作家の中上紀さん(46)が4日、和歌山県新宮市立図書館を訪れ、父親の中上健次(1946〜92)の小学生時代の詩と「対面」した。全集に収録されたのは中学生時代の作品が一番古かったが、同図書館内の資料収集室にさらに古い未収録の詩が寄せられるなどしたため、確認に訪れた。

 詩は2作品あり、一つは千穂小学校(現神倉小)5年のときの「映画」。実家の片付けをしていた同級生が今年、当時の5年生222人全員の詩を収録した詩集を見つけたという。

 12行の詩は「ジリジリとリンがなつた」で始まり、「外へ出ると/日光が目に入るので、目があけられないほど、/まぶしかった」で終わる。紀さんは「映画の内容は3行しかなく、見た行為そのものを詩にしていることからも、貧しい家庭環境のなかで映画を見たことが大変な衝撃だったことがわかる」と話す。

 小学3年の詩は「さいふ」。一度活字にされているが、全集未収録だった。「ぼくは/店やでさいふをかつた/青い小さな/さいふをかつた」と書き出し、「おつりの十円玉を/ころんと入れた」で結ぶ。紀さんは「ちゃんと韻を踏んでいる。最初に財布を買って使った何げない瞬間だが、共感できる」と評した。

 図書館3階の中上健次資料収集室で、これらの詩を閲覧することができる。資料室は「芥川賞作家といってもまだピンと来ない小さな子どもたちにも、この詩を通じて郷土の偉大な作家のことを身近に感じてもらいたい」としている。(東孝司)