欧米ではワクチン接種が進み、徐々に日常が戻りつつあるとの報道を目にしますが、日本では緊急事態宣言の指定範囲が広がるなど、依然としてコロナ禍の終わりが見えません。コロナ禍が長引けば、当然ながら私たちの生活にも悪影響が生じます。目先で気になるのは今夏のボーナスがどうなるか、ということでしょう。データを基に予想します。

ボーナスが出ない企業が増えている

今夏のボーナスを予想するに当たって、これまでの実績を確認してみましょう。厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査」には民間企業の一人当たりボーナス支給額の推移が記載されており、グラフ化したものが下図になります。

オレンジ色の折れ線を見てください。昨年の冬季のボーナスは前年同期比−2.6%と例年より大きなマイナス幅となりました。ただ、多くの企業がコロナ禍によってダメージを受けている割には、それほど下落していないという印象を受ける人も多いのではないでしょうか? 実際、2015年の夏季(同−2.8%)よりもマイナス幅は小さく、リーマンショック後(2009年夏:同−9.8%)に比べればマイナス幅が抑えられています。

しかし、このオレンジ色の折れ線は支給事業所における平均値のデータを表しています。つまり、ボーナスが出た企業のデータだけに基づいたものなのです。そこで、ボーナスが出なかった企業も含めた全事業所における平均を見てみましょう。緑色の折れ線を見てください。これまではオレンジ色の折れ線も緑色の折れ線も似たような動きをしていましたが、コロナ禍の昨年夏季から乖離(かいり)していることがわかるかと思います。

全事業所ベースで見れば、昨年の夏季は前年同期比−2.4%、昨年の冬季は同−6.1%と大きく減少しているのです。つまり、ボーナス額が減ったどころか、そもそもボーナスが出なかった企業も多かったということです。多くの人の実感に近いのは、こちらの全事業所ベースのデータではないでしょうか?

ボーナスは業種によって明暗が分かれる

しかし、コロナ禍でボーナスが減ったというデータがあったとしても、読者の従事する業種によって昨年のボーナスについての感想は分かれると思います。「意外としっかりボーナスもらえたぞ」という人もいれば、「コロナの影響でボーナスが出なかった」という人もいるでしょう。今回のコロナ禍の特徴はまさにそこにあるのです。

昨年の冬季ボーナスについて、業種ごとに前年同期比の変化率を見てみましょう。さすがに全業種をグラフにすることはスペースの問題でできませんから、一部の業種をピックアップしたものが下図です。

全体の変化率は前述の通り前年同期比−2.6%となっていますが、情報通信業は同−0.4%とほとんど変化がなく、全体よりもマイナス幅は小さくなっています。リモートワークの普及や、5G関連への投資が進んだことなどによって、コロナ禍が逆風にはならなかったといえます。製造業も昨年後半からは海外の経済が持ち直したことにより、全体よりはマイナス幅が大きいものの大幅なマイナスとはなっていません。

一方で、外出自粛や時短影響など、コロナ禍が大きく業績に影響した生活関連サービス業や飲食サービス業等は同20%前後の減少となっています。今回のコロナ禍の特徴は、このように業種によって状況がバラバラということなのです。

今夏のボーナスも厳しい見通し

これまでデータを見てきたように、ボーナスが減ったのではなく、そもそもボーナスが出なかった企業が多かったこと。そして、業種によってコロナ禍のボーナスへの影響がバラバラであることがわかりました。それでは今夏のボーナスはどうなるのでしょうか? 今夏のボーナスはこれまでの業績に基づいてすでに固まっていることが多いので、法人企業統計調査で製造業と非製造業の経常利益と設備投資の推移を見てみましょう。

製造業はすでに経常利益がコロナ前の水準を上回るまで回復している一方で、回復傾向にあるとはいえ非製造業は依然としてコロナ前の水準を大きく下回っています。設備投資が製造業、非製造業ともにコロナ前の水準を下回っているところを見ると、先行きへの不安を両業種とも抱えていることも読み取れます。

以上のデータから、今夏のボーナスは引き続き前年同期比でマイナスになることが予想されます。しかし、すでに昨年の夏季ボーナスにはコロナの影響が出ていたため、前年同期比という表記をすると、そのマイナス幅は1%程度に収まるでしょう。

ワクチン接種がどこまで進むか

ボーナスがもらえないと困るという人も多いと思いますが、それではいつまでこのような状況が続くのでしょうか? 欧米のデータを見ていくと、どうやらワクチン接種が進むにつれて、消費者心理も改善していることがわかります。ワクチンを接種したからといって感染しなくなるということはないと思いますが、それでも接種することで仮に感染して発症したとしても、重症化リスクが低減されるという心理的な安心感が人々の消費活動を促進しているようです。日本においては国内総生産(GDP)の約6割を個人消費が占めているわけですから、消費が活発になることで経済全体が浮揚していきます。

さらに、コロナ禍で大きなダメージを受けていたのが、まさに外出を伴う消費によって売り上げを立てていた生活関連サービス業や飲食サービス業等ですから、これらの業種に従事している方からすれば、ワクチン接種の進み具合は家計に直結します。私たち個人レベルではワクチン接種の進捗(しんちょく)を早めるということはできませんので、引き続き家計の見直しや節約などできる範囲での工夫をしていきましょう。