近頃、「円安が進行」というニュースを良く目にします。実際に、今年に入って急激にドル高円安が進み、1月24日には1ドル=113.47円でしたが、9月7日には144.99円となり、約27%も円は下落しました。円安が進行すると消費生活にはどのような影響があるのか考えてみます。

1.そもそもなぜ急速に円安が進んでいる?

現在、1988年8月以来、約24年ぶりの水準までドル高円安が進行していますが、そもそもどうして円が安くなっているのでしょうか? 

主な原因は日米の金融政策の違いです。アメリカは堅調な消費、資源高、サプライチェーンの悪化などから歴史的なインフレが続いており、インフレを抑えるために大幅な利上げをしています。一方で日本では、景気回復を目指して日銀が大規模場金融緩和政策を続けているため金利は低いままです。

実際に、9月にはアメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が通常の3倍となる0.75%の大幅利上げを決め、アメリカの政策金利は「3.00%〜3.25%」となりました。対して日本の政策金利は「−0.1%」と、金利差が拡大しています。

お金を運用するのであれば、当然、金利が高いドルの方が有利なわけですから、結果、円を売ってドルを買う動きが活発になり、急速な円安につながったのです。アメリカ以外の欧州、豪州などでも金利は上昇傾向で、日本、トルコ、中国以外の主要国のほとんどが現在、金利を引き上げており、ほぼ円独歩安の状況となっています。

2.円安は日本経済にマイナス? プラス?

かつては、円安になると自動車などの輸出企業の収益が増える、外国人観光客の来日で国内消費が増えるなど、日本経済にプラスとのとの見方が主流でした。

ただ、近年では日本企業の多くが海外に生産拠点を移してしまっており、以前ほど輸出面でのメリットはありません。また、コロナ禍で訪日外国人も減少しているので、観光による特需も期待できません。むしろ輸入物価の上昇による家計や企業への影響を考えると、近頃の行き過ぎた長期間の円安はありがたくない悪い円安と言えるでしょう。

では、円安が進むと、私たちの家計にはどう影響するのでしょうか?

3.円安が進むと物価が上がる⁈

日本は、小麦や大豆、肉などの食料品、石油や天然ガスなどの資源エネルギーの多くを輸入に頼っています。特に、資源エネルギーは海外からの輸入が多く、2018年の日本のエネルギー自給率はわずか11.8%です。

円安が進むと輸入物価が上昇するので、結果として、国内物価やエネルギーの価格も上昇します。例えば、「1ドル=100円」のときに、1ドルのものを輸入する場合には100円で買えますが、円安になって「1ドル=144円」になると同じ1ドルのものを買うのに144円も支払う必要があります。

さらに現在は、ウクライナ情勢の悪化や気候変動などでモノの値段自体も値上がりしているので、物価高・エネルギー高に拍車がかかっている、ということです。実際に、7月の輸入物価は前年比48%も上昇しており、これは国内の企業物価を前年比8.6%も押し上げている大きな要因となっています。

輸入物価の上昇が国内の企業物価や消費者物価に影響するまでには、6〜9ヶ月くらい遅れる、というのが一般的な見方なので、今後も物価の値上げラッシュは続きそうです。

エネルギー・食料といった生活必需品の物価が上がってしまうと、同じ水準の生活をしていたとしても、家計の負担は大きくなってしまいます。みずほリサーチ&テクノロジーズのエコノミストの試算(9月7日時点)によると、1ドル=145円まで円安が進み、政府による物価高対策が実施されない場合、食料品、エネルギーなどの価格上昇による家計の負担額は、前年度と比べて一世帯当たり約10万円増えるということです。

4.インフレは資産の目減りにつながる

また、円安によって物価が上昇すると、中長期的にはお金の価値が減っていくことにもつながります。日本はここ20年以上、金利が低い状況が続いています。物価が上昇すると、その分、お金を増やさないと同じものを買えないので、実質的にはお金の価値が減ってしまっていることになります。

例えば、物価が毎年3%上昇した場合、今100万円のモノは5年後には約115.9万円の値段になります。一方、国内の定期預金の金利は0.01%(2021年の平均金利 日本銀行「預金・貸出関連統計」より)ですから、5年間定期預金に預けても約100.1万円(税金等は考慮せず)となります。同じものが買えず、実質的にはお金の価値が減ってしまっている、つまり資産が目減りしていることになります。

インフレによる物価上昇は家計支出の増加と資産の目減りとお財布にダブルパンチというわけですね。

5.円安とインフレによる家計への影響を抑えるには?

では、どんな対策が考えられるのでしょうか?

結局のところ、家計の収支を改善するには、「支出を減らす」「収入を増やす」「資産を増やす」しかないわけですが、家計の防衛策と、特に近頃の状況下で注意しておきたいことをいくつか挙げておきます。

固定費を削減する

ありきたりではありますが、やはり固定費を削減すればその分、毎月確実に支出が減るので効果的です。

スマホのプラン見直し、クレジットカードをできるだけ高還元のカードに切り替えて集約する、使っていないカードは解約、利用頻度の低い年会費や月会費がかかるオプションの解約、公共料金や税金の前納割引や口座振替割引、クレジットカード払いに変更してポイント加算を狙うなど、もし、まだ実行していないものがあれば検討してみましょう。

また、そろそろ買い換えようという家電があれば省エネ家電に替える、という考え方もあります。もちろん初期費用はかかりますが、電気代が高騰している現在では、中長期的に見れば、光熱費という固定費の削減効果でモトがとれます。我が家もクーラーを替えたところ、部屋の冷えが良くなったこともあり、電気代が格段に安くなりました。

本業でのキャリアアップを図る、あるいは副業する

もちろん個々状況は変わるかと思いますが、資格を取得することで収入アップが図れるのであれば挑戦してみる、副業が解禁されている会社であれば、副業するというのも一つの考え方です。

今の会社でキャリアアップや昇給が見込めそうなのかも考え、状況が許せば転職も視野に入れても良いかもしれませんね。

住宅ローンの金利動向には要注意

現在の円安進行は、主に海外と日本との金利差から生じています。日本では引き続き、金融緩和政策が継続される、と考えられていますが、今後、日米の金利差の拡大がさらに広がり、かつインフレが国民の生活に甚大な影響を及ぼすようになると、金融政策の修正を迫られて、金利差の縮小、つまり日本の政策金利を引き上げざるを得なくなる可能性もあります。

当然、政策金利が引き上げられると、住宅ローンの金利も上昇します。現在、変動金利型で組んでいる方は、金利が上昇した場合でも家計が破綻しないか、今一度チェックをしましょう。

金利上昇に耐えられない家計であれば、金利が低い今のうちに全期間固定金利タイプ、あるいは一定期間金利を固定するタイプに借り換える、といった防衛も必要かもしれません。現日銀総裁の任期は2023年春までなので、次の総裁がどのような金融政策を取るかというのも注目です。

その他、セカンドライフや長期的な視野で考えた場合には、iDeCoを活用して節税を図る、というのもひとつの方法です。

iDeCoはセカンドライフ資金を準備する制度ですので、60歳まで途中で引き出しができませんが、掛金について全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になるので、給与に係る所得税・住民税を減らすことが期待できます。2022年10月からは会社員や公務員、自営業者、専業主婦は基本的に誰でも活用することができるようになっているので、老後のために定期などに積み立てているお金があるのであれば、その資金をiDeCoの積立に回すと効果的でしょう。

これらの防衛策は、ひとつひとつは小さな効果かもしれませんが、合わせて考えれば、食料品、エネルギーなどの価格上昇による家計の負担増に対応することもできます。できることから始めて、これをきっかけに将来に備えた資産管理やライフプランについて考えてみても良いですね。