東京の中心に位置する千代田区は、江戸城の別称「千代田城」が区名の由来とされています。かつての江戸城を囲むように街が形成され、皇居周辺には千鳥ヶ淵や北の丸公園など豊かな自然も。日本有数のビジネス街があり、政治・行政の中枢機関が集まる地でありながら、居住エリアとしても高く評価され、人口も増加トレンドにあります。今回は、歴史と伝統を受け継ぐ千代田区の住宅事情とおすすめの街を紹介します。

江戸城下町からビジネス街へ発展、人口も増加トレンドに

千代田区は、23区のほぼ中央に位置し、東は中央区、西は新宿区、北は文京区と台東区、南は港区と隣接しています。区の面積は11.66平方キロメートルで、23区では19番目の広さです。東西・南北ともに約4キロメートルの長さがあり、皇居から東側のエリアはかつて入り江だった埋め立て地で、標高は約2メートル〜32メートルとなっています。

丸の内のオフィスビル群(画像素材:PIXTA)

高度成長期を経て都市機能が集積する一方、千代田区の人口は減少トレンドにありました。昭和後期から平成にかけて千代田区の人口は減少し、1998年には定住人口が4万人を割りました。都市再生特別措置法制定後の2002年以降に秋葉原・神田地域、東京駅・有楽町駅周辺地域が都市再生緊急整備地域に指定され、都市開発が活発化。市街地再開発事業による住宅の供給も増加し、2013年には人口が5万人に回復しました。

近年では、職住近接ニーズの高まりによる都心回帰によってさらに人口が増加。2020年国勢調査による2015年から5年間の人口増加率は、中央区の19.83%に次ぐ14.17%という高い伸び率になっています。

【千代田区のデータ】
総面積…11.66平方キロメートル
人口…6万7,531(2022年7月1日時点)
世帯数…3万8,308(2022年7月1日時点)

江戸城を中心に街が拡大・発展 

皇居外苑と二重橋(画像素材:PIXTA)

1590年の徳川家康の江戸入府から400年あまり、東京は江戸城を中心に発展してきました。城の周辺には、旗本や大名の屋敷が据えられ、その歴史は千代田区紀尾井町(紀伊徳川藩・尾張徳川藩・彦根井伊藩が由来とされる)など、かつての大名屋敷にちなんだ地名からも見受けられます。

江戸末期の町割り・土地利用(出典:千代田の土地利用)

江戸城の拡張によって、街とお堀が「の」の字を描くように発展。起伏のある美しい景観は、皇居周辺を多くの人がランニングしているように、今も多くの人を引きつけています。

国会議事堂(画像素材:PIXTA)

明治以降は、国会議事堂のある永田町や官庁が集積する霞が関など政治・行政の機能が集中。江戸城を囲うようにあったかつての武家屋敷は、日本屈指のビジネスエリアとして発展し、1914年に開業した東京駅周辺の大手町、丸の内、有楽町といったエリアは、オフィス街に生まれ変わりました。

有楽町の駅前風景(画像素材:PIXTA)

歴史を継承する街づくり&充実の教育関連施設

東京駅丸の内口(筆者撮影)

歴史的な遺産が豊富な千代田区では、伝統や文化を継承するまちづくりが行われています。2014年に開業100年を迎えた東京駅は、2012年に丸の内駅舎を復元再生。日本を代表する建築家である辰野金吾の手による西洋風赤レンガの建物は、2017年に整備が完了した丸の内駅前広場とともに東京の新たな観光スポットにもなっています。

三菱一号館美術館(筆者撮影)

三菱が1894年に建設した「三菱一号館」を復元した三菱一号館美術館や昭和初期の帝冠様式建築・旧九段会館を再生した九段会館テラスなど、歴史を継承する開発が各所で行われています。

国立国会図書館(画像素材:PIXTA)

教育関連施設も充実していて、千代田図書館や日比谷図書文化館など区立の図書館に加え、永田町には国立国会図書館もあります。

名門校も多く、1871年開校の千代田区立番町小学校のように150年を超える歴史ある学校も。雙葉、女子学院、白百合学園など私立の名門中・高一貫校もそろっています。また、子ども・子育て支援のための取り組みも積極的で、2011年からの10年間で保育関連施設の定員数は倍増。過去10年間で8回の待機児童ゼロを達成しています。

千代田区の魅力は? 区民調査から住み心地をチェック

人口が増加トレンドにある千代田区は居住年数が比較的短い人が多く、2021年(令和3)年度に行われた千代田区民世論調査によれば、千代田区に住んでから5年未満の人が31.5%、5年以上10年未満の人が20.2%と約半数の人の居住年数が10年未満です。

定住意向については、永住するつもりが28.4%、当分はここに住むつもりが52.8%となっており、定住意向は8割を超えています。

東京駅八重洲口(画像素材:PIXTA)

千代田区に住む魅力トップは「交通の充実」
定住意向者が千代田区の魅力として挙げているトップが、「交通網が充実していて便利だから」の84.7%。千代田区に住むということはイコール、かつての江戸城周辺に住むということ。東京の街が江戸城を中心に広がったことを思えば、利便性の高さは言うまでもありません。

東京駅を例に挙げると、東海道新幹線などの新幹線7路線が乗り入れており、東海道本線、山手線、中央線などをはじめJR9路線の利用が可能。さらに、東京メトロ丸ノ内線ほか地下街を通って東西線、千代田線、半蔵門線の大手町駅も利用できます。高速バスの停留所もあり、羽田空港や成田空港へのアクセスも良好。日本各地や世界へつながりやすい場所と言えるでしょう。

定住理由は「勤務先に近いから」
千代田区には、オフィスビルが集積しており、大企業の本社も多く置かれています。また、霞が関の官庁街や東京法務局が九段南にあるなど行政機能が集まっていることから、千代田区の昼間人口は116万人を超えており、東京都で港区に次ぐ2番目の多さ(2020年国勢調査)となっています。さらに、昼間人口は夜間人口の約17.54倍となり、日本国内でトップの昼夜間人口比率です。

千代田区周辺のオフィスで働く人が多く住んでいるのでしょう。「勤務先に近いから」を定住理由としている人も41.2%と高い数値になっています。

皇居外苑と大手町のビル群(画像素材:PIXTA)

医療・福祉の質の高さ、緑の豊かさも魅力
さらに「医療や福祉などの質が高いから」41.2%、「緑が豊かだから」32.5%も定住理由の上位になっています。都心部から東京が発展したこともあり、多くの医療機関は都心エリアに集まっていることから千代田区にはクリニックや診療所も多く、医療福祉は千代田区民に評価されています。

また、皇居外苑や北の丸公園、千鳥ヶ淵、日比谷公園など、春夏秋冬を楽しめる自然が身近にあります。なかでも、千鳥ヶ淵の桜並木は圧倒的な美しさ。石垣のお堀の水面に向かって咲く桜の花が華やかで、花見の時期は多くの人が訪れます。

日比谷公園(画像素材:PIXTA)

なお、定住理由の2位は、「千代田区が好きだから」の46.3%。千代田区の面積の約20%は、北の丸公園や皇居外苑など皇居周辺エリアが占めます。歴史・自然が多く残されていることは、千代田区の大きな魅力でしょう。

防災力の高さも◎

防災力の高さも千代田区の強みです。埋立地の多い中央区などの東京湾に面した行政区と異なり、住宅地の多くが水害リスクの低い高台に位置します。千代田区のハザードマップによれば、皇居より西側の高台エリアは洪水による浸水リスクは低く、東側の低地側もほとんどが浸水の深さの想定が最大3メートル未満の地域です(一部3〜5メートルの地域あり)。

千代田区の地形(出典:千代田区ホームページ)

また、東京都都市整備局が公表している「地震に関する地域危険度測定調査(第8回)(平成30年2月公表)」によれば、建物倒壊や火災の危険性と災害時活動の困難さなどを総合的に評価した総合危険度は、97%超の地域がもっとも安全とされるランク1に指定されています。

もともと大名屋敷など広い敷地が多かったことに加え、道路が整備され災害時に退避場所となる広い公園も多く、区内全域が災害時の地区内残留地区に指定されている千代田区。都市再生によって古いビルの建て替えが進んでいるのも安心です。

住宅地の平均価格は全国トップ 中古・1LDKタイプは5,000万円前後

職住近接だけでなく充実した医療・福祉や自然と歴史など魅力にあふれ、定住意向も高い千代田区ですが、住宅価格も人気に比例して高くなります。2022年地価公示における千代田区住宅地の平均価格は1平方メートルあたり270万4,300円で、2位港区の207万6,700円を上回ります。

千代田区の街並み 右はローマ法王庁大使館(画像素材:PIXTA)

皇居周辺や有楽町・丸の内といったビジネス街では住宅の供給はほとんどなく、神田、御茶ノ水、飯田橋、九段下、麹町など一部の地域に限られます。昼間人口に対する住宅ストックは限られており、千代田区の住宅価格が高い要因になっています。

淡路町の再開発街区ワテラス(筆者撮影)

オフィスなどの業務施設やホテルなどの需要も高いため用地取得が難しく、新築マンションの供給は限られています。麹町や番町などの邸宅街が立ち並ぶエリアは、専有面積の広いマンションの分譲が中心。神田や秋葉原など交通利便性の高い場所は、1LDKタイプや2LDKタイプのコンパクトマンションの供給が目立ちます。

中古マンションストックも限られるエリアで、流通物件数は市況に大きく左右されます。麹町、半蔵門などの邸宅街は100平方メートルを超える広さのハイグレードタイプのマンションが人気で、選択肢は限られます。築20年未満のタイプでは、2億円を超える価格帯の住戸の売り出しも目立ちます。

秋葉原駅前(画像素材:PIXTA)

また、神田や秋葉原、神保町周辺の中古物件は、1LDKから2LDKタイプのコンパクトな中古マンションの流通が中心です。こちらは1LDKタイプなら5,000万円前後の価格帯から選べるので、職住近接を目指す単身者にはおすすめです。

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秋葉原駅 / 神保町駅

続いて、千代田区の筆者おすすめの街を紹介します。

大手町まで歩いて行ける交通アクセスの良い神田界隈

1つ目は、神田駅周辺です。そのなかでもJR山手線より内側のエリアは、再開発で街が新しくなった大手町にも歩いて行ける近さ。東京メトロ丸ノ内線淡路町駅や都営新宿線小川町駅なども徒歩圏で、フットワークが良好。JR中央線利用なら新宿駅へも3駅です。また、書店が集まる神保町や電気街のある秋葉原、スポーツ用品店の集まる御茶ノ水もすぐ近く。買い物にも便利な街と言えるでしょう。

関連記事:【本当に住みやすい街大賞2019 シニア編】第2位 神田:医療機関が充実、人情と温かさがあふれる街

学士会館(画像素材:PIXTA)

神田駅周辺は、いち早く下水道が整備された街として知られ、都指定史跡となっている神田下水は、今でも一部が利用されています。明治の近代化によって市街化が進んだ半面、築年数の古い建物も多くありました。

この地域では、神田錦町にカフェやレストランを設けたオフィスを中心とした大規模複合施設「テラススクエア」が2015年に開業、2020年には商業、多目的ホール、オフィスなどからなる地上21階建ての複合施設KANDA SQUARE(神田スクエア)が開業するなど、都市再生の動きが活発化しています。

内神田一丁目の開発街区(筆者撮影)

現在、内神田一丁目では、神田・大手町エリアの回遊性向上を促すとともに都市基盤と日本橋川沿いの水辺空間を整備するため、事務所、店舗、ビジネス支援施設などからなる地上26階建ての複合施設が建設中です。また、神田駅西口地区まちづくり市街地再開発準備組合が設立されるなど、ほかの地域でも再開発が検討されています。10年後には、街の姿が大きく変わっているかもしれません。

都市再生の動きもあり新築の供給・中古流通も活発です。新築は、コンパクトなスタジオタイプなら5,000万円台から。中古マンションは、1LDKタイプが4,000万円台から、2LDKタイプが7,000万円台から検討可能です。

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自然が身近な歴史ある邸宅街 麹町・半蔵門周辺エリアはファミリーにおすすめ

2つ目は麹町駅・半蔵門駅周辺エリアです。江戸時代は、旗本の屋敷が多く置かれた地域。現在は、大使館や学校も多く静かで落ち着いた住環境が魅力となっています。千鳥ヶ淵や外堀に囲まれたエリアでもあり、坂の多い地形です。有島武郎や泉鏡花など多くの文化人が居を構えたところとして知られ、趣ある景観は今も一番町から六番町まで続くこの地域の魅力となっています。

三番町のマンション(筆者撮影)

このエリアの魅力は、永田町や霞が関、大手町、赤坂など政治・行政・ビジネスの中心地に近いこと。それに加え、番町小学校や麹町小学校など歴史ある区立小学校があり、都心でありながら家族で暮らしやすい住環境が整っていることです。千鳥ヶ淵や外堀などの自然が身近で、五番町児童遊園や東郷元帥記念公園、千鳥ヶ淵公園など憩いのスポットも身近に。市ヶ谷、四ツ谷といった商業スポットも近くにあり生活利便性も良好です。

地価が高いこともあり、新築マンションは、ゆとりある専有面積の広いファミリー向けの供給が中心。高価格帯になるため天井高を確保するなど、魅力的な商品企画のマンション分譲が豊富にあります。

千鳥ヶ淵沿いに立つマンション(筆者撮影)

人気エリアだけに2億円を超えるような高価格帯の中古マンションが多く、販売価格が5億円を超えるようなプレミアム住戸も。市況によっては、予算があっても購入が難しいときもあります。眺望など住戸条件を重視するのであれば、新築マンションのほうが選びやすいでしょう。

地区計画によって、建物の高さが一定に制限されているところもありますが、高さ制限のないエリアの近くでは隣接の建物で眺望が遮られることも。日当たりや眺望を求めるなら、今の住環境だけでなく将来を見据えて立地を確認することをおすすめします。

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麹町駅 / 半蔵門駅

ビジネスエリアへ直通アクセスの飯田橋 再開発で魅力度アップ

3つ目は、飯田橋駅界隈です。飯田橋駅は、JR中央・総武線、東京メトロ南北線・東西線・有楽町線、都営大江戸線が利用できるターミナル駅。新宿、大手町、池袋、有楽町といったビジネスエリアへ直通アクセスが可能。東京メトロ南北線で麻布十番や六本木一丁目へもアクセスしやすく、拠点性の高い場所と言えるでしょう。

しゃれた飲食店がそろう神楽坂など、オフタイムに過ごせるスポットが身近にあるのも飯田橋の魅力です。プロ野球やさまざまなイベントが行われる東京ドームシティも生活圏。北の丸公園内にある日本武道館も歩いてアクセスできます。

飯田橋駅の西口駅舎周辺(筆者撮影)

都市再生の動きも活発で、飯田橋プラーノや飯田橋サクラパークといったオフィスと住宅などの複合の再開発街区が誕生。JR中央線・総武線飯田橋駅は、より安全・便利に利用できるよう2020年にホームの位置が新宿方面に約200メートル移設され、西口駅舎の改良工事も完了しました。

飯田橋駅前の目白通り沿いでは、飯田橋駅中央地区再開発準備組合や飯田橋駅東地区市街地再開発準備組合などが設立されており、街づくりの検討が進められています。将来的には、街の景色も大きく変わりそうです。

パークコート千代田富士見 ザ タワーの外観(筆者撮影)

パークコート千代田富士見 ザ タワーやプラウドタワー千代田富士見といった駅前再開発街区のタワーマンションは人気があり、3LDKタイプなら2億円程度の予算は必要です。飯田橋駅は、新宿区や文京区からもアクセスできますが、千代田区アドレスのマンションなら2LDKタイプでも1億円超の予算は見ておいたほうが良いでしょう。

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都心居住をかなえ、防災力が高く医療や福祉も充実した千代田区ですが、立地によっては大型の買い物施設が乏しいことは留意点です。昼間人口が多さからもわかるように、オフィスワーカーや学生の多い街であるため、コンビニエンスストアなどが充実している一方、家族向けのスーパーが近くにない場所も。ライフスタイルを踏まえて周辺環境を確認しましょう。

TOKYO TORCH (トウキョウトーチ)の街区内に竣工した常盤橋タワー(筆者撮影)

千代田区に住むことは、かつての江戸の城下町で暮らすと言っても過言ではないでしょう。東京駅の近くでは、大手町二丁目常盤橋地区第一種市街地再開発事業が進行中。TOKYO TORCH (トウキョウトーチ)という呼称で、地上613階建て約390メートルのの高層建物をはじめとする再開発街区の街づくりが進んでいます。再開発事業の一角であり、すでに開業した常盤橋タワーの北側にある常盤橋は、日本橋と江戸城を結ぶ歴史ある橋で、街はさらにアップデートを続けています。

限られた人だけが実現できる千代田区の暮らし。オーナー社長や医師、弁護士などの富裕層に人気があるのも頷けます。資金に余裕がある人は、検討してみてはいかがでしょうか。

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