公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「減量期のアスリートのたんぱく質の摂り方」

 Jリーグやジャパンラグビー リーグワンをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「減量期のアスリートのたんぱく質の摂り方」について。

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 新年を迎え、学生、社会人のアスリートもイチから体作りに取り組まれていることと思います。そこで今回は改めて、減量期のアスリートのたんぱく質の摂り方についてお話ししましょう。

 一般的には、「減量=食事を減らす」とイメージされます。しかし、アスリートの場合、「減量=質の良いたんぱく質を計画的に摂る」という考えで取り組むのが正解。なぜならアスリートの減量の目的は「スリムになる」ではなく、「パフォーマンスを向上させる」ためだからです。

 体重を減らしたい場合、消費エネルギー量よりも摂取エネルギー量を減らすのが原則です。しかし、アスリートの場合、一般の人と比べ、運動強度が高く、運動時間が長くなることから、多くのアミノ酸(たんぱく質)をエネルギー源として利用することになります。すると、体重とともに筋肉の減少につながりやすく、結果、パフォーマンスの低下につながる恐れがあります。

 筋肉量を維持しながら体脂肪量を減少させる。これがアスリートの減量の基本です。ですから、計画的にたんぱく質を摂ることがとても大切なのです。

 計画的なたんぱく質の摂取で考えるべきポイントは「たんぱく質の摂取量」「たんぱく質の質」、そして「たんぱく質の合成を促す運動」の3つです。

減量期のアスリート、体重1kgあたりに適正なたんぱく質の摂取量は?

 まずは「たんぱく質の摂取量」について。減量中のアスリートは、体重1kgあたり1.6〜2.4gのたんぱく質摂取が適正とされています。

 そして、なるべく1日を通して筋肉の合成に必要なたんぱく質が不足しないようにすることも大切。毎食、肉や魚などのおかずをしっかり摂る以外に、ヨーグルトやギリシャヨーグルト、低脂肪牛乳、プロテインバーなど、補食を取り入れるようにしましょう。

 特に、たんぱく質量が不足しやすいのは、朝食です。アスリートの中には、「食欲がわかない」「トレーニング時間との兼ね合いで、朝食がしっかりとれない」という選手も少なくありません。そこで、常備しておくと便利なのが、調理しなくても食べられるたんぱく質の多い食品。例えば、ゆで卵(市販の味付きたまごや半熟卵でOK)、低脂肪のカッテージチーズ、木綿豆腐、魚肉ソーセージ、ちくわなどは、選手たちにも「これなら食べられる」と好評です。

 次に「たんぱく質の質」についてです。アスリートにとって質のよいたんぱく質とは、「低脂肪の良質なタンパク質」を指します。そして、良質なたんぱく質とは「必須アミノ酸(体内で作り出すことのできないアミノ酸)」をバランス良く含むタンパク質です。

 なかでも今、スポーツの世界で注目されている必須アミノ酸は、タンパク質の合成を促す働きのあるロイシン。2021年11月に開催されたスポーツ栄養の世界的なサミット「We Nutrition Summit」のセッションでも、「減量時のアスリートはロイシンを多く含む動物性たんぱく質を過不足なく摂ると、筋肉を増量するうえで有利である」と発表されました。

 もちろん、たんぱく質を食べるだけでは筋肉は効率良く合成されないため、3つ目のポイント「筋たんぱく質の合成を促す運動」も重要。計画的にたんぱく質を摂り、トレーニングにより適切な刺激を筋肉に与えることで初めて、エネルギー制限下でも、筋肉量をなるべく減らさず、体重と脂肪量を減らすことができます。

安易に炭水化物を減らしてしまっても大丈夫?

 アスリートが減量を進める際、まずは、体重をどれぐらいの期間にどれぐらい減らすのかを決める必要があります。そのうえで、1日に必要なエネルギー量を設定し、決められたエネルギーの範囲内で、1日に必要なたんぱく質や炭水化物、脂質の量を決めていきます。記事の最後に、体重75kgの選手の1日に摂りたいたんぱく質の目安量と、ロイシンを多く含むたんぱく質を示したので参考にしてくださいね。

 最後になりましたが、食事はたんぱく質のほかに何を食べるかも重要であることを忘れないようにしましょう。特に今、学生や社会人選手が安易に炭水化物を減らす傾向がみられますが、筋たんぱく質の合成にはご飯、麺、などの炭水化物も必要です。また、米やパスタに多く含まれる非必須アミノ酸のアルギニンには、体脂肪の燃焼を促す働きがあります。

「たんぱく質を増やそう」という意識よりも、「たんぱく質量は減らさず、余分な摂取エネルギー量を糖質と脂質から減らす」という考えで食事の内容や量を見直すと、減量もうまくいきますよ。

【減量時のたんぱく質量の出し方】

 75kgの選手の場合、1日のたんぱく質の摂取目標量は、75kg×1.8g(サッカーの場合。ただし競技種目や減量ペースにより異なる)=135g/日になります。

 これを食品に置き換えると以下の通りです(カッコ内の数字がたんぱく質量)。

 鶏むね肉 150g (35g)/鮭1切れ 80g (18g)/納豆1パック50g(8g)/木綿豆腐1/3丁(7g)/鶏卵1個(7g)/低脂肪牛乳コップ3杯(24g)/プレーンヨーグルト1カップ(4g)/ご飯丼3杯(23g)/スパゲティ1人前(13g)=合計約139g

【脂質が少なく、ロイシンを多く含む食品例】

 鶏ささ身 鶏むね肉 豚もも肉 牛ヒレ肉 かつお めばちまぐろの赤身 鮭 鶏卵 低脂肪牛乳 ヨーグルト



(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

長島 恭子
編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。