闘将を熱くさせたワンプレーを選出、9月は「横浜FCのFWカズ、偉業達成の瞬間」

 サッカー界で最も熱い男が選んだ、漢を感じる熱いプレーとは。

 新たな伝説が生まれた。サッカーJ1リーグ横浜FCの元日本代表FW三浦知良が、9月23日の第18節川崎フロンターレ戦で今季初出場。元日本代表FW中山雅史の45歳2か月1日を大幅に上回る53歳6か月28日でJ1最年長出場記録を更新した。昨季限りで現役引退した元日本代表DF田中マルクス闘莉王氏は、スポーツチャンネル「DAZN」のパートナーメディアで構成される「DAZN Jリーグ推進委員会」との企画で、9月のJ1における「月間最熱モーメント」にこの偉業を選出。「THE ANSWER」のインタビューでカズへの思いを語った。

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「根性といい、姿勢といい、僕らからしたら最高の見本。サッカー選手としてずっと憧れていたということもあるし、日本のサッカーを引っ張ってきた選手。敬意とともに選出しました」

 昨年現役引退し、ブラジルで実業家として活躍する一方、公式YouTube「闘莉王TV」でブラジルの生活を魅力たっぷりに届けている闘莉王氏。そんな闘将がただただ感服したのが、日本だけでなく、世界中を驚かせた53歳カズのJ1出場だ。

 カズにとっては、ヴェルディ川崎(現・東京ヴェルディ)時代の本拠地である思い出の等々力陸上競技場。自身13年ぶりとなるJ1リーグの舞台、首位を快走する川崎との一戦で、ついに今季初先発、初出場を果たした。

 2007年12月1日の浦和レッズ戦(1-0)以来、4680日ぶりとなるJ1のピッチ。今季はルヴァンカップのグループステージ2試合に先発し、リーグ戦では第16節名古屋グランパス戦(3-2)で今季初のベンチ入りを果たしていた。出場はならなかったが、好調を維持してチャンスを掴み、新たな金字塔を打ち立てた。

 カズはかつて闘莉王氏の母国・ブラジルの名門サントスでプレー。サッカー王国でも知名度は抜群だ。日系三世の闘莉王氏は1998年に渋谷幕張高への留学で来日するまで、ブラジルの仲間から「KAZU」と呼ばれていたという。幼い頃から憧れるレジェンドが達成した偉業をこう称えた。

「あり得ない、とにかくあり得ない。凄いことですよ。地球を回ってもこういう選手はいない。本当に日本の宝物。ずっと日本のサッカーを引っ張ってきていたし、どれだけ凄いかと言ったら……比べられるものあるかなと思って考えてみたけど、人間が200歳ぐらい生きるのと同じくらい凄いですね」

 53歳でJ1の舞台。相手は今季1敗しかしていない川崎だった。横浜FCは42歳の元日本代表MF中村俊輔と、39歳の同MF松井大輔もスタメンに名を連ね、合計「134歳トリオ」を結成。世界中で報道されたが、闘莉王氏は「ブラジルでもあのカズがまだやっているぞというニュースがありました」と語る。

田中マルクス闘莉王氏が選ぶ9月の「月間最熱モーメント」は【写真:闘莉王TV提供】

2011年チャリティーマッチでゴール演出の思い出「この人なら何とかしてくれる」

 キングへの尊敬の念が絶えない闘莉王氏。その中でも、カズとともにピッチに立った思い出の一戦を振り返った。

 2011年3月29日、長居スタジアムで行われた日本代表対JリーグTEAM AS ONEの「東日本大震災復興支援チャリティーマッチ」に出場。闘莉王氏はJリーグTEAM AS ONEの一員で先発した。しかし、前半15、19分と立て続けに失点した。重い雰囲気を一変させたのが、後半17分から登場したカズだった。

 同37分。GK川口能活のロングフィードを闘莉王氏が頭で落とし、カズが反応した。相手GKとの1対1からネットを揺らすと、スタンドに向かってカズダンスを披露。闘将は当時を懐かしそうに振り返った。

「あれ、アシストです(笑)。カズさんが入ってきて何とかしようと思っていた中で、能活さんが『最後だから上がってくれ』と。ボールがドンピシャで俺のところにきて、ちょうどカズさんがいいところに走ってくるの見えたので、そこにボール送り込んだ。

『この人なら何とかしてくれるんだろな』と思ったら、その通りだった。その後、カズさんのダンスに鳥肌が立ちましたね。あの舞台でゴールを決めてくれるというのが、さすがキングカズです。星が違います。カズさんに『いつかお返しもらいますよ』という話をしたんですけど、いまだにお返しきていないですね(笑)」

 日本に勇気を与えた“伝説のゴール”から9年半――。闘莉王氏は普段はカズとポルトガル語で会話。「カズさんのポルトガル語、完璧ですよ。そこらへんの通訳より上手いです」と絶賛した。「マルクス」と呼ばれているという。

「マルクスと呼ぶのは怒った時の母親ぐらいなんですけど……さすがあの人は違いますよ!」と表情を緩めた。誰もが憧れ、尊敬する人間性、カリスマ性、その背中を闘莉王氏も追いかけてきた。

「凄くいい人で、オーラがあって、会うだけで元気が出る。これからも記録更新して欲しいですね。カズさんならどこまででもいけると思う。銅像も作って欲しいし、日本の宝。カズさんのストーリーは凄すぎて、なかなか世界でもない例だと思います。日本人としても誇りに思います」

 闘莉王氏だけでなく、多くの選手のサッカー人生に大きな影響を与えたカズ。次はジーコ(鹿島アントラーズ・テクニカルディレクター)が持つ41歳3か月12日の最年長得点記録更新にも期待がかかる。彩り続けるカズの物語。これからも新たなページが紡がれていく。

■田中マルクス闘莉王

 1981年4月24日生まれ、ブラジル出身。渋谷教育学園幕張高を卒業後、2001年にJ1広島でプロデビュー。06年に浦和のリーグ初優勝に貢献し、同年のJリーグMVPに輝く。07年にACL優勝、名古屋移籍後の10年に自身2度目のJ1制覇。03年の日本国籍取得後は日本代表としても活躍し、04年アテネ五輪、10年南アフリカW杯に出場。日本代表43試合8得点の成績を残した。19年12月にJ2京都で現役引退。現在はブラジルで実業家として活動する傍ら、公式YouTubeチャンネル「闘莉王TV」も話題に。(小杉 舞 / Mai Kosugi)