埼玉パナソニックワイルドナイツの坂手淳史主将、リーグワン開幕へ意気込み

 国内ラグビーの新リーグ「NTTジャパンラグビー リーグワン」の開幕直前メディアカンファレンスが20日、東京・丸ビルホールで行われ、参入24チームの主将・代表選手が意気込みを語った。来年1月7日、国立競技場での開幕戦を戦うチームに選ばれたのは、埼玉パナソニックワイルドナイツとクボタスピアーズ船橋・東京ベイ。リーグワンの前身トップリーグ(TL)最後の王者で、初代王者の最右翼に挙げられる埼玉は、新リーグ開幕へ向けたプレシーズンマッチでも圧倒的な強さを見せている。“野武士軍団”を引っ張る主将のHO坂手淳史が考える新リーグの魅力と注目ポイント、そして初代王者への手応えを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 歴史的なキックオフまで18日と迫った師走の東京に集結したリーダーたちが、新リーグへ挑む熱い思いを語るなかで、最強チームのスキッパーが穏やかな笑顔で、“連覇”を誓った。

「チームの調子はいいですよ、強いですよ! 楽しみにしていてください。初代チャンピオンになりたいので、いい準備、いいゲームをして、楽しんで勝てるようにしたい」

 初代王者への淀みない自信に言葉が弾む。開幕戦まで3週間を切った時点で、ターゲットの優勝へ余念はない。今秋の日本代表でも主力HOとして4戦中3試合で先発出場。同じ埼玉の先輩、堀江翔太の後を追う坂手だが、国内新リーグへの期待感は日増しに膨らんでいる。

 まず坂手の胸を昂らせるのが、開幕戦の舞台となる国立競技場だ。日程の青写真の段階では、東京・秩父宮ラグビー場も候補に挙がっていた。だが、リーグ、ラグビー関係者の中で、歴史的な一戦という舞台、そしてファンの枠を超えて日本中にインパクトを与えるためにも、日本スポーツ界の新たな殿堂で歴史をスタートしたいという思いが勝った。

 旧国立競技場は、帝京大時代に大学選手権準決勝、決勝と常連だった坂手だが、「楽しみですね。奇麗になる前は経験しましたが、ゲームはしたことがないです」と新国立でのキックオフを心待ちにする一方で、「リーグ全体の開幕戦なので特別な試合になる。そこを僕たちに任せてもらえるのは楽しみですし、それに相応しいゲームをして、もう一度ラグビーの魅力を加速させるようなプレーをしたい」と開幕戦チームとしての責任を強く意識する。1月上旬という季節に19時15分開始と異例のキックオフだが、「初めてですけど、寒さ対策はこれから考えたい。(チームグラウンドがある)熊谷も風が強く、(参入チームのグラウンドで)一番寒いですから」と厳冬のナイター決戦への準備を進める。

1部リーグのチーム数減で競技レベル向上、接戦が増えるか

 新たな挑戦という思いが強い一方で、ラグビーの試合で勝つという目標は普遍的だ。「今までから継続している形もたくさんある。シーズンのタイミングも、昨季(TL)から変わらない。そのへんはあまり違いがないけれど、ただ初代王者を狙うというところに関しては、皆すごく意識していると思う。すべてのチームが同じはず。そこを獲れるのは1チームだけですから。1試合1試合勝てれば、そこが見えてくるかなと思います」と、優勝への強い意識がコメントにも滲む。

 埼玉が臨むディビジョン1は12チームを2つのグループ(カンファレンス)に分けてリーグ戦が行われる。カンファレンス内の5チームとホスト&ビジターで計2試合、そして別カンファレンスチームとは1試合を行い、各カンファレンス2位までがプレーオフトーナメントに進み優勝を争う。頂点までの試合数は18となり、前身のTL(昨季は11試合)より試合増になるが、坂手主将は「たくさん試合ができて楽しみです。いいゲームをいっぱいして、たくさんの方に見てもらって、ラグビーの良さを感じていただければいい」と、ラグビーの発信材料の増加と捉えている。

 試合数の増加による選手の消耗や負担についても不安はない。

「どのチームもローテーションがすごく大事になるので、層の厚さが今季はすごく重要になる。でも、それは僕自身もチームにしっかり伝えています。誰一人欠けたらダメで、全員でシーズンを戦えるようにとずっと言っています。そこで一つになったチームが強いと思います」

 リーグワンの新たな取り組みの一つが、先にも触れたホスト&ビジターの導入だ。従来のTLでは、企業チームという性格もあり地域に密着したクラブという意識、チーム運営は薄かった。だが、新リーグの理念では、地域と密接に連携した運営をチームに求め、その一環が「ホスト」と呼ぶ地元スタジアムでの試合開催だ。この新たな取り組みも、坂手主将は歓迎する。

「楽しみですね。僕らはホストの熊谷で、地元の方々に見てもらえるチャンスがあるし、ビジターとして敵地に行っても試合をするのも楽しみです。また、昨季まではカンファレンス内の試合だけだったが、全チームとシーズン中に戦えるのも嬉しい」

 1部リーグに相当するディビジョン1の参加チーム数は、昨季までのTLの16から4減となった。このチーム数の縮小は、新リーグ構想の早い段階で複数チームからも要望のあった、高いレベルの試合を増やしたいという声が反映されている。より実力の拮抗した相手との試合を増やすことで、チーム、選手の競技力を高めることが、リーグ自体、そして日本代表の強化にも欠かせないという判断が、12という参加数になった。選手にとっては、接戦、厳しい試合が増えることが予想されるが、坂手主将は「接戦は多くなると思います。僕たちの対策としては、毎回1点でも多く得点して、1点でも失点を押さえる。そこだけだと思うので、そんな考え方、戦い方を積み重ねていきたい。1点でも勝てばいいので、勝ち点を積み重ねていきたい」と、勝ち点4を確実に取って新リーグを勝ちきる戦略で挑む。

充実の新拠点、常に“見られる環境”を歓迎

 チーム運営のトップに立つ飯島均GMは「TL最後と、リーグワン最初の王者になる資格があるのはウチだけ」と初代王者への並々ならない意欲を見せるが、チームの強化段階はどこまで進んでいるのだろうか。
坂手主将が最も力を込めて語ったのは、主力以外のメンバーの成長だ。チームからは10人の選手が日本代表入りして、9月から2か月以上チームを離れたが、その期間に若手メンバーらが経験値を上げていることは、チームに戻って強く感じている。

「選手層の厚みは、今年は特にすごくあると思う。例年以上にプレシーズンでプレーした選手の調子がいい。若手のゲーム理解度が高くなっているし、試合へ全員がいい準備ができている。試合を見ると分かるのですが、全員のクオリティーが高くなっているので、チームとしてレベルが上がっている。そこにたくさんの(日本代表、外国人)選手が帰ってきたので、それを合わせるとさらに強くなる可能性を感じるので、楽しみです」

 万全の準備を進めるチームを支えているのが、今年8月に群馬県太田市から移転して運用を開始した熊谷のグラウンド、クラブハウスなどの新拠点だ。県営ながらホストスタジアムとなる熊谷ラグビー場に隣接して、30000平方メートルの敷地面積の中に芝生のグラウンドとクラブハウス、屋内練習場や、別経営ながらホテルやカフェが造られた。公共の公園の中に造られた性格上、一般人やファンも間近で練習する選手の姿を見ることができる。

 他のチームならあり得ない環境だが、坂手主将は「練習もお客さんに見てもらえると気合も入りますし、楽しいですね。いい環境だとつくづく感じています。公園なので、散歩している方が見てくれたりしている。初めてラグビーを見る方もいると思うので、そこからチームを好きになってくれたり、また足を運んでくれる回数が増えたりすれば嬉しいですね」と、ファン以外とも接点を持てる、常に“見られる環境”もチームのプラス材料と捉えている。

 クラブハウス内のウエートトレーニング場についても、「以前のジムも狭くはなかったですが、チーム全員でやるには少し手狭だった。今回はたくさんの人数でできるので、ワンクッション、ツークッション入れていたのが1回で一気にできる。全体の流れが良くなってきている」と効率的なジムワークが可能になったことも、チーム強化を後押しする。

外国人選手の合流も順調、「1・7」開幕へ死角なし

 日本代表勢、海外勢の合流も順調だ。一部のチームでは、オミクロン株の感染拡大の影響で一時帰国中の外国人選手が開幕までに合流できない不安があるが、坂手主将は「ほぼ全員が合流している。後は、どういうタイミングで練習試合に出るかです。その判断はこれからですけれど、いい状態でチームに合流しています」と“フルハウス”の布陣での開幕に自信を見せる。

 自身のコンディションについても「僕はいつでもラグビーができる感じになっている。代表の遠征での疲労も大丈夫です。サインもだいぶ覚えたので、そこを最終的には合わせていくという段階です」と臨戦態勢に近づいている。

「やはりゲームが近づくと燃えてくるものもあるし、楽しみな気持ちもある。練習試合を見ると、ディフェンスもアタックもすべてにおいて調子はいいですね。新しく加わった選手も、すごくワイルドナイツのゲームにフィットして、戦術を理解して試合に臨めているので、その点は強みだなと思います」

 リーグ全体を見ると、公式試合球が、この日のカンファレンスでようやくお披露目(公式戦での使用は3月4日の第8節から)されるなど、開幕へ向けて急ピッチで準備を進めるが、最強軍団は「1・7」へ盤石だ。坂手主将が語るリーグの魅力や可能性を楽しみながら、真冬の熱闘を満喫したい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

吉田 宏

 サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。W杯は1999、2003、07、11、15年と5大会連続で取材。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。