肉親が北朝鮮にいるのではないかと訴える人たちが5月にもう一つの「家族会」をつくった。拉致の可能性が疑われる「特定失踪者」の家族たちだ。17日の同じ集会で、会長の大沢昭一さん(81)は「拉致被害者の家族と同様、私たちの声も聞いてほしい」と訴えた。

 1974年2月、弟の孝司さん(当時27)は新潟県佐渡市で行方不明になった。2002年9月に北朝鮮側が拉致を認めた際、曽我ひとみさん(58)が佐渡市で拉致されていたことが判明。昭一さんらは、孝司さんも「拉致に違いない」と考えた。肉親の失踪を訴える家族が相次ぎ、03年1月に特定失踪者問題調査会(事務局・東京)が結成された。

 ただ、同会の代表として支えてきた荒木和博さん(61)は家族会をつくることに慎重だった。政府認定の拉致被害者17人に対し、特定失踪者は少なくとも470人。「時期や場所、拉致の疑いの度合いも様々で、一括して支援するのは難しい」と考えたためだ。

 安倍政権は「すべての拉致被害者を救出する」と掲げる。しかし、全国で講演や署名集めをしても、「特定失踪者って何」という反応を受ける家族がいまだに多い。「ぶつけようのない怒りと、先の見えない焦りが家族会結成につながった」と昭一さんは話す。

 5月の結成時に12だった参加家族は50に増えた。8月、政府が北朝鮮への独自制裁などを拉致被害者家族に説明する場に、昭一さんらも初めて呼ばれた。「小さな変化かもしれない。でも、少しでもよい方向に進むためなら、すべてやり尽くしたい」(清水大輔、編集委員・北野隆一)