2021年都道府県地価調査が発表されました。これは国土利用計画法施行令に基づき、各都道府県知事が毎年7月1日時点の基準地の1平方メートル当たりの価格を調査し公表するもの。都道府県の発表に合わせて、国交通省が全国の状況を取りまとめて公表しています。

コロナ禍となってから1年半余り。地価は、未来の動きを示すモノサシでもあります。都道府県地価調査の基準地価の動向を見ながら今後の街探しを考えます。

2年連続下落も下落率は縮小。開発が進む街の商業地は上昇

コロナ禍の影響もあり住宅地、商業地、工業地などを合わせた全用途の平均は2年連続の下落となりましたが、下落率は前年と比べて縮小。用途別では、住宅地は下落率が前年と比べて縮小した一方、商業地は下落率が拡大しました。三大都市圏については、住宅地は東京圏、名古屋圏で前年と比べて下落から上昇に転じ、大阪圏は下落が継続しましたが下落率は縮小しました。

また、商業地に関しては、東京圏で前年と比べて上昇が継続したものの上昇率は縮小。東京都の商業地は、マイナス0.3%と下落に転じています。また、大阪圏は2012年以来9年ぶりに下落に転じ、名古屋圏は下落から上昇に転じています。

地方圏は、全用途平均は下落が継続しているものの前年と比べて下落率が縮小。用途別では、住宅地は前年と比べて下落率が縮小し、商業地は下落率が拡大しています。全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、地方四市(札幌市、仙台市、広島市および福岡市)では上昇を継続し、地方四市を除くその他の地域では下落が継続しました。

都心アクセスが良好で、生活利便性が高い街の地価が上昇

次に、首都圏の平均変動率から傾向を読み取りましょう。人口10万人以上の市の住宅地対前年平均変動率を見ると、東京23区以外で1%以上の上昇率を示したのは、埼玉県が川口市、戸田市。千葉県は、市川市、木更津市。神奈川県では、横浜市が神奈川区、西区、中区、港北区。川崎市が、川崎区、幸区、中原区、高津区となっています。木更津市がアクアマリン経由で車アクセスが良好なことを踏まえると、東京都心へのアクセスが良好な街の住宅地の変動率が高くなっています。

川口市のJR川口駅を例に挙げれば、東京駅まで20分台でアクセス可能。駅周辺が歩行者専用通路で結ばれ図書館のある複合施設や商業ビル、駅前の公園などへ移動しやすい。また、大型ショッピングモール・アリオ川口などの商業施設も充実していて身近で買い物が済ませられます。同様に、川崎市中原区にある武蔵小杉駅や川崎市高津区にある溝の口駅なども駅周辺に商業施設が充実し都心アクセスも良好です。

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大型商業施設アリオ川口と住宅が一体で整備された川口市のリボンシティ

マンション価格の上昇で、東京23区内で一定の広さの住まいを買うのはなかなか難しくなっています。ある程度予算内に抑えつつ通勤にも生活にも便利な街が支持されていることが2021年地価調査からうかがえます。

次に、商業地の平均変動率を見てみます。東京23区では、千代田区、中央区、新宿区の3区が1%以上のマイナスになっており、渋谷区や港区も0.5%以上下落しています。一方で、1%以上上昇しているのが東京都三鷹市でプラス1.6%です。千葉県では、市川市がプラス4.1%、流山市がプラス2.0%と大きく上昇。神奈川県では、横浜市の神奈川区プラス3.3%、西区プラス4.3%、南区プラス2.3%、保土ヶ谷区プラス2.5%。さらに厚木市がプラス2.0%上昇しています。

流山おおたかの森駅前の街並み

千葉県流山市や横浜市神奈川区は、都心アクセスの良さから新築マンションの売れ行きも好調です。コロナ禍以降、マンションの売れ行きは好調です。東京都心では、商業地の最有効利用がコロナ禍前はビジネスホテル利用など住宅用途以外で取引されるケースが多く、宿泊客の落ち込みの影響がまだ続いています。近郊エリアの商業地は、マンション用地としての活用や地元消費の恩恵もあるため堅調な場所が目立ちます。

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下落率上位は、駅から離れた場所の坂のある住宅地

次に下落率の上位の場所を見てみましょう。東京圏の住宅地下落率上位10地点の行政区は、東京都東大和市、東京都日野市、神奈川県横須賀市、神奈川県三浦市、千葉県野田市、千葉県我孫子市に立地する地点。令和3年の基準地価格は1平方メートル当たり10万円を下回る東京圏では地価の低い場所です。

下落率1位の「東京都東大和市湖畔二丁目※以下省略」は、2021年の基準地価格が1平方メートル当たり8万6,000円で対前年マイナス8.5%。これは、東大和市のほかの住宅地の変動率を大きく下回っています。要因として考えられるのが、駅から離れた坂のある古い住宅地であること。地区計画によって、敷地が一定面積以上の広さを保つ必要があり土地価格の総額が高くなります。結果的に高齢者や若いファミリーの需要が限られ地価が下がっています。

同様に下落率2位マイナス7.5%の「東京都日野市平山二丁目※以下省略」も最寄駅から離れた坂のある高台の住宅街。日野市の2021年住宅地の変動率は、マイナス1.1%ですからこれを大きく上回ります。下落率3位マイナス6.0%の「神奈川県横須賀市長坂三丁目※以下省略」も高台の傾斜地の住宅街。最寄り駅からも距離があります。

横須賀平和中央公園から見た富士山

横須賀市は、場所によっては富士山も眺められる風光明媚なすてきな土地ですが、駅から離れた坂のある住宅地が多いです。2021年の横須賀市の住宅地基準地価の変動率は、マイナス2.0%。東京圏の人口10万人以上の市区で下落率が2%を超えるのは横須賀市と野田市の2市だけです。こうした坂のある域では、一部が土砂災害警戒区域に指定されている場合があります。豪雨災害がたびたび起こっていることも需要の減退につながっていると考えられます。

都市開発で目立つ横浜・名古屋・福岡

横浜駅西口とJR横浜タワー

商業地の上昇が目立つのは、首都圏では横浜市のプラス1.8%。首都圏の商業地上昇率のトップ3は、すべて横浜市西区となっています。『高島2-14-11』9.1%、『南幸1-3-1』8.1%、『北幸1-8-4』7.9%。横浜駅周辺では、2020年に完成したJR横浜タワーに続き、複数の再開発プロジェクトが進行中です。

(仮称)中日ビル建替計画の建設地

名古屋圏の商業地では、上昇率上位のトップ3が、錦アドレスに。『錦二丁目19番1号』11.5%、『錦三丁目5番30号』11.3%、『錦一丁目2番11号』11.1%。名古屋市では、名古屋駅周辺が再開発で大きく変貌しましたが、商業施設が集積する栄地区の開発が活発化。現在、中日ビルの建て替え工事が進行中など複数の計画が進行中。2020年秋には、久屋大通公園(北エリア・テレビ塔エリア)が、公園と店舗が一体となった「Hisaya-odori Park」として再生。多くの人でにぎわっています。

久屋大通公園の商業施設

さらに上昇率で上回るのが、福岡県福岡市の中心部。『博多区綱場町9-28』15.8%、『博多区冷泉町5-32』15.1%、『中央区高砂2-6-23』15.0%。新たな空間づくりに伴う雇用増加が期待される天神ビッグバンが福岡市の中心部では進行中。都道府県の県庁所在地としては、商業地・住宅地ともに福岡市が上昇率トップ。2020年の国勢調査の速報値によれば福岡市は政令指定都市の中で、人口増加率も全国1位です。

出典:福岡市の魅力|福岡市への企業立地に関するご案内

福岡市の街並み

札幌市、仙台市といった地方中核都市の地価も堅調です。こうした地方都市の中心市街地に共通するのは、通勤時間の短いコンパクトシティーであること。コロナ禍の中で、電車などによる遠距離移動が敬遠されてきましたが地方都市はそもそも平均的な通勤時間が短い。商業地として全国で最も高い「東京都銀中央区銀座2丁目2番19外(地番)」(明治屋銀座ビル)は、2021年都道府県地価調査でマイナス3.7%と依然として下落しています。大阪も同様で、インバウンド需要の大きかった街の地価はコロナ禍の影響が払しょくされるまで、弱含みで推移しそうです。

参考:令和3年都道府県地価調査 基準地価格高順位表(全国)

まとめ

コロナ禍によって、通勤利便性だけでなく1回の外出で用事が済ませられるような身近に便利さや快適さがある街を求めるようになってきました。マンション市場を見ても、大型商業施設がそばに立地するマンションは引き合いも多く売れ行きも堅調です。2021年9月30日で新型コロナウイルス対策で実施されていた緊急事態宣言が全国で解除されましたが、ステイホームを経験した今、便利で快適な住まいを求める動きは今後も続くのではないでしょうか。