すでに住宅ローンを組んでマイホームを購入している人であれば、住宅ローン控除の恩恵を受けている、もしくは、受けたことがあると思います。しかし、勤務先の都合で転勤などをした場合、いまの家の住宅ローン控除が受けられなくなることがあります。今回は、転勤により受けられなくなるケースと、戻ってきた際の再適用についてまとめます。

そもそも住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、住宅借入金等特別控除の通称です。一般には住宅ローン減税とも呼ばれます。

この制度は、返済期間10年以上の住宅ローンを利用して、居住用の住宅(いわゆるマイホーム)を建築、購入、または増改築した場合に、年末のローン残高の1%が10年間にわたって所得税から控除される税額控除の制度です。

現在は、消費税率10%が適用される住宅については、特別に控除期間が13年間に延長されています。対象となる条件は注文住宅が2021年9月末までの契約、分譲住宅・中古住宅は2021年11月末までの契約、入居期限はともに2022年12月末まで。年末時点の住宅ローン残高の1%が、所得税から控除される点は、会社員でいうと毎月の給与から差し引かれている所得税が減税によって戻ってくるイメージです。

住宅ローン控除の対象となる住宅ローン残高の上限は4,000万円(長期優良住宅、認定低炭素住宅などの場合は5,000万円)まで。この金額を超える場合は、超えた部分は計算の対象となりません。

たとえば、年末の住宅ローン残高が3,000万円の場合、その1%である30万円がその年の所得税から差し引かれます。支払っている所得税額が30万円よりも少ない場合は、所得税から引き切れなかった分が翌年度の住民税から差し引かれます(13万6,500円が上限)。なお、13年間の控除が受けられる人の11年目から13年目の控除額については、住宅ローン残高の1%か建物価格の2%÷3のどちらか少ない金額となります。

住宅ローン控除を利用するためには、建築、購入、増改築をした翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をする必要があります。会社員の場合も1年目は確定申告が必要で、2年目からは年末調整で還付を受けることができます。

転勤した場合の取り扱い

さて、このような住宅ローン控除の制度は、控除を受けられる期限内であっても転勤等によって受けられなくなる場合があります。

まず、転勤などによって家族全員で転居してしまうと、住宅ローン控除は受けられなくなります。適用期間中に再び戻ってきた場合には、後で触れる再適用を受けられる可能性はあるものの、基本的には本人が居住していない住宅に対する住宅ローン控除は受けられません。例外は、以下のような単身赴任の場合です。

国内単身赴任の場合

本人が居住しなくなっても、それがやむを得ない転勤などによる単身赴任で、家族はそのまま取得した住宅に住み続ける場合は、本人も居住しているものとして住宅ローン控除を引き続き受けることができます。

住宅ローン控除は、住宅を取得した日から6ヶ月以内に入居して、その年の12月31日まで住み続けることが条件になっています。したがって、取得後6ヶ月以内に住み始め、年末までに単身赴任になったとしても、家族が引き続き住み続けているのであれば、本人が単身赴任先に住民票を移したとしても適用を受けることができます。また、入居する前に単身赴任が決まっても、家族が6ヶ月以内に入居して引き続き住み続けている場合には住宅ローン控除を受けることができます。

海外単身赴任の場合

海外に単身赴任をする場合も、引き続き家族が居住し続けている場合には、国内の単身赴任と同様、住宅ローン控除を受け続けることができます。ただし、居住期間中の給与所得や、出国後の国内不動産所得などの総合課税の対象となる国内源泉所得がある年のみの適用となります。

なお、2016年3月末までに取得した住宅の場合は、その当時の住宅ローン控除の対象者の要件が(国内)居住者に限定されていたので、海外に単身赴任をしてしまうと非居住者となってしまうため、住宅ローン控除の対象外となります。つまり、海外単身赴任の場合は、住宅取得等の時期が2016年3月以前なのか2016年4月以降なのかで取り扱いが異なるわけです。注意が必要です。

転勤から戻ってきた場合の再適用とは

転勤の際に家族全員で転居した場合には、住宅ローン控除を受けることができなくなります。一定の要件を満たせば、転勤から戻ってきたときに、残りの期間分の住宅ローン控除を受けることができます。この場合の残りの期間とは、住宅取得等をしてからの10年間(または13年間)の残りの期間という意味です。

たとえば、入居して5年経過後に転勤が決まり、家族とともに転居して、さらに5年後に戻ってきた場合、控除を受けていない残りの5年分が受けられるかというと、すでに入居から10年が経過しているので受けられないことになります(控除期間10年の場合)。

一方、入居して5年経過後に転勤が決まって家族とともに転居し、3年の転勤期間を経て戻ってきた場合は、残りの2年間だけ再適用を受けられることになります(控除期間10年の場合)。

賃貸に出していた場合の再適用は翌年から

住宅ローン控除の再適用については、転居していた期間中の住宅の状態が、空き家だった場合と賃貸に出していた場合とでは、開始時期が異なるので注意が必要です。

空き家にしていた場合は、戻ってきたその年の分から再適用が受けられます。賃貸に出していた場合は、その翌年からの再適用となります。

再適用の手続き方法について

転勤から戻ってきた際に再適用を受けられるようにするためには、次のような手続きが必要です。

まず、転出前には転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書等の書類を住宅の所在地の所轄税務署長に提出する必要があります。

そして、再び居住する際には住宅借入金等特別控除の計算明細書や住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書を添えて確定申告します。

基本的に、会社員であれば、住宅ローン控除を受けるためには最初の年だけ確定申告が必要で、翌年以降は年末調整で処理してくれます。しかし、再適用を受ける場合には、転出前の手続きと、再入居後の確定申告が必要になるので注意しましょう。

まとめ

住宅ローンを活用し住宅を購入した人にとって大きな特典ともいえる住宅ローン控除。本記事で解説してきたようにやむを得ない転勤等によって控除の適用が受けられなくなる可能性もあります。ただ、単身赴任であれば適用を受け続けることができますし、家族全員で転居しても、控除期間以内に戻ってくれば、再適用を受けることができます。

要件等や個別具体的なポイントについては、最寄りの税務署や税理士に相談することをおすすめします。