連載「強い子どもを育てる ミライ・アスリートの食講座」第21回

 栄養・食事の観点からジュニア世代の成長について指南する、「THE ANSWER」の保護者向け連載「強い子どもを育てる ミライ・アスリートの食講座」。プロ野球・阪神タイガースなどで栄養サポートを行う公認スポーツ栄養士・吉谷佳代氏が講師を務め、わかりやすくアドバイスする。第21回は「補食」について。

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 成長期にあたる中学、高校生の選手たちやご家族の栄養相談を受ける際、とても多い相談が「体を大きくしたい」というものです。

 体を大きくしたい場合、現在の体重に合わせたエネルギー摂取量(食事の量)では、いくら筋トレに励んでも、体重や筋肉量は増えません。つまり「体が細い」「トレーニングをしても筋肉がつかない」という場合、まずは食事の量を見直す必要があります。

 では、運動部に所属する中学・高校生の場合、平均的にどのぐらいの食事量が必要でしょうか? 例えば、体重70〜80kgの野球部の高校生であれば、筋トレに力を入れる体作りの時期には1日3000〜4000kcalが必要です。競技種目や運動量により多少、必要なエネルギー量は変わりますが、運動部の子どもは、だいたい、同年代の一般的なお子さんや大人と比較すると、1.5〜2倍ぐらいの食事量になります。

 たくさんのエネルギーが必要である一方、成長期の子どもの内臓は未成熟のため、消化・吸収の力、代謝の力は、大人よりもやや下回ります。ここが、「体を大きくしたい」という子どもの難しい点。たくさんの食事を無理矢理に詰め込むと、内臓に負担がかかり、消化・吸収もうまくいきません。特に夕食時の食べ過ぎは注意。消化に時間がかかるため、就寝中に内臓をしっかり休ませることができず、起きた時にも疲れが取れていないといった問題が生じます。

 食べたものをしっかり体に取り込むには、内臓への負担をなるべく軽くして、消化・吸収を促すことが大切です。そのためには、1日の必要なエネルギー量を、朝・昼・晩の3食に無理矢理詰め込むのではなく、食事の回数を増やして、1回に食べる量を少なくする食べ方が適切。3食の食事+足りないエネルギーや栄養を補う少量の食事、「補食」を組み合わせると、体に負担なく、必要な食事量を食べられます。

補食のタイミングは「練習後」と「午前中」

 補食は1日、1〜3回に分けて摂ります。

 まず、一番摂ってほしいタイミングは、練習後。ここで補食を摂ると、成長に必要なエネルギーが摂れるだけでなく、運動によるダメージから体を回復する(リカバリー)ことにもつながります。

 リカバリーを目的とした補食に適しているのは炭水化物とタンパク質のセット。炭水化物は体重1kgにつき1g、たんぱく質は体重1kgにつき0.3gが推奨される目安量となります。例えば、体重50kgのお子さんであれば、炭水化物を50g、たんぱく質は15gとなり、丁度、あんぱん1個(約100g)と、パック1本分の牛乳(200ml)に相当します。学校から家が遠い、あるいは部活後に塾があるなど、練習後から夕食まで2、3時間、空いてしまう場合は、必ず補食を摂りましょう。

 自宅が学校の近くにあり、練習後から1時間以内に夕食が食べられる場合は、練習後の補食は必要ありません。一刻も早く夕食を食べましょう。ただ、夕食が早い場合、就寝前に小腹が空くお子さんも多いと思います。その際は果物やヨーグルト、お茶漬けなどの補食を摂ります。夜の補食は消化の悪い脂質の多い食べ物――揚げ物や加工食品、インスタント食品などはNGです。また、寝る直前に食べると消化が間に合わないので、就寝の1時間前までに食べ終わるようにしましょう。

 2番目に摂りたいタイミングは午前中です。

 朝練習を行うチームは、子どもの起床時間も5時や5時半など非常に早くなります。そのうえ、短時間で支度をして家を飛び出す子どもも多く、「朝ごはんは食べた?」と聞くと、「食欲も時間もなくて食べられない」と答える選手が目立ちます。

 大前提として、朝はしっかり食べられない日でも、果汁100%のジュースや牛乳などの飲み物1杯とバナナやパンといった固形の食品をお腹に入れてから家を出るよう心掛けます。そして、朝練後もしくは1時間目の授業が終わった後に補食を摂りましょう。ここでは、100kcal〜200kcalぐらいのもの、おにぎり1個が適量です。

 朝練習がない日、朝ごはんをしっかり食べたという日も、もし増量の課題がある場合は、午前中に補食を入れてもよいでしょう。

補食に「おにぎり」が断然おすすめのワケ

 補食は断然、おにぎりがおすすめです。おにぎりは子どもに体に合った大きさで握れますし、脂質がほぼないうえ、たんぱく質もしっかり含まれている点でも適しています。

「おにぎりだけだと飽きる」「試合の前は食欲が落ちておにぎりを食べる余裕がない」などの場合は、バナナがおすすめです。

 バナナの優れている点は何と言っても、糖質組成。消化時間が早く、エネルギーが持続するでんぷん質、すぐにエネルギーに変わる果糖やオリゴ糖と、いろんな糖が合体している優れた果物です。エネルギー量はバナナ1本でおにぎり1個の約半分ぐらいとなりますが、汗で失われるミネラル成分(カリウム)も含まれるため、運動前後の補食にもピッタリです。

 皮に包まれているので房からぽきっと折って、気軽に持ち歩ける点もヨシ。エネルギーゼリーよりも遥かに安価な点も、成長期のお子さんがいる家庭にとって、うれしいポイントですね。(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。

吉谷 佳代
管理栄養士/公認スポーツ栄養士。江崎グリコ株式会社で健康食品開発や、スポーツサプリメントの研究開発に従事。その傍ら、多くのアスリート、学生スポーツ、ジュニアへの栄養指導、食育イベントに携わる。2013年に独立。以降、ジュニアからトップアスリートまで幅広い競技の選手に対し、栄養サポートを行う。現在、プロ野球・阪神タイガース、実業団女子バレーボール・JTマーヴェラスのチーム専属栄養士。過去には、シスメックス女子陸上競技部(2015〜2020年)、Bリーグ・西宮ストークス(2014〜2017年)、自転車ナショナルチーム(2013〜2018年)をはじめ多くのプロ選手やジュニア選手の栄養サポート実績を持つ。