マイホームの外壁を塗り替える場合は、慎重な検討が必要です。安易に自分の好きな色やおしゃれな色、奇抜な色を選んでしまうと、飽きがきてしまったり、後悔したりする可能性があります。また地域によっては景観ガイドラインが定められていたり使用できる色が制限されていたりするケースがあり、最悪、自治体から現状復帰命令や出されることもあります。

外壁を塗り替える際には、下記を注意するといいでしょう。

・景観ガイドラインの確認

・近隣や街並みとの調和

・屋根や窓枠、ドアとの色の相性

・汚れが目立ちにくい色なのか

・日があたるか影になるかで変わる見え方の違い

・塗料の光沢(ツヤ)の加減による見え方の違い  

・色見本やシミュレーションは参考程度にする

今回は、上記の中でも見落としがちな観点である景観ガイドラインについて、特徴的な市町村の事例を紹介します。ぜひ景観ガイドラインの理解を深めて、外壁の配色を検討してみてください。

美しい街づくりに必要な景観ガイドライン

景観ガイドラインとは、都市デザインの考え方を具体的に示し、良好な景観を誘導するための手引きです[注1]。

国土交通省の「景観形成ガイドライン『都市整備に関する事業』」には、市町村は個性ある美しい地域づくりの主役だとされています[注2]。つまりそれぞれの地域にふさわしい景観をデザインするために市町村が制定したルールが景観ガイドラインです。

京都では瓦屋根のコンビニやファストフードチェーンも異なるカラーリング

景観ガイドラインは、特に歴史的な街並みや文化を残す観光地で重視されています。例えば、京都では通常の設計とは異なる、瓦屋根のコンビニを見たことのある人もいるのではないでしょうか。

京都府では1956年に屋外広告物に関する条例が定められ、看板など屋外の広告物や外観のデザインが統一されているのです。色彩についても、照明の色、看板の配色の割合、色の組み合わせなど、細かく規制されています[注3]。

京都府では、けばけばしい色を外壁に使用できないため、周辺の環境に馴染むような調和の取れた色を、景観ガイドラインに沿って選定する必要があります。

景観ガイドラインの事例と外壁色のポイント

色選びに失敗せずに済むように、景観ガイドラインについて初めに確認しておくことが大切です。せっかく新しく塗り替えた外壁が規定に反してしまい、再び塗り替えるのは避けたいものです。

まずは全国の景観ガイドラインの具体的な事例を把握しましょう。

全国の景観ガイドラインの事例

景観ガイドラインにはどのような例があるのか? いくつか紹介します。緑や水など自然との調和を掲げている事例が多くなっています。

事例1:東京都練馬区

東京都練馬区では、「みどりと調和した色彩を使う」と規定されています。例えば、川沿いの建物なら水辺の自然景観と調和した色彩を使用するなど、自然の緑色によく調和するように外壁の色を使うなどのルールが定められています[注4]。

事例2:千葉県松戸市

千葉県松戸市では、一般市街地は「豊かな緑に調和した穏やかな景観」、商業系市街地は「にぎわいの中にも秩序や品格が感じられる景観」、工業系市街地は「先進性と親しみが感じられる景観」と、3つのコンセプトを定めています。景観ガイドラインによって使用できる外壁の色が市内の地域に応じて変わる事例です[注5]。

事例3:東京都杉並区

東京都杉並区では、川沿いなどの景観形成重点地区では「みどりや水の色彩と調和した色彩」とされ明度も景観ガイドラインで決められています。建物の規模によって彩度の高い強調色が制限されたり、温かみのある景観をつくるために暖色系の色彩が推奨されたりしています[注6]。

事例4:大阪府八尾市

大阪府八尾市では、木や石、土や瓦、漆喰などを使用し地域に馴染む色彩が推奨されています。周囲にある建築物の外壁と色調(トーン)をそろえつつも明度や彩度に変化をつけたり、緑に馴染むアースカラーを使用したりするなど景観ガイドラインが定められています[注7]。

事例5:奈良県橿原市

奈良県橿原(かしはら)市は、京都と同じように黄赤、黄、緑黄などの暖色系の色相を使い、明度や彩度で変化を付けて街並みの統一感を出すように景観ガイドラインが定められています。「自然の緑を阻害しない」「落ち着きのある街並みを阻害しない」などといったコンセプトをもとに、彩度の基準となる数値も決められています[注8]。

景観ガイドラインに触れない外壁色のポイント

数多くの景観ガイドラインのなかで共通する特徴は、自然や周辺環境との調和です。景観ガイドラインに触れない色はいくつか考えられます。

● ベージュ
● グレー
● ブラウン
● 白や黒
● 暖色系

ベージュは景観と調和する落ち着いた色です。ドアや窓枠との相性が良く、安心感もあり、白に比べ黄色を帯びた色合いなので汚れも目立ちにくいです。

グレーの外壁も汚れが目立ちにくく、景観や周囲の建物と馴染みやすい色として人気です。ベージュに比べ、グレーはシックでクールな落ち着いた印象を与えます。

ブラウンの外壁も汚れは目立ちにくいです。土や木など周りの自然に溶け込む色であり、温もりを感じる色でもあります。赤茶色からこげ茶色まで種類が豊富です。

白は自然の緑に映え、ドアや窓枠とも相性が良く、清潔感があります。黒はガルバリウム銅板を外壁に使うことが多く高級感があります。しかし、白や黒は汚れが目立つため、定期的な洗浄が必要です。

暖色系のピンクやオレンジなど、暖かく柔らかい色は穏やかな気持ちにさせてくれます。景観や周囲の建物に相性が良い薄めの暖色系は色選びの幅を広げる人気色です。

まとめ

外壁を塗り替える場合は、まず住んでいる地域に景観ガイドラインがあるかどうかから確認しましょう。自然や周辺環境との調和を乱さないよう注意した、ベージュやグレー、ブラウンなどをベースとした色の選定がおすすめです。

外壁の塗り替えについてもっとよく知りたい方や内装塗装に挑戦したい方、メンテナンス全般について知りたい方はこちらの記事もおすすめです。

 

[注1]

UR都市機構「景観ガイドライン」

[注2]

景観形成ガイドライン「都市整備に関する事業」

[注3]

京みやこの景観ガイドライン

[注4]

練馬区「景観ガイドライン」

[注5]

松戸市「景観形成ガイドライン─色彩編」

[注6]

杉並区「景観色彩ガイドライン」

[注7]

八尾市「景観ガイドライン」

[注8]

橿原市「色彩ガイドライン」