世界体操で来日、FIG公式コメンテーターが挙げた内村航平の「2つの功績」

 体操の世界選手権が24日まで福岡・北九州市立総合体育館で行われた。日本代表の内村航平(ジョイカル)は種目別鉄棒で6位。結果は振るわなかったが、五輪と世界選手権を合わせて前人未到の8連覇を達成した32歳は、世界中のファンを魅了してきた。国際体操連盟(FIG)の公式コメンテーターとして来日した英識者は大会中、内村が体操界に与えた功績や東京五輪で予選落ちした際の心境を熱く語っていた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 言葉は熱を帯びていた。英国でフリーランスのスポーツコメンテーターとして活動するオリー・ホグベン氏。「ウチムラはこの世代で最高の選手の一人だね。史上最高の一人かもしれない」。夏冬5度の五輪で51競技を取材してきた。体操は「世界選手権7回。主要大陸大会では全てコメンテーターを務めた」という経験豊富なベテランだ。

 内村は個人総合40連勝の金字塔を打ち立てた。「彼の功績は2つの面から見るべきだ」とホグベン氏。「一つは獲得したタイトルと達成したこと。彼のトロフィーの数々だね。ファンタスティックだよ」とテンション高く言葉を並べた。しかし、直後には「でも、それだけじゃない」と強調。こう付け加えた。

「もう一つは彼が体操界にもたらしたこと。彼はアーティストだ。美しく、スタイリッシュな演技者なんだ。ウチムラについて語るのであれば、メダルについてだけでなく、彼のエレガントさや美しさについても触れなければいけないよ」

 美しい体操を追求し、各国の選手たちに影響を与えてきたことを強調した。「成功が成功を呼ぶんだよ」。一人の活躍が次世代の成長にも繋がるという。

「子どもたちへの影響も間違いなく感じるね。代表チームから若い選手たちまで、日本全体に彼の影響を感じる。それだけじゃなく世界全体にもだ。日本だけじゃなく、世界中に影響を与えている。ウチムラの影響で体操をしている人は多いんだ」

東京五輪の鉄棒落下に自問自答「ウチムラをどのように覚えていたいんだい?」

 生きるレジェンドは両肩痛など満身創痍の状態が続き、20年から鉄棒に専念。東京五輪は種目別鉄棒のみ出場したが、まさかの落下で予選落ちした。ホグベン氏は「悲しかったね」と、多くのファンが抱えた感情と同じ想いを持った。「でも、僕たちは自分自身に問わなければいけない。『ウチムラをどのように覚えていたいんだい?』ってね」。問いを投げかけ、続けた。

「東京五輪で苦戦した体操選手として覚えていたいのか。それとも、その前の五輪でアメージングだった体操選手として覚えていたいのか。僕たちは後者を選ぶと思うよ。一度の落下だけで、長年築いたものが地に落ちるわけじゃないんだ」

 この言葉に共感する人も多いだろう。伝説が色あせるわけがない。内村を見て最も印象に残った大会として、5位発進した今回の予選をあえてピックアップするホグベン氏。「私はもの凄く緊張していた。日本語の『ドキドキ』という感じだね」。独特の雰囲気を醸し出し、心を揺さぶってくれる演技。鉄棒は6位に終わったが、完璧な着地は会場を最も沸かせた。内村が魅せる演技の本質は世界でも変わらない。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)