コロナ禍により、仕事が減った人や、在宅でリモートワークをしている人も多いでしょう。先行きが見通しにくい状況の中で、資格取得の勉強を始める人も増えています。さまざまな資格の中に、「マンション管理士」という国家資格があります。ここでは、マンション管理士が誕生した背景や業務内容、資格試験の難易度、将来性などについて解説します。

マンション管理士とは

マンション管理士とは、2000年に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」の制定により誕生した、国土交通省管轄の比較的新しい国家資格です。国土交通省によると、マンション管理士の定義は「専門知識をもって、管理組合の運営、建物構造上の技術的問題等マンションの管理に関して、管理組合の管理者またはマンションの区分所有者等の相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと」を業務とする人です。

マンション管理士が誕生した背景には、マンションの増加に伴い、さまざまな社会問題の懸念が生じたことがあります。国土交通省が公表している「平成30年度 住宅経済関連データ」(マンションの供給戸数)によると、日本国民の10人に1人がマンションに住んでいることになります。

マンションには、セキュリテイや利便性が高く、立地の良い物件を購入できるなど、戸建て住宅にはない多くのメリットがあります。しかし、どんなに条件の良いマンションもやがては劣化し、老朽化します。劣化や老朽化を少しでも食い止めるためには、状況に応じて補修や改修を行わなければなりません。また、マンションには、異なる年代、職業、家族構成、価値観、生活様式の人たちが暮らしているため、様々なトラブルが発生します。

マンション管理士は、このようなマンション運営に関する様々な諸問題に対応するコンサルタントの役割を担っています。マンション管理士になるには、マンション管理士試験に合格し、公益財団法人マンション管理センターに登録する必要があります。マンション管理士は、「名称独占資格」であり、資格取得者のみが資格名称(肩書き)を名乗ることができます。

マンション管理士の仕事内容

マンション管理士の業務

・マンション管理規約の作成・更新業務サポート
・マンション管理組合の運営サポート、会計管理サポート
・大規模修繕積立金の取り扱い、大規模修繕工事の依頼手続きのサポート
・住民トラブルの解決
・マンション管理会社の監督
ほか

マンション管理規約の作成、更新

マンション管理士には、マンション管理に関する多くの業務があります。まずは、「管理規約の作成、更新」に関する業務です。マンションには様々な住民がいるため、住民同士が守るべきルールを定めておく必要があります。住民が快適に安心して暮らすためのルールブックとなるのが、マンション管理規約です。

マンション管理規約には、共用部分の範囲や使用方法、ペットの飼い方、災害時や非常時の対応などが書かれています。管理規約は、マンションの区分所有者によって組織されるマンション管理組合によって、独自に決めることができます。

ただし、内容は区分所有法という法律に基づいていなければなりません。また、管理規約は、その時々の状況などに応じて見直す必要が生じてきます。管理規約の作成や更新には、法律などの知識が欠かせません。また、区分所有者数および議決権数の4分の3以上の賛成も必要です。これらのことから、「管理規約の作成、更新」には、マンション管理士の知識や経験によるアドバイスが求められます。

マンション管理組合の運営サポート、会計管理

「管理組合の運営サポート、会計管理」もマンション管理士の仕事です。管理組合は、マンションの区分所有者たちで構成された、マンションの維持、管理運営を担う組織です。しかし、マンション管理組合のメンバーは素人であり、マンション管理に関する法律や組合運営に精通しているわけではありません。

したがって、管理組合が十分に機能しない場合も少なくないのです。マンション管理士であれば、マンション管理費、修繕積立金の会計監査、総会や理事会の運営、管理コストの見直し・削減などについて、プロの観点からのサポートが可能です。

大規模修繕積立金の取り扱い、大規模修繕工事の依頼

マンションは、定期的にメンテナンスや大規模な修繕を行う必要があります。これらを怠ると、外壁塗装や壁のはがれなどで外観が損なわれるだけでなく、配管トラブルが発生したり、鉄骨が錆びたりするなど、内部からの劣化も深刻化します。

マンション管理士は「建物の修繕工事」に関する業務である、修繕に備えた修繕積立金の取り扱いや大規模修繕工事を依頼する施工会社選び、さらにそれに伴う各種手続きなども担います。

・住民トラブルの解決

集合住宅には住民トラブルが付きものです。こうしたトラブルを解決に導くのもマンション管理士の仕事です。騒音、ペット問題、喫煙マナー、駐車場(駐輪場)マナー、ゴミ出しルールなど、マンション住人によるトラブルは後を絶ちません。

また、トラブルが起きるのは住民同士の間に限らず、住民と出入りの業者、住民とマンション管理会社の間にも起こります。小さなトラブルでも解決せずに放置してしまうと、大きなトラブルに発展しかねません。住民同士のトラブルは、感情的なものになる場合もあるため、第三者による仲介や適切な対応が必要なのです。

・マンション管理会社の監督

マンション管理には、専門知識がないと解決しにくい問題も多いため、ほとんどの管理組合は、管理会社に業務を委託しています。委託を請けたマンション管理会社は、「マンション管理適正化法」を遵守して業務を遂行することが求められます。

しかし、実際には必ずしも法律を遵守する会社ばかりではありません。そのため、住民と管理会社の間に立ち、公平な立場で「管理会社の仕事ぶり」の監督をすることも、マンション管理士の仕事です。

管理業務主任者との違い

マンション管理士に似ている資格に、「管理業務主任者」があります。いずれもマンション管理に関わる仕事をするための国家資格ですが、業務内容や立ち位置などに違いがあります。管理業務主任者は、名称独占資格ではなく、「必置資格」です。また、「独占業務」があります。

管理業務主任者の独占業務は、「マンション管理の前提となる管理委託業務に関する重要事項の説明」、「重要事項説明書への記名・押印」、「管理受託(委託)契約にかかる契約書への記名・押印」、「受託した管理業務の処理状況のチェックや報告」の4つです。

マンション管理士が、管理組合側に立ってマンションの維持、管理全般のアドバイスを行うのに対し、管理業務主任者は管理会社に所属している場合が多く、管理会社の立場で仕事をします。さらに、管理会社には管理組合数30につき1人以上の専任の管理業務主任者を置くことが法律で定められていますが、マンション管理士には設置義務がありません。

マンション管理士資格試験の概要

マンション管理士の試験は毎年1回です。受験資格に、年齢、性別、学歴、国籍等の制限はありません。ここ最近の受験者数は12,000〜15,000人程度ですが、合格率は7〜9% 程度になります。管理業務主任者の合格率がおおむね20%、宅地建物取引士が15% 程度であることに比較しても、かなりの難関資格といえるでしょう。

マンション管理士の資格試験は、マンションの管理に関する法令と実務、管理組合の運営の円滑化、マンションの建物および附属施設の構造と設備、マンション管理適正化法などから出題されます。管理業務主任者試験に合格すると、マンション管理士試験で5問が免除されます。

逆に、マンション管理士試験に合格すると、管理業務主任者試験で5問が免除になります。それぞれの資格取得の際に必要な知識などには重複する部分も多いため、両方の資格取得を目指す人や、実際に取得している人も多くいます。

マンション管理士の将来性

マンションをめぐる社会問題は今後も増え続ける

マンション管理士は、名称独占資格であることから、独立開業することも可能です。しかし、現実にはマンション管理コンサルタントとして独立開業している人は、あまり多くありません。

マンション管理士の資格は、不動産会社やマンション管理会社、行政書士事務所などでは高く評価されるため、資格取得者はこれらの会社に就職するケースが多くなります。会社によっては、資格手当が付いたり、昇級の条件になったりする場合もあるようです。また、管理業務主任者をはじめ、宅地建物取引士、行政書士などの資格を同時に取得すると、さらにキャリアに有利になります。

また、自治体主催のセミナー講演や相談会への出席、自治体のアドバイザー就任など、自治体や公益財団などからの仕事の依頼もあります。今後、老朽化したマンションの建て替え問題や、大規模修繕費の不足問題、マンション住民の高齢化とそれに伴うバリアフリー化の必要性など、マンションを取り巻く社会問題は増え続けることが予想されます。

国や自治体もマンション管理の相談窓口設置や相談会実施、アドバイザー派遣などを行い、支援拡充を図ろうとしています。これらの施策に併せて、マンション管理士が積極的に活用される機会が増えそうです。マンション管理士の必要性は再認識されており、将来的には様々な場面で活躍できる可能性は十分にあるでしょう。

まとめ

マンション管理士は、非常に難関の国家資格です。単独で取得するより、宅地建物取引士や管理業務主任者資格と併せて取得することで仕事の幅が広がります。国や自治体もマンション問題支援を拡充しようとしていることから、今後マンション管理士の需要は高まるでしょう。不動産関係やマンション管理関係の仕事に興味があれば、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。