東京23区の北東部に位置する荒川区は、下町風情が残る親しみやすい街です。近年は、日暮里駅前や南千住などで再開発が進むなど街の姿も大きく変わってきています。また、さまざまな子育て支援策もあり「子育てしやすい街」という評価も。今回は、荒川区の街の魅力と住宅事情を紹介します。

下町情緒とものづくりの街が再開発でより暮らしやすく

荒川区は東京の北東部に位置し、隅田川が北東部に流れています。東西に長い形で道灌山(どうかんやま)のある南西側の一部を除き、ほぼフラットな地形です。総面積は10.16平方キロメートルで、東京23区内では台東区に次いで総面積の小さい区です。

荒川区の位置図(出典:荒川区ホームページ)

【荒川区のデータ】
区制施行日…1932年10月1日
総面積…10.16平方キロメートル
人口…21万6,307(2021年8月1日現在)
世帯数…11万7,450(2021年8月1日現在)

荒川区の統計情報によれば、2021年8月1日時点の荒川区の総人口は、21万6,307。2006年8月1日の荒川区の総人口は19万2,064であり、この15年間で人口が2万人以上増えています。その大きな要因として考えられるのが、日暮里駅前や南千住などで行われた再開発です。

日暮里駅前の再開発街区

東京都心に近く、日光街道などの幹線道路が通り、荒川の流れる荒川区には、繊維・製紙・機械などの工場が明治以降に進出。工業の街として発展しました。町工場も点在し、ものづくりの街としても知られています。

この荒川区は、住宅・商業・工業が混在しながら密集し、建物の老朽化が進んでいることが課題でした。そのため、防災機能の向上や街の活性化を図るべく、再開発などによる市街地整備が進められてきました。たとえば日暮里駅前地区は、新交通システム日暮里・舎人ライナーの開業を契機に、段階的かつ一体的に市街地再開発事業によって街が整備されました。

南千住駅では、駅東側で行われた白鬚西地区市街地再開発事業や南千住地区住宅市街地総合整備事業などの大規模開発により、にぎわいのある新しい街が誕生。駅西側では、つくばエクスプレス線の開業に合わせた市街地再開発事業により、駅前広場や複合施設が整備されました。

南千住の白鬚西地区の分譲マンション

荒川区の将来都市構造図(出典:荒川区都市計画マスタープラン)

また、2017年には中央図書館、吉村昭記念文学館、子どもひろばが一体となった「ゆいの森あらかわ」が荒川区荒川2丁目にオープン。約60万冊の蔵書や約900席の座席があります。免震構造採用の5階建ての施設には、ホールや子どもを遊ばせられるラウンジなどもあり、利用者はすでに100万人を超えています。さらに、国家戦略特区を活用した都立公園内の保育園・学童施設の設置など、さまざまな子育て支援策を実施しています。

ゆいの森あらかわ

荒川区内には、日暮里駅を通るJR山手線やJR常磐線をはじめ、東京メトロ日比谷線、東京メトロ千代田線、京成本線、つくばエクスプレス線、日暮里・舎人ライナー、東北本線などさまざまな鉄道の駅があります。日暮里駅からは上野駅へ約3分、東京駅へ約10分でアクセスできます。
また、都電荒川線(東京さくらトラム)は東京に残る唯一の都電で、三ノ輪橋から早稲田間の12.2キロメートルを運行。30ある停留場のうち、荒川区内には三ノ輪橋から荒川車庫前まで13の停留場があり、商店街や図書館、公園など荒川区内のさまざまなスポットを結んでいます。

都電荒川線三ノ輪橋停留場

9割近くの区民が「住み続けるつもり」と回答 荒川区の魅力とは?

2020年荒川区政調査によれば、「これからも荒川区にお住まいになりますか」という質問に対し、「住み続けるつもり」が59.7%、「当分の間は住むつもり」が27.8%という結果に。9割近くの人が住み続ける意向があることがわかりました。その理由としては、「買い物など毎日の生活の便が良い」が33.9%、「通勤・通学に便利」が33.2%。都心アクセスが良好で通勤・通学がしやすいことに加え、買い物がしやすいことが住み続けたいと考える理由になっているようです。

日暮里駅から徒歩約5分の場所にある谷中ぎんざ

親しみやすい下町として発展した荒川区には、さまざまな商店街があります。日暮里駅近くには、しゃれたカフェやお店が点在し、観光客でにぎわう商店街・谷中ぎんざが立地。都電荒川線の始発の停留場である三ノ輪橋周辺には、アーケードのあるジョイフル三ノ輪商店街があり、総菜店をはじめ地域密着の多彩な店が連なります。

ジョイフル三ノ輪商店街

また、隅田川をはじめ、自然が多く残るのも荒川区の特徴です。「荒川自然公園」は、東京都下水道局三河島水再生センターの上に人工地盤を造って設置された公園。テニスコート、野球場、児童遊園コーナー、プール、芝生の広場にアスレチックコーナー、昆虫観察園などがあります。新東京百景に選定され、東京都を代表する景勝地の一つとなっています。6万平方キロメートルを超える広さがあり、ウオーキングや散歩も楽しめます。

荒川自然公園

さらに南千住の汐入地区には、12万9千平方キロメートルもの「汐入公園」があります。同公園は、2006年に開園した市街地再開発事業によって整備された都立公園。隅田川に隣接し、ふれあい広場などの多様な広場とともにスポーツ施設や野外ステージ、噴水、遊具などが設けられています。非常に開放感のある公園で、隅田川花火大会の見学スポットにもなっています。現在リニューアル工事で閉鎖中の「あらかわ遊園」もあり、荒川区にはレジャースポットも豊富にあります。

汐入公園と隅田川

都心へのアクセスが良好で買い物の利便性が高く、憩いのスポットも豊富な荒川区。子育て層に支持され、人口が増えているのもうなずけます。

交通利便性の高い場所は価格が上昇

下町と再開発が混在する荒川区の住宅事情は、その街ごとでさまざまです。市街地再開発によってタワーマンションが立ち並ぶ日暮里駅周辺は、JR山手線だけでなく、京成本線、常磐線、日暮里・舎人ライナーが利用可能。交通利便性が高く共働き層やシングル層に人気があります。

三河島駅前と尾竹橋通り

また、JR常磐線三河島駅や東京メトロ千代田線町屋駅の駅前でも市街地再開発事業で住宅や生活関連施設が整備されています。こうした再開発プロジェクトは、今後も駅周辺部で計画されており、居住ゾーンの整備により新たなにぎわいを生み出すでしょう。

南千住駅周辺では、1980年代から大規模な再開発が始まり2000年代に開発が進められた汐入地区でファミリー向け大規模マンションが分譲されました。スケールの大きな再開発エリア内には、「汐入公園」や大規模商業施設もあり、レジャーや買い物に便利です。また、町屋駅や尾久駅周辺などは下町の雰囲気が残っており、マンションと戸建てが混在するエリアとなっています。

都心のマンション価格の上昇を受け、荒川区の住宅価格も上昇傾向にあります。荒川区は中古マンションストックが豊富なので、築年数にこだわらなければ新耐震基準のマンションの3LDKが3,000万円台から売り出しがあります。また、新築戸建てについては、土地面積を抑えた狭小敷地の戸建ての供給が多く、なかには3,000万円台の物件も。予算やライフスタイルに応じて住まいを選べるのは、荒川区の魅力でしょう。

ここからは、荒川区内のおすすめの街を3つ紹介します。

マルチアクセスで山手線も利用可能! 古くて新しい日暮里

日暮里駅前の再開発街区の広場

日暮里駅は、JR山手線、京浜東北線、常磐線、京成電鉄本線、日暮里・舎人ライナーが利用できる交通利便性の高いターミナル駅。駅周辺には、歴史を感じる商店街・谷中ぎんざや生地を扱う店が全長約1キロメートルにわたって立ち並ぶ日暮里繊維街があるなど、多彩な魅力を感じられる街です。

90以上の生地を扱う店が集まるにっぽり繊維街

日暮里・舎人ライナーの導入を契機に、複合市街地の形成や利便性・防災性の向上、にぎわいの創出を目指し、駅前の3地区で市街地再開発事業を推進。駅前広場や歩行者デッキが整備され、商業施設や業務施設・公益施設が一体となった街区が誕生しました。生活利便性が高まるとともに、街の風景も一新されました。

尾久橋通り沿いの街並み

駅周辺には、尾久橋通りや尾竹橋通りといった幹線道路もあり、マンション供給も活発です。現在、西日暮里や三河島といった周辺エリアで再開発事業が計画中で、さらに街の整備が進んでいくでしょう。

日暮里駅からは、羽田空港や成田空港などへのアクセスもスムーズ。新築マンションの価格は、2LDKタイプで6,000万円台からと利便性が良いだけに高額ですが、忙しいビジネスパーソンにおすすめの街です。

自然豊かで買い物も便利 子育てしやすい街・南千住

南千住は、もともと日光街道の千住宿があった交通の要衝。現在は東京メトロ日比谷線、つくばエクスプレス線、JR常磐線の3路線が利用できる交通利便性の高い街になっています。かつては工業が盛んな街でしたが、南千住地区住宅市街地総合整備事業や2010年に事業が完了した白鬚西地区市街地再開発事業などによって公園や水辺が整備され、美しい街に変貌しています。

南千住の再開発街区の街並み

白鬚西地区の街なかには、学校や病院のほか遊具の置かれた公園なども点在し、子育てしやすい住環境が整っています。西口の駅前には、「LaLaテラス南千住」「BiVi南千住」といった商業施設もあります。また、東口側には、市街地再開発の複合施設「アクレスティ南千住」や商店街も立地。また、隅田川沿いの散策道や芝生が広がる「汐入公園」など、街なかに自然が豊富にあります。憩いのスポットと生活関連施設がそろった便利な街です。

東口側の再開発街区のマンション分譲はすでに完了しており、広くて住環境良好な中古マンションは人気があります。西口では新築マンションの販売が続き、1LDKから3LDKまで多彩なプランが供給されています。

南千住の住宅街

下町情緒がたっぷり 3路線が交わるにぎわいある街・町屋

町屋駅前(尾竹橋通り)

東京メトロ千代田線、京成本線、都電荒川線の3路線が利用可能で、路地が多く下町情緒あふれる街が町屋です。尾竹橋通り沿いに東京メトロ千代田線町屋駅があり、駅周辺では、市街地再開発による複数の複合施設が造られ、街の中核となっています。駅東側には隅田川が流れ、尾竹橋を渡ると足立区になります。

まちやアヴェニュー

町屋は、駅前から町屋駅前銀座商店街やまちやアヴェニューといった商店街が広がっていて買い物に便利なにぎわいある街です。また荒川自然公園や図書館のある「ゆいの森あらかわ」といった憩いのスポットも生活圏。子どもから大人まで楽しめる場所が豊富にあります。新築マンションの供給や新築戸建ての供給も活発です。

都心アクセスが良好で、子育てしやすい住環境が魅力の荒川区ですが、隅田川に近いエリアということもあり、水害リスクには注意が必要です。また、道幅の狭い路地があり、老朽化した木造の建物も多いため、地震発生時の倒壊リスクや火災リスクも留意しましょう。しかし、街の防災性は、再開発や建て替えによって2000年代以降高まりつつあります。拠点性が高く、下町情緒が残る荒川区。バランスの取れたライフスタイルを求める人に検討してほしい街です。