中古住宅市場では、価格の上昇がクローズアップされていますが、そのなかで成約率が高まっていることをご存じでしょうか。新規登録価格(売出価格)からの値引き率が小さくなり、短期間で成約できるようになってきています。売却希望者にすれば、より有利な環境で売却できますが、購入希望者としては、早めに行動しないと買いそびれてしまうことにつながりそうです。

中古マンションは10年で約57.0%の上昇

中古住宅市場では、しばしば価格の上昇が大きく取り上げられます。特に中古マンションの上がり方は尋常ではありません。

図表1にあるように、2011年度には2,516万円だった成約価格の平均が、2021年度には3,949万円となっていますから、10年間で1.5倍以上に上昇したことになります。

価格面では長く横ばいが続いてきた中古戸建て住宅、新築戸建て住宅も、この2年ほどで急上昇しています。新築戸建て住宅は2019年度の3,503万円が2021年度は3,977万円となり、2年間で約13.5%も上がりました。中古戸建て住宅も同様に、3,117万円から3,524万円に約13.1%も上昇しているのです。

こうした動きを見ると、中古住宅を売ろうとする人は強気の値付けが可能で、ほとんど値引きなしに、売出価格に近い価格で売ることができそうです。一方、購入を希望する人は早めに行動しないとますます高くなり、買いにくくなってしまう状況が懸念されます。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」

成約までの値引き率が大幅に縮小している

不動産情報のデータバンクである東京カンテイの調査によると、首都圏の中古マンションに関しては、図表2にあるように、売出価格と成約価格の乖離(かいり)率が縮小し、成約までにかかる期間が短くなっています。つまり、短期間で売出価格に近い状態で売れるようになっているのです。

価格乖離率というのは、売出価格に対して成約価格が何%安くなっているのかを意味します。分かりやすく言えば、売出価格からどれほど値引きされて契約が成立しているかということになります。この数年では、折れ線グラフからも分かるように乖離率が急速に縮小しています。2020年上期の-7.15%から下期には-6.05%になり、21年に入ると上期が-4.63%、下期が-4.55%となっています。

つまり、以前は5,000万円で売り出しても平均して7%ほど安い4,650万円程度まで下げないと成約できなかったのが、今では4,800万円近くで契約が成立するようになっているのです。売出価格のまま、5,000万円で売れている物件も少なくないのではないでしょうか。

出典:株式会社東京カンテイ「中古マンションの価格乖離率&売却期間(首都圏)」

成約までの期間も3ヶ月を切るようになっている

中古マンションが売出価格に近い価格で売れるようになっているわけですが、成約までの期間も短くなっています。

図表2にあるように、2020年には4ヶ月以上かかっていたのが、2021年上期には3,29ヶ月と3ヶ月台になり、下期には2.89ヶ月と3ヶ月を切っています。売り主からすれば、より短期間で希望に近い価格で売れるようになっているわけです。まさに、「売り手市場」と言うことができます。

これは、価格の上昇幅が大きい中古マンションに典型的に現れている傾向です。冒頭で触れたように、最近は新築戸建て住宅、中古戸建て住宅も急速な価格上昇が始まっていて、中古マンションと同じような傾向が見られます。

中古戸建て市場も完全な「売り手市場」に

図表3は、首都圏の中古戸建て住宅の新規登録価格(売出価格)と成約価格の推移を示しています。

2011年度には、売出価格が3,913万円、成約価格は2,936 万円で、売出価格と成約価格の乖離率は約-25.0%でした。ところが、2021年度には売出価格が4,127万円、成約価格は3,524 万円なので、乖離率は約-14.6%です。2011年度には、売出価格から25%近くの値引き交渉に応じないと契約が成立しなかったのが、15%程度の値引きで済むようになっているということです。

買い手側からすると、値引き交渉に応じてもらえる余地が小さくなっていることを意味します。中古マンションと同様に、価格面では売り手優位の「売り手市場」になっているわけです。首都圏新築戸建てについても、同じようなことが当てはまります。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」

新築戸建てはほとんど値引きなしで売れる状態に

首都圏新築戸建て住宅の価格推移は図表4にある通りです。

新築の場合、この1〜2年で急速に価格が上昇しているため、2019年度と2021年度を比較してみましょう。

2019年度の新規登録価格、すなわち売出価格は4,056 万円に対して、成約価格は3,503万円、価格乖離率は約-13.6%でした。2021年度は新規登録価格4,168万円に対して、成約価格は3,977万円、価格乖離率は約-4.6%です。中古戸建て住宅以上に、価格乖離率が縮小しています。

新築戸建て住宅は物件数が減少していて、希少性が高まっているため、ほとんど値引きなしで売れる状態になっていると言っていいかもしれません。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」

新築戸建ての成約までの日数は70日を切る

売り出しから成約に至るまでの日数を見ても、2021年度には大幅に縮小されています。

図表5にあるように、2020年度には、中古戸建て住宅が114.1日だったのが、2021年度には100日を切って95.2日に。新築戸建て住宅は89.7日から69.3日になりました。中古マンションも87.0日から72.1日に短縮されています。

72.1日ということは、月数にすればおよそ2.4ヶ月です。先に紹介した中古マンションの成約までの期間である2.89ヶ月(東京カンテイ調査)より若干短くなっています。

東京カンテイのデータは2021年下期(2021年7月〜12月)、東日本不動産流通機構のデータは2021年度(2021年4月〜2022年3月)と、時期が若干ずれています。東日本不動産流通機構のデータは、2022年のデータも含んでいるため、2021年下期よりさらに短縮化が進んでいるのかもしれません。

出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」

不動産市場には一定期間ごとのサイクルがある

いずれにしても、価格の動向、新規登録価格と成約価格の乖離率、成約までにかかる期間のどれを見ても、現在の住宅市場が「売り手市場」になっているのは間違いありません。

売却を希望している人は、この恵まれた環境を生かして、強気の値付けで売り出しても、希望に近い価格で、比較的短期間に売れる可能性が高いでしょう。購入を希望している人は、さらなる値上がりの前に早めに行動したほうが得策かもしれません。

ただ、いつまでも現在の「売り手市場」が続くとは限りません。過去の不動産市場を見ると、「売り手市場」と「買い手市場」が一定の期間をおいて繰り返すサイクルがあります。いつ、「売り手市場」が「買い手市場」に転じるか分かりません。上手にタイミングをつかめるよう、定期的に市場動向をチェックしましょう。