新型コロナウイルス感染拡大に伴う給付金の話題などを通じて、住民税非課税世帯という言葉を耳にする機会が増えています。ほとんどの人に支払う義務のある住民税ですが、払わなくていい人とは具体的にどのような状況にある人なのでしょうか。

この記事では、住民税非課税世帯となる要件や優遇措置などについて詳しく解説していきます。

住民税とは?

住民税とは、都道府県や市町村が提供する地域サービスにかかる費用にあてるため、その地域に住む人などが納めなければならない地方税のことです。住民税には、大きく分けて自治体に居住する個人が支払う個人住民税と、自治体に事務所を構える法人が支払う法人住民税があります。

このうち法人住民税が非課税となるのは、公益法人や公共法人といった収益事業を行わない法人のみ。株式会社や合同会社など一般の法人は、たとえ赤字であっても法人住民税が非課税となることはありません。

一方の個人住民税は、収入が一定以下の人については非課税になる場合があります。この記事で「住民税」と言った場合、個人住民税を指すものとします。住民税には次のようなものがあり、合計額に対して課税される仕組みです。なお、利子割・配当割・株式等譲渡所得割は都道府県民税のみ課税されます。

住民税の税率は自治体によって異なりますが、原則都道府県民税と市町村民税合わせて約10%。所得割・均等割のうち、所得割のみ非課税となるケースもあります。

所得割とは?
住民税の多くを占める所得割は、前年1月〜12月の所得金額に応じて課税されるもの。所得割による税額は次の計算式により算出されます。

所得割額 = (前年の所得金額−所得控除額)× 税率−調整控除額−税額控除額

所得割額の標準税率は10%(市町村民税6%・都道府県民税4%が標準)となっており、基本的にはこの税率が適用されます。ただし、一部の自治体では異なる税率が用いられているため、住んでいる自治体によって若干増減する可能性があります。

均等割とは?
住民税のうち、所得金額に関係なく定額で課税されるのが均等割です。冒頭で紹介した通り、住民税には地域サービスにかかる費用を地域住民で負担するという意味合いがあるため、会費のような扱いの均等割が存在するのです。

均等割の標準税額は、市町村民税3,500円・都道府県民税1,500円を合わせた5,000円。東日本大震災を教訓として、地方自治体の防災関連施策にかかる財源を確保する目的で、2014年度〜2023年度の間は標準税率に1,000円(市町村民税と都道府県民税で500円ずつ)が加算されています。

ただし、こちらもあくまで標準税額のため、住んでいる自治体によって増額の場合もあります。

住民税が非課税になる要件とは?

それでは、住民税を払わなくていい人とはどのような人なのでしょうか。ここでは東京23区内をベースに、住民税が非課税になる要件について解説します。なお、自治体によって要件に若干の差がある点には注意しましょう。

前年の所得が各地方自治体の定める額以下の場合
前年の所得が各自治体の定める額以下の人は住民税が非課税となります。東京23区であれば、合計所得が下の計算式で算出される金額以下の人が対象です。

35万円 ×(本人+被扶養者の人数)+ 21万円(注1) + 10万円
(注1)被扶養者がいる場合に加算

たとえば、東京23区に住む単身者の場合、上の式より合計所得が35万円+10万円=45万円以下の人は住民税が非課税となります。合計所得は給与所得控除後の金額であるため、前年の給与収入が100万円以下の人というのが、東京23区における住民税非課税の条件です。

上の式からわかる通り、扶養家族がいる場合には給与収入が100万円より高くても、非課税となる可能性があります。これらの条件を満たすケースでは所得割、均等割ともに非課税となります。

生活保護を受けている場合
生活保護法による生活扶助を受けている人は所得割、均等割ともに非課税とされています。生活保護を受けている場合は、住民税だけではなく、所得税や医療費、国民健康保険料、国民年金保険料、公立高校の授業料などの支払いも免除されます。

障害者・未成年者・寡婦(寡夫)またはひとり親で一定条件を満たす場合
障害者・未成年者・寡婦(寡夫)またはひとり親の世帯の場合、前年の合計所得金額が135万円以下であれば、所得割、均等割ともに非課税となります。給与所得者であれば、前年の年収が204万4千円未満の人が対象です。

住民税が非課税になった場合に活用できる優遇措置

ここまで紹介した要件に当てはまり住民税が非課税となると、住民税を払わなくてもいいということ以外にも、次に挙げるような支援や優遇措置を受けられます。なお、世帯全員が住民税非課税者の世帯のことを「住民税非課税世帯」と呼びます。

国民健康保険料の減額措置
国民健康保険料には、所得に応じて負担額が決まる所得割額と全加入者が負担する均等割額があり、住民税非課税世帯は均等割額の軽減を受けられます。軽減割合は世帯所得と世帯人数によって定められ、条件に応じて保険料が2割〜最大7割減額されます。具体的には、次のような計算式により減額割合を求めることが可能です。

(注2)「10万円 ×(給与所得者等の数 −1)」は、給与所得者等が2人以上の世帯のみ計算

介護保険料の減額措置
介護保険は原則として40歳以上全員が加入し、介護保険料を支払わなければなりません。ただし、住民税が非課税の人においては保険料の減額措置が設けられています。

自治体によって内容に違いはありますが、介護保険料には住民税の課税状況などに応じていくつかの所得段階が設定されていて、当てはまる段階の保険料を支払う仕組みです。この仕組みにより、住民税非課税世帯では保険料が大きく減額されます。

国民年金保険料の免除措置
国民年金保険料も毎月納める必要のあるものですが、経済的な理由で保険料を納めることが難しい人は、申請すれば保険料の全額免除または一部免除を受けられるという制度があります。この仕組みにより、住民税が非課税の人は申請すれば原則全額免除となります。

ただし、免除により保険料を納めていない期間があると、将来受け取れる老齢基礎年金が減額される点は要注意です。

医療費の自己負担額の軽減措置
1ヶ月の間に医療機関や薬局で支払った医療費が一定の限度額を超えた場合、超過分が支給されるという高額療養費制度。1ヶ月あたりの限度額は加入者の年齢や所得水準によって定められており、住民税が非課税の人の自己負担限度額は3万5,400円(69歳以下の場合)と低めに設定されています。

さらに「多数回該当」という仕組みも設けられていて、過去1年以内に3回以上限度額に達した月があった場合、4回目以降は1ヶ月あたりの自己負担限度額が2万4,600円(69歳以下の場合)まで軽減されます。

大学など高等教育の無償化
家庭の経済状況にかかわらず、進路への高い意識や進学意欲のある学生が高等教育を受けられるよう、2020年4月より高等教育の修学支援新制度が始まりました。この制度により、住民税非課税世帯の学生は、上限額の範囲内で大学・短期大学・高等専門学校・専門学校における授業料などの減免を受けられます。

また、学生が学業に専念できるよう、日本学生支援機構による給付型奨学金を受けることも可能です。

保育料の無償化
3歳から5歳までの子どもが幼稚園、保育所、認定こども園などに通っている場合、利用料が無償となります。住民税非課税世帯では、さらに0歳から2歳の子どもについても利用料が無償化。これにより、住民税非課税世帯の子どもがいる世帯では、子どもが小学校に入学するまで利用料を負担する必要がありません。

その他の減免制度
ここまで紹介した制度以外にも、住民税非課税世帯を対象とした自治体などによる減免制度が多く設けられています。主なものは次の通りです。

●入院中の食費における自己負担限度額の減免
●がん検診費用の自己負担免除
●予防接種費用の自己負担免除
●NHK受信料の免除(世帯構成員に身体障害者や知的障害者がいる場合など)

また、新型コロナウイルス感染拡大期には住民税非課税世帯向けの臨時給付金が支給されたように、各種給付金制度による優遇を受けられるケースもあります。

まとめ

所得税はその年の所得に対して課税されるのに対し、住民税は前年の所得に対して課されます。住民税が非課税となる要件は自治体によって異なるため、自身が条件を満たす可能性がある場合には、あらかじめ住んでいる自治体に確認するとよいでしょう。

住民税が非課税となると、税金を納めなくていいという以外にも多くの優遇措置が受けられます。収入が少なく生活が厳しいのであれば、用意されている制度をしっかりと活用するのがおすすめです。