先進各国に比べてワクチン接種が遅々として進まないなか、新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、ついに東京で3回目となる緊急事態宣言が発出されることになりました。2年続けてゴールデンウイークを緊急事態宣言下で迎えることになりますが、今年の大型連休における私たちの消費はどのようになるのでしょうか?過去のデータを基に緊急事態宣言下の消費行動や宣言の効果について見ていきましょう。

娯楽やアパレル関連の支出が減少する

残念なことですが、冒頭で書いた通り既に日本では緊急事態宣言が複数回発出されています。しかし、見方を変えれば、過去のデータを基に将来を予測することが出来るとも言えます。そこで、コロナ前(2019年)から足元(2021年2月)までの消費について細かく見てみましょう。

下図は総務省が発表している「家計調査」における消費支出の内訳の推移をグラフにしたものです。東京都で緊急事態宣言が発出された期間を灰色に網掛けしています。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注) :網掛け部分は東京の緊急事態宣言期間。二人以上の世帯。実質ベース。季節調整値。

コロナ前は多少の差はあれど、どの項目も似たような動きをしていましたが、コロナ禍においては項目ごとに動きがバラバラであることが分かるかと思います。コロナ禍、特に緊急事態宣言下において下振れる傾向にあるのが「被服及び履物」と「教養娯楽」の2つです。

「被服及び履物」への消費が弱まる理由はシンプルで、外出をしなくなることに伴い、特に洋服や靴を買う必要もなくなるということですね。在宅勤務が増えたことで、スーツを着る機会も減り、ワイシャツも1着あれば十分という声もよく聞きます。

「教養娯楽」への消費が弱まる理由としては、感染防止の観点から不特定多数の第三者との接触を避けるべく、映画館や遊園地に行くことを避けるということもありますが、そもそも休館・閉園していたりするということもあるでしょう。

一方で「家具・家事用品」への消費が強いように見えますが、これは外出自粛によって自炊をする機会が増えたことから電子レンジや炊飯器への需要が高まったり、在宅勤務が普及したことからデスク周りの家電、そして室内の衛生環境への意識の高まりから空気清浄機などの購入が増えたということが背景にあります。また、特別定額給付金がこれらの消費を押し上げたという側面もあるでしょう。

今回も緊急事態宣言下においては「被服及び履物」と「教養娯楽」への支出は下がると思います。

スポーツやイベントは無観客での開催が要請されており、酒類やカラオケを提供する飲食店も休業要請されていますので、娯楽は自宅でできるものに集中することが予想され、その観点からは今回も動画配信などのコンテンツ配信への支出が増加しそうです。

一方で「家具・家事用品」への支出については既に昨年の時点で需要を先食いしていることから、それほど伸びないのではないかと予測します。

自宅周辺のスーパーが繁盛する?

経済産業省が発表している「商業動態統計」を見てみると、緊急事態宣言下では百貨店での買い物が減るということが下図から分かります。

(出所):経済産業省「商業動態統計」のデータを基に株式会社マネネが作成。

1回目の緊急事態宣言のときは大きく下落しているものの、2回目の緊急事態宣言のときは1回目ほど下落していません。これは1回目の時に比べて新型コロナウイルスに関する情報が集積されたことで、販売側も消費側もコロナ禍における営業の仕方、購買の仕方が分かってきたからと考えられるでしょう。更に新型コロナウイルスの情報が集積され、少しずつとは言えワクチン接種も進んでいます。

ただ今回は、百貨店を含む大型商業施設には一部を除き休業要請が出されていることから、百貨店での買い物が大きく減り、その代わりに自宅周辺のスーパーマーケットでの買い物が増えることが予測されます。

それほど消費が落ち込まない可能性も?

今回は「被服及び履物」と「教養娯楽」への支出は下がる一方で「家具・家事用品」への支出は高まらず、百貨店での買い物は1回目の緊急事態宣言の時のように大きく減少すると書きました。ここまでの内容を見ると、今度のGWを含めた緊急事態宣言期間中は大きく消費が下がりそうに思うかもしれません。

しかし、別のデータから見ると、今回の緊急事態宣言ではそれほど消費が抑制されないかもしれないという仮説もあります。Google社が公表している人の外出を可視化するデータを見てみると、緊急事態宣言の効果が2週間程度で、それ以降は徐々に効果が薄れていくことが分かります。

(出所):Google「コミュニティモビリティレポート」のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注) :網掛け部分は緊急事態宣言期間。基準値は2020年1月3日〜2月6日の5週間の曜日別中央値。

今回は既にまん延防止等重点措置を発令してから3週間近くが経過し、ある意味では看板を挿げ替えるかたちで緊急事態宣言を発出します。つまり、これまでのデータに基づけば既に人出が戻るタイミングに差し掛かってしまっているのです。緊急事態宣言が発出されたことで一時的に人出が減ることで消費も冷え込むかもしれませんが、その期間はそれほど長くならない可能性があるということになります。

EC経由での消費が中心になる

様々な観点から今度の緊急事態宣言下のゴールデンウイークにおける消費について考察してきましたが、観点ごとに想定される仮説には多少の違いが生じます。しかし、間違いなく言えることは1つあり、それはEC経由での消費は引き続き堅調であろうということです。「家計調査」ではインターネットを通じた消費についてのデータを載せていますが、全ての年代でEC利用率が毎年伸びているというトレンドがあるなかで、昨年はその伸びが一気に加速しました。

(出所):総務省「家計調査」のデータを基に株式会社マネネが作成。 (注) :二人以上の世帯。

コロナの影響で消費が落ち込んだ「被服及び履物」、つまりアパレル業界や、百貨店業界に属する上場企業の決算説明会資料を読んでみると、やはり各社がECを通じた消費を重視しており、コロナ前からECにシフトできていた企業ほどコロナ禍におけるダメージが比較的小さく済んでいます。

今年も緊急事態宣言下でのゴールデンウイークということで、旅行に行ったりイベントに出かけることは出来なそうですが、この1年で見に付けた巣ごもり生活を楽しく過ごすノウハウを活かすときが来た、と前向きに捉えるといいかもしれません。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。