2021年10月から、ある特定の地域で新築の住宅を建設・購入する場合、一部の住宅ローンが利用できなくなるのをご存じでしょうか? 住宅を建設、購入するに当たっては、繰り返される豪雨や地震などの土砂災害から、人命や財産を守るための制度改正とその背景について理解しておきましょう。

近年の土砂災害の状況

近年は豪雨の増加から、土砂災害の発生件数も増加傾向にあります。2018年の「平成30年7月豪雨」(西日本豪雨)では1982年からの平均の約2.5倍に当たる2,581件もの土砂災害があり、2020年も1,316件と平均の約1.2倍の土砂災害が発生しました(※)。

※国土交通省:近年の土砂災害実績を踏まえた課題
※国土交通省:砂防ニュース

2021年も全国的に豪雨が続き、熱海伊豆山の土砂崩れは記憶に新しいところです。その後も7月、8月にかけて前線の停滞などで豪雨が数日間も続き各地で土砂災害が発生しています。

土砂災害発生件数の推移(昭和57年〜令和2年)

出典:国土交通省

レッドゾーンとは?

ひとたび土砂災害が発生すると、損害は甚大です。家や家財が流されるだけでなく、多くの人命が失われることもあります。このように繰り返される土砂災害から人命を守るため、国は1999年6月の「広島豪雨災害」(土砂災害325件、死者24人)を機に、土砂災害防止法の策定に着手しました。

現在は土砂災害防止法に基づいて、危険が大きい区域については都道府県が通称イエローゾーンとよばれる「土砂災害警戒区域」の指定を進めています。「土砂災害警戒区域」の中でも、特に建物の損壊や住民の命が危険となる区域が通称レッドゾーンの「土砂災害特別警戒区域」に指定されます。

イエローゾーンやレッドゾーンに指定される場所は、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)や、土石流、地滑りの危険性が大きい区域です。各都道府県が、渓流や斜面など土砂災害の被害を受ける危険がある区域の地形や地質、土地の利用状況について調査を行い、結果を公表後区域の指定を行います。5年ごとに再度調査が行われ区域が見直されます。

出典:国土交通省

「土砂災害特別警戒区域」、いわゆるレッドゾーンに指定されると、宅地の分譲などの開発行為は都道府県知事の許可制となります。また、建物の構造が基準を満たすか指定検査確認機関の確認を受けることが必要になります。危険が高まれば建物の移転を勧告されることもあります。

建物の移転を勧告された場合については、住み替え先の家の建設や購入のために住宅金融支援機構の融資制度が設けられています。「地すべり等関連住宅融資」として一般の【フラット35】よりも低い金利で、一定の条件を満たせば最高3,700万円まで融資を受けられます。親子リレーローンや親の家の移転のために融資を受けることもできます。なお、融資を受けるためには市区町村からの勧告書が必要です。

10月からレッドゾーンで【フラット35】Sが利用不可に

こうした土砂災害による危険防止の流れを受けて、レッドゾーン内で新築住宅を建設または購入する場合、2021年10月から【フラット35】Sが利用できなくなります。

【フラット35】Sとは、国が定めた基準を満たし認定された長期優良住宅や省エネルギー性、耐震性などが高い住宅を購入する場合に、全期間固定金利の【フラット35】の金利を一定期間引き下げる制度です。2022年3月31日までに申し込んだ場合、住宅の性能によって当初5年間、または10年間、金利が年0.25%引き下げられます。

レッドゾーンで【フラット35】Sが利用できなくなるのは、2021年10月以降に【フラット35】の設計検査申請を行って建設、または購入する住宅です。敷地の一部分でもレッドゾーンに含まれていると利用できなくなります。住宅金融支援機構が示している以下3つのケースで、利用できる・利用できないを確認してみましょう。

【ケース1】住宅の全部がレッドゾーン内に含まれている

敷地も住宅も全てレッドゾーン内にあるため、【フラット35】Sは利用できません。

出典:住宅金融支援機構

【ケース2】住宅の一部がレッドゾーン内に含まれている

敷地の一部がレッドゾーンで、住宅の一部もレッドゾーンに含まれているため、【フラット35】Sの利用はできません。

出典:住宅金融支援機構

【ケース3】敷地の一部はレッドゾーンだが住宅は含まれていない

敷地の一部はレッドゾーンでも、建設する住宅がレッドゾーンに含まれないため【フラット35】Sの利用は可能です。

出典:住宅金融支援機構

レッドゾーンに関して【フラット35】Sの利用ができなくなるのは、2021年10月以降に「設計検査申請」をした建物です。着工時期が基準とならないことに注意が必要です。たとえば、9月に着工しても竣工(しゅんこう)済み特例で10月以降に設計検査を行う場合は【フラット35】Sを利用できません。

また、設計検査時にはレッドゾーンに指定されていなかったが、着工後に指定された場合や、中古住宅を購入する場合には【フラット35】Sを利用できます。

最後に

国土交通省によると、レッドゾーンは2021年3月31日時点で全国に約55万ヶ所もあります。住宅の建設や購入を考えている地区がレッドゾーンに含まれているかどうかは、各市区町村のハザードマップや都道府県の土砂災害警戒区域マップなどで確認できます。

【フラット35】Sが利用できる、利用できないにかかわらず、自分や家族の命、財産を守るために、購入を検討している家がイエローゾーンやレッドゾーン内に入っていないかは契約前に必ず確認しましょう。

もし、レッドゾーンに入っていれば、契約時に重要事項説明をしっかりと聞いて、建物の構造が土砂災害に耐えられるものか、いざというときの避難経路が確保できるかなどを確認の上、建設・購入しましょう。

【参考】【フラット35】Sの特長については>>ここをチェック