公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「第三のミルク」

 Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「第三のミルク」について。

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 健康面と地球環境への配慮から「できるだけ植物性食品の摂取を増やしていきましょう」という考え方が当たり前となった昨今。世界的なムーブメントとなった食品の一つに、「第三のミルク」があります。

「第三のミルク」とは、牛乳、豆乳に次ぐ存在といわれる植物性ミルクのこと。代表的なものに、アーモンドミルクやライスミルク、ココナッツミルクドリンクやマカダミアナッツミルクなどが挙げられます。「第三のミルク」のムーブメントは欧米から始まりましたが、今では日本でも、健康や美容への意識が高い方を中心に、「乳飲料に代わるミルク」として注目されています。

「ミルク」と聞くと、牛乳に近いイメージを抱く方がいますが、栄養面からみると全く異なります。例えば、アーモンドミルクに含まれる栄養素の含有量は、牛乳・低脂肪牛乳と比較すると、たんぱく質は約1/6、カルシウムは約1/4とかなり少なくなります。なかにはカルシウムをはじめ、植物性食品を中心とした食生活をしている人に不足しがちな栄養を強化している商品もありますが、基本的には「牛乳の代わりになる物」ではありません。

 また、消費者のなかには「豆乳や第三のミルクを飲めば、材料の食材を食べたときと同様の栄養が摂れそう」と期待される方も少なくないと思います。しかし、原材料に含まれる食品そのものと「第三のミルク」も、含まれる栄養素の量は異なります。

 アーモンドミルクの原材料であるアーモンドは、たんぱく質やカルシウム、ビタミンE、食物繊維が豊富です。ほか、フラボノイドなどのポリフェノールやオレイン酸など、生活習慣病予防によいとされる成分が含まれ、非常に栄養価の高い食品として知られています。

 健康維持のために推奨されるアーモンドの摂取量は、1日約1オンス(約30g=約30粒)。しかし、市販のアーモンドミルクのアーモンド含有率は約3〜12%(※1)。100mlあたり3〜12gのアーモンドに相当するため、1日200ml飲んだとしても、アーモンドを食べるのと同様の健康効果が期待できるとは言い切れません。

 これはココナッツミルクドリンクやライスミルクにしても同様。ちなみに、豆腐と無調整豆乳も、含まれる栄養素の含有量はイコールではありません。

「摂取できる栄養素の量や期待できる効果」の過信は禁物

 食材そのものと加工されたミルクは「別の食品」。「摂取できる栄養素の量や期待できる効果」を過信するのは禁物です。

 特に、体重、体脂肪を気にしているアスリートは、摂る量にも注意が必要。「植物性ミルク」と聞くと「ヘルシー」「健康的」というイメージを持ちますが、商品によっては砂糖、油脂、塩、フレーバーなど、おいしくするための添加物も少なくありません。スポーツをする子どもや一般のスポーツ愛好家も、購入する際は原材料をチェックしながら選ぶとよいでしょう。

 スポーツをする人の場合、好きな味のミルクを気分転換として食事に取り入れるとよいと思います。例えば、朝食のシリアルやオートミールに、香ばしいアーモンドミルクをかけたり、小腹が空いた時にプロテインバーと一緒に好きな味のミルクを飲んだりする。あるいは、砂糖不使用のアーモンドミルクやライスミルクを牛乳の代わりに、鍋やスープといった料理に使うのもオススメです。

 一見、似ている牛乳、豆乳、第三のミルクですが、それぞれ異なる食品であるということを心にとめて置いてください。そのうえで、目的や好み、シーンに応じて摂りましょう。

 ※1 アーモンドミルクの成分は商品ごとの差が大きい。そのため今回は成分表を公開している日本の商品の一部を例として比較している。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。