特別なゲストを呼びたいと思いつきました。地元出身の名投手・川上憲伸さんと、大学時代からプロ野球までのライバルで、私が「由伸2世」と呼んで頂いてたこともあり、関係性の深い高橋さんの2人をゲストで徳島にお呼びできれば、たくさんの方に喜んでいただけると感じ、企画しました。

 開幕戦が延期・無観客となったこともあり、お2人の共演とはなりませんでしたが、お忙しい高橋さんのスケジュールがなんとか調整できたため、今回のスペシャルシリーズが実現しました。

 試合はもちろん、高橋さんが参加した野球教室、トークショーも多くの反響をいただき、当日の観客動員もYouTube視聴者数も今季最多。コロナ禍の開催は難しいことも多かったですが、「今年で一番楽しかった!」と言ってくださる方がいて、開催して良かったと思いました。

 独立リーグ球団にとって、人を多く集めることができるイベント試合は収益の大きな柱であるとともに、こんな時代だからこそ、スポーツで世の中を豊かにできることも多いと思います。

「多くの人が集まり、イベントを楽しむ」というこれまで当たり前だったことを、これからは新しい生活様式の中で構築していく必要があります。私たちは「このように感染対策を行えば、人を呼んだイベントも開催できる」という前例を作り、徳島県や世の中に少しでも以前のような楽しみを増やしていければと考えています。

 こんな時代だからこそスポーツで世の中を豊かにしたいという共通の想いの下、力を持ち寄り、引き続きこの苦境を乗り越えていきます。(徳島インディゴソックス球団代表・谷田 成吾 / Seigo Yada)