公立小学校に通う子どもがいる家庭では、私立中学や国立中学、中高一貫校などを受験するかどうかを悩むケースも多いでしょう。私立中学受験のためには塾や家庭教師の費用がかかりますし、進学後も学費などの家計負担も大きいため、決断には慎重になりたいところです。今回は、私立中学に通う子どもの割合が高くないものの、大学進学率が高い愛知県、埼玉県、山梨県の中学受験事情を紹介します。

私立中学受験が大学進学への近道、とは言い切れない?

私立中学受験を検討している保護者の多くは、私立中学受験を将来の大学受験対策の一つとして捉えているようです。実際、名門私立中学に入学した子どもの多くは、難関大学に進学する傾向があると言われています。私立高校の大学進学率は全国平均で65.88%、全国平均は55.76%であるため、中学受験で中高一貫の私立校に進学すれば、大学に進学できる確率が高くなると言えそうです。

しかし、私立中学に通わなければ、希望する大学には進学できないかといえば、そんなことはありません。

まずは文部科学省が発表した2020年度の「学校基本調査」から、全国の私立中学に通う子どもの割合が高い都道府県ランキングと、大学進学率ランキングを確認しましょう。

出典:【私立中学に通う子どもの割合】文部科学省「学校基本調査/令和2年度 『75 学年別生徒数』」、【大学進学率】 文部科学省「学校基本調査/令和2年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校《報告書掲載集計》 卒業後の状況調査 高等学校 全日制・定時制」よりいずれも筆者算出(小数点第3位を四捨五入)

出典:【私立中学に通う子どもの割合】文部科学省「学校基本調査/令和2年度 『75 学年別生徒数』」、【大学進学率】 文部科学省「学校基本調査/令和2年度 初等中等教育機関・専修学校・各種学校《報告書掲載集計》 卒業後の状況調査 高等学校 全日制・定時制」よりいずれも筆者算出(小数点第3位を四捨五入)

「私立中学に通う子どもの割合が多い都道府県ランキング」と「大学進学率ランキング」を見比べてみると、私立中学に通う子どもの割合が全国平均より高いのに大学進学率が全国平均より低い都道府県(黄色いマーカー)があることがわかりました。また、「私立中学に通う子どもの割合が多い都道府県ランキング」ではTOP10圏外であるものの、大学進学率ではTOP10入りしている都道府県(青いマーカー)もあります。

ここでは、私立中学に通う子どもの割合が高くないものの、大学進学率が高い愛知県、埼玉県、山梨県の中学受験事情を探っていきたいと思います。

愛知県民は中学受験より高校受験で勝負?

私立中学に通う子どもの割合が全国平均以下の愛知県。大学進学率が高い理由は?

愛知県の私立中学に通う子どもの割合は4.75%で全国19位。全国平均は7.54%のため、全国平均を下回っています。一方、大学進学率は全国8位の59.05%。なぜ愛知県では私立中学に通う子どもの割合がそこまで高くないのでしょうか。

その理由の1つは、公立高校のレベルの高さにあると考えられます。愛知県には難関大学への高い進学実績を誇る公立高校が多数存在しています。県立の旭丘高等学校、岡崎高等学校といったハイレベルな進学校の存在が、私立中学受験はせずに、高校受験でハイレベルな公立高校を目指す理由の一つとなっているのかもしれません。

東京の私立中学に通う子どもが多い? 埼玉の受験事情

埼玉県の高校生の大学進学率は全国9位ですが、私立中学に通う子どもの割合は全国17位(5.15%)と全国平均以下です。埼玉県の2人以上の勤労者世帯の世帯年収は937万3,152円と、東京都を抜いて日本一。金銭的理由で私立中学を選択しないわけではないようです。また埼玉県内には私立中学が30校以上あり、ハイレベルな私立校も少なくありません。

では、なぜ埼玉県では私立中学に通う子どもの割合が、近隣の1都3県と比較すると低いのでしょうか。

出典:文部科学省「学校基本調査/令和2年度 『75 学年別生徒数』」より筆者算出(小数点第3位を四捨五入)

私立中学に通う子どもの割合が埼玉県は低く、東京都が高い大きな理由は、上記の割合が「都内・県内の中学生の総数」と「私立中学に通う子どもの総数」から計算されている点にあります。2021年5月時点では、一部の都道府県を除き、小学校卒業者の進路状況の統計を公開していません。したがって、その都道府県の中学生の総数と私立中学に通う子どもの数から、私立中学に通学する子どもの割合を算定することしかできないのが現状です。つまり、越境進学が考慮されていないため、たとえば「埼玉県在住で、東京都内の私立中学に通う生徒」の実数などは知ることができません。

ちなみに、東京都内で学ぶ中学生のうち、私立中学校に通う子どもの割合は25.20%ですが、東京都の統計によると東京都内の小学校から私立中学に進学した子どもの割合は18.40%。この差は他都道府県からの進学者によるものと考えられます。

また、東京都内の私立中学生の数は7万6,707人で、中学1年生の総数は2万6,483人。このうち都内の小学校から都内の私立中学校に進学した子どもの数は1万7,859人です。つまり8,624人は東京都外からの通学者ということになります。

数値には現れていないものの、埼玉県の中で都内にアクセスが良い地域に住んでいる子どもが、都内の私立中学に通っているケースが多数存在していると考えられます。

本好き&勉強好き? 大学進学率が高い山梨

山梨県も愛知県と同様に、私立中学に通う子どもの割合が高くないものの、大学進学率が高い地域です。山梨県には現在運営中の私立中学は6校しか存在せず、難関大学合格を狙えるレベルの高校の附属中学はそう多くありません。山梨県内の高校の偏差値ランキングの上位は公立高校ばかりです。

地方都市では、私立高校よりも公立高校の偏差値が高く、高い進学実績を誇ることはめずらしくありません。とはいえ大学進学率が高い都道府県の上位は、私立中学通学率が高い都道府県とある程度似た顔ぶれです。ではなぜ、山梨県の大学進学率は全国平均よりも高く、全国10位にランクインしているのでしょうか。

その秘密を解くカギを探していたところ、山梨県民が「読書好き」というヒミツにたどり着きました。山梨県では人口100万人当たりの図書館の数が日本一。全国平均は26.2館ですが、山梨県は65.9館もあるのです。
図書館の数が多いと、本を読めるだけでなく静かな勉強場所を確保しやすいこともメリットに。学習環境が整っていることも、山梨県の大学進学率が高い理由の1つなのかもしれませんね。

ちなみに山梨県の県庁所在地である甲府市では、書斎・学習用机・椅子への支出が日本一。全国平均は1ヶ月当たり738円ですが、甲府市は1,722円です。甲府市の人は学習環境にこだわりを持っているとも言えそうです。

まとめ

今回は、私立中学への通う子どもの割合が多い都道府県ランキングでは上位にランクインしていないものの、大学進学率ランキングではTOP10入りしている愛知県、埼玉県、山梨県の中学受験事情や勉強を取り巻く環境についてお届けしました。
子どもの学習環境を軸に住む場所を選びたいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。