これまで到達が困難だった深海。水深4千メートルの海底地図が手軽に手に入ったら、海底油田を効率良く探せるかも――。こんな資源業界の長年の「夢」を競技にした海底探査レースが米国で開かれる。日本の若手研究者らも参加する。

 レースの舞台となる深海は、月や火星よりも知られていない。詳しい地形が分かっている深海底は地球全体の15%のみ。これまで月面に立った宇宙飛行士は、米アポロ計画の12人。一方、太平洋のマリアナ海溝最深部(水深約11キロ)に潜水艇で潜ったのは3人だ。

 「深海は(宇宙と同じ)フロンティアだ。やるからには優勝を目指したい」。日本から参加する「チームKUROSHIO(クロシオ)」の中谷武志代表(37)はこう話す。メンバーは、海洋研究開発機構や東京大などの若手研究者とKDDIや三井造船などの技術者らだ。

 クロシオの海底探査は、洋上の無人船と自動で海中を動き回る自律潜水艇(全長約5メートル)2機で行う。探査位置を指定すれば、出港から寄港まで一連の行程はほぼ自動で行う。無人船が人工衛星から位置情報などを受診し、電波が通じない深海の潜水艇に超音波で伝える。

 クロシオは昨年11月、21チームが参加した予選を通過。9チームが参加する本番のレースは、24時間以内に山手線の内側の約4倍にあたる250平方キロ以上の海底を測量。2日以内に水深4千メートルの海底地図をつくり、正確さを競う。優勝賞金は400万ドル(約4億4千万円)だ。

 従来の資源探査などでは、時速4キロの潜水艇を洋上の船から人が操作し、24時間かけて10平方キロの海底地図を作るのがせいぜいだった。今回は25倍以上の広さを無人で探査する。機材の持ち込みには制限があり、投入する潜水艇の台数を増やすこともできない。

 クロシオは予選通過後、長時間の潜水に備えて潜水艇の電池の容量を増やし、船体を大型化。水深4千メートルの水圧に耐えるチタン製のフレームを作り、船体や音波の通信機器も変更した。

 通信を担当するKDDI総合研究所の小島淳一さんは「潜水艇が圏外にならないように音波を使って、うまく制御することが重要になる」と話す。(田中誠士)