米通信大手AT&Tによる米娯楽・メディア大手タイム・ワーナーの買収をめぐり、米司法省は12日、買収を承認した米連邦地裁の判断を不服として上訴すると発表した。通信とメディアをまたぐ854億ドル(約9・6兆円)の巨額買収はすでに手続きを終えており、AT&Tは上訴に反発している。

 司法省は、この買収が反トラスト法(独占禁止法)に触れるとして差し止め訴訟を起こしたが、連邦地裁は6月12日、訴えを全面的に退け、無条件で買収を認めた。これを受け、AT&Tは同14日には買収手続きを完了したと発表した。

 これまでの審理で司法省は、新会社がワーナーのコンテンツの値段をつり上げるなどし、消費者に不利益が及びかねないと主張していた。ただ、直接の競合相手が組む「水平統合」に比べ、今回のように業種をまたぐ「垂直統合」は、寡占による弊害が小さいとの見方が一般的。司法省も約40年間にわたり提訴を控えてきた。今回も司法省が不利との下馬評が多かった。

 上訴について、司法省は詳しい理由をまだ明らかにしていない。AT&Tは「この状況で司法省が上訴を選んだことに驚いている。連邦地裁判決を維持する準備はできている」とコメントした。

 AT&Tは携帯電話やネット事業を営む。ワーナーの買収によって、映画スタジオ「ワーナー・ブラザース」や有料テレビ局「HBO」、ニュース専門局「CNN」など豊富なコンテンツを自社に取り込み、急成長する米動画配信大手ネットフリックスなどに立ち向かう狙いだった。

 トランプ米大統領は大のCNN嫌いで知られる。提訴の責任者である司法省高官は、トランプ政権が任命した。ホワイトハウスや司法省は強く否定するが、司法省が買収阻止に動いた背景にトランプ氏や周辺の意向がなかったのかどうか、いぶかる見方が根強い。(ニューヨーク=江渕崇)