ここ数年マンション価格が上がり続け、簡単には手が届かない高根の花になりつつあります。そんな中、注目されているのが、価格が安い中古マンション。特に、建築後の経過年数の長い、いわゆる「築古マンション」は割安感が強く、人気が高まっています。とは言え、安いなりのデメリットもあるので、それをしっかりと理解したうえで買わないと後悔することになりかねません。

東京23区の新築には年収1,000万円が必要!?

マンション価格の上昇が止まりません。民間調査機関の株式会社不動産経済研究所の調査によると、2021年に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は6,260万円で、2012年の4,540万円から37.9%も上がっています。

なかでも東京23区の新築マンション平均価格は、2012年の5,283万円が2021年は8,293万円ですから、この間の上昇率は57.0%にも達します。8,293万円のうち7,000万円を住宅ローンで調達するとすれば、年利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は19万7,599円と20万円近くに達します。

返済負担率(年収に占める年間住宅ローン返済額の割合)を、無理のない範囲とされる25%以内に抑えるには年収948万円が必要になります。8,000万円の借入額だと必要な年収は1,084万円と1,000万円を超えることになるわけです。

それに対して、国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の年間給与の平均は433.1万円で、男性が532.2万円、女性は292.6万円ですから、23区の新築マンションにはとても手が届かないという人が多そうです。

築古マンションなら築浅の3分の1以下で買える

しかし、中古マンションに目を向ければ、購入の道が開けるかもしれません。

公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査によると、首都圏の中古マンションの築年帯別の成約価格の平均は図表1にある通りです。

築5年までの成約価格は6,866万円ですから、2021年の新築マンションの平均価格6,260万円よりむしろ高くなっています。新築マンションはこのところ新規発売戸数が大幅に減少しているため、新築が無理なら建築後の経過年数の短い築浅物件で手を打とうということで、購入希望者が増加。結果、需給の行き詰まり感が強まって、新築マンションよりも高値で取り引きされるエリアが増えていると言われています。

しかし、築年数が長くなるとじわじわと成約価格が下がってきます。築20年までは5,000万円台なのですが、築25年では4,000万円台に、築30年では3,000万円弱まで下がり、築30年以降だと2,192万円まで下落します。築5年までの築浅マンションに比べれば3分の1以下で手に入る計算です。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構『首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2022年04〜06月】』

築古マンションなら年収の少ない人でも購入可能

平均2,192万円の築古マンションを借入額2,000万円で買うとすれば、金利1.0%、35年元利均等・ボーナス返済なしの毎月返済額は5万6,457円ですから、返済負担率25%以内に抑えるとしても、年収が271万円あれば購入可能です。まだまだ年収の少ない若い人でも、若いうちに買いそびれた年配の人でも、十分に手が届きます。築古中古マンションは、新築マンションや築浅マンションに比べて格段に買いやすいのです。

しかも、成約件数をみても、築5年以内は685件と1,000件以下で、築5年以降から築25年までは1,000件前後、築26年〜築30年は712件に減少します。それが、築30年以降になると2,827件に急増します。築30年から築40年、築50年など対象が広いのでそれは当然のことではありますが、それだけ選択肢が広いのは間違いありません。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構『首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2022年04〜06月】』

リフォーム費用と合計の予算で計画を立てる

ただし、いいことばかりではありません。安いには安いなりの理由があります。そのデメリットを十分理解したうえで購入しないと、買ってから後悔することになりかねません。

まずは、予算面の注意点。築古物件は価格が格段に安い分、老朽化が著しい物件も多いので、リフォーム費用がかかります。

最近はあらかじめ不動産会社などが買い取ってリフォームしたうえで売り出す、いわゆるリノベーションマンションが増えていますが、その場合はリフォームにかかった費用が上乗せされています。リフォームされていない中古マンションを買って、自分でリフォームする場合と比べたときに価格の割安感が小さくなっていないか、総合的に判断する視点が欠かせません。

リフォームされていない状態で購入する場合には、かなりのリフォームが必要になります。壁や床などの張り替え、塗り替え、老朽化した設備の取り換えなどを行ってから住み始めるのが一般的です。その予算がどれくらいかかるのか、あらかじめリフォーム業者に物件を見てもらったうえで見積もりを出してもらい、購入費用と合わせて予算を考えるのが安心です。
最近はリフォーム業者の工事費用の上昇、給湯器などの設備の不足が深刻なので、十分な注意が必要です。給湯器が手配できずに、それだけ入居後の後回しといった困った事例も少なくないようです。

1981年以降のマンションかどうかを確認

建築後の経過年数が長いということは、建物全体の構造面や外観面などに問題が発生している可能性があります。耐震性に問題がないか、何度か大規模修繕が実施されて、安全性や居住性が担保されているかどうかなどを、事前にしっかりと確認する必要があります。

特に地震大国の日本においては、1981年(昭和56年)に施行された新耐震基準を満たすマンションかどうかが重要なチェックポイント。新耐震基準に基づいて建てられていれば、まず問題はありませんが、物件によって維持管理状態が悪いために、耐震性が劣化している可能性があります。念のために耐震診断を行っているかどうかを確認しておいたほうがいいでしょう。

それでも、不安を感じる場合には多少のコストはかかりますが、専門家にインスペクション(建物状況調査)を依頼するのが安心です。

自分の目で共用部と専用部を確認する

購入を決断する前には、自分の目、耳、足を使って実物をチェックしておきましょう。新築マンションは竣工前に売り出されるのが一般的なので、実物を見られないことが多いのですが、中古マンションは実物を見学できるのが大きなメリットです。

マンションの外回りや共用部の整理整頓、維持管理がきちんと行われているか、自分の目で確かめましょう。可能であれば屋上を見せてもらい、雨漏りの元になる亀裂が入っていないか、外壁はどうかなどをチェックします。

また、駐輪場の自転車が整然と整理されているかどうかで、管理の良し悪しをある程度推察できますし、電動アシスト付きの2人乗り、3人乗りの自転車の割合がどうかなどで、住んでいる人たちのライフステージなどを推測することができます。ゴミ置き場の整頓状況で、住んでいる人のマナーなども推測できます。

居室部分についても、遠慮せずに細かくチェックしましょう。できれば押し入れやクローゼットを開けて、天井に雨漏りの跡などのシミがないか、床や廊下にきしみはないかなど入念に確認しておきたいところです。

築年数によって住居部分の広さに大きな違い

築年数によって専有面積が違っている点も頭に入れておきましょう。

図表3にあるように、エリアによって専有面積には一定の差がありますが、築年数によっても違ってきます。

首都圏で一番専有面積が広いのは千葉県で、反対に最も狭いのが東京23区ですが、両者には10平方メートル前後の差があります。それも、築年数によってその差が変わります。

東京23区だと、築5年以内の築浅マンションは58.9平方メートルと60平方メートルを切っています。築5年〜築10年になると60平方メートル台とやや広くなりますが、築26年〜築30年は50平方メートル台、築30年以降は47.9平方メートルと格段に狭くなってしまいます。

千葉県は東京23区に比べるとかなり広く、築16年〜築20年は85.4平方メートルに達しますが、築30年だと67.3平方メートルと70平方メートルを切ります。それでも東京23区に比べるとかなり広いのですが、築16年〜築20年に比べると20平方メートル近く狭くなっています。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構『首都圏中古マンション・中古戸建住宅 地域別・築年帯別成約状況【2022年04〜06月】』

デメリットを理解しておけば後悔は小さくなる

新築マンションや築浅マンションに比べて価格面で圧倒的に買いやすい築古マンション。安いには安いなりの理由があります。知らないで購入すると後悔は避けられませんし、反対にデメリットまで十分に理解して、それなりに対策をとっておけば入居後の満足度が高まるのは間違いありません。

また、入居後にトラブルが発生したとしても、あらかじめその可能性を知っておけば、すぐに対策を打つことが可能で、リスクを最小化できるはずです。メリットだけではなく、デメリットの理解こそ重要なのです。築古中古マンションの購入を検討する際はデメリットにもしっかりと目を向けて、あらかじめ起こりうるリスクを把握し、対応できるようにしておきましょう。