連載「女性アスリートのカラダの学校」第28回―「経血管理」

 スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第28回は「経血管理」について。

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 女性アスリートに向けて、体や生理についての講習会や勉強会を行うなか、様々な「生理の困りごと」についての質問や相談を受けます。その一つが「経血管理」です。

 経血管理に関して女性アスリートからもっとも多く寄せられる悩み事は「経血もれ」です。「プレー中、ナプキンがずれるので心配」「ユニフォームが白いので不安」「雨の日はナプキンに経血が広がらないか気になってしまう」など、悩みは尽きません。

 以前、大学生の女性アスリートに対し、「月経時に工夫していること」をテーマにアンケート調査を行ったことがあります。食事やサプリメント、ボディケア、メンタルと多岐に及ぶ回答が得られましたが、「経血管理」についてはやはり「経血もれ」に関する答えが多く集まりました。

 例えば、「黒・紺の下着やウエアを身につける」「下着を二重にする」「ナプキン+ショーツ+スパッツという風に組み合わせを工夫する」「自分にあった生理用品を使用する」などなど。皆、「もれ」の不安を少しでも軽減できるよう、個々に対策を講じていることがわかりました。

 私は経血もれの不安を打ち明けてきた選手で、「ナプキンしか使ったことがない」という選手には、練習中、あるいは試合中だけでも、一度、タンポンを使用してみるのはどうか? と提案しています。

 今では小学生以上の女性アスリートを対象とする講習会でも、「タンポンは何歳から使えますか?」という質問は当たり前に出ます。タンポンは初経を迎えていれば使用は可能です。ただし、初経を迎えてから3年くらいは、生理が安定せず、経血量も少ない傾向があります。経血が少ない日は大人でも挿入しづらいと感じる方もいるため、初経を迎えたばかりの選手は、生理のサイクルや経血量が安定してから、使ってみるとよいでしょう。

 また、「処女膜に傷がつく」という話を耳にして気にされる方もいますが、「膜」とは膣口にある粘膜のヒダです。膣に膜が張り、ふさがっているわけではありません。膣口の開口部は直径約2cmあり、ひだは伸縮性にとんでいます。そのため正しく装着すれば、タンポンを入れても、膣内に傷がつく心配はありません。

 ただし、「正しく装着する」「正しく使う」ことを軽視すると、着け心地が悪くなったり、衛生的な問題につながったりします。

どれが一番自分に合っているか、まずは試してみることが大切

 最近も「ナプキンのずれが気になるのでタンポンに切り替えたが、違和感が強くて困っている」という学生がいました。話を聞くと、彼女はタンポンの説明書を読んだこともなく「何となくこんな感じかな?」というノリで使っていたとのこと。そのため、正しい位置にセットできていなかったのです。

 タンポンはきちんと挿入すれば、膣内の無感覚のゾーンにセットされるので、違和感はありません。適当にセットすると浅い位置に留まってしまい、違和感があったり、ときには腹圧がかかり、外に出てしまったりすることもあります。相談にきた学生には、膣の構造から、どんな体勢でセットすればよいかなどを教えましたが、おそらく、使用したことのない選手の間では、「よくわからない」という感覚のまま使用しているケースは珍しくないと感じます。

 私が教職に従事する日本体育大学には、リプロダクティブヘルスを専門とする先生がいます。その先生曰く、「女性は自分の女性器の構造を知らなすぎる。将来的に妊娠・出産を考えるならばなおさら、自分の体にもっと向き合うべきだ」という話をよくされています。

 今は生理用品を扱う企業のホームページに、女性の体の仕組みから生理用品の使い方まで、しっかりした情報が掲載されています。自分の体を知り、どのように扱えばよいのか。体が資本のアスリートではなくとも、知っておいてほしいと思います。

 今回はタンポンの紹介をしましたが、体内に異物を入れることに対し、恐怖心を持つ選手もいます。あくまで「自分が安心できる方法」「快適な方法」で経血管理を行うことが大事なので、絶対にタンポン使う方がよい、というわけではありません。また、最近ではスポーツ用のナプキンや、経血を吸収するサニタリーショーツもあります。どれが一番自分に合っているのか、まずは試してみることが大切です。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。

須永 美歌子
日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)