地上の明かりが消えた2011年3月11日夜、恐怖や不安の中、満天の星を見上げた人たちがいた。あの星空への思いを集めた仙台市天文台のプラネタリウム特別番組「星よりも、遠くへ」が、今年3月から各地のプラネタリウムで投映される。

 がれきに囲まれて、避難した校舎の屋上で、家族を待つ家で。あの日見た星空を強烈に記憶する人は少なくない。仙台市天文台では証言を集め、東日本大震災の当日の夜空を再現する番組「星空とともに」を、12年3月に公開した。今回はその続編だ。

 震災当時高校1年生だった阿部任(じん)さん(24)は、祖母と2人で9日間、宮城県石巻市の実家に閉じ込められた。津波に流されながら、辛うじて持ちこたえた一室。夜は寒さで眠れず、天井の隙間からのぞく空を見ているしかなかった。

 9日後の救出は大きなニュースになった。「奇跡の人」と特別扱いされることに、戸惑った。長い間、語ること、振り返ることは避けてきた。自身の体験を誰かと共有するのは難しいと感じたからだ。

 阿部さんは番組の中でこう語っている。

 「あの夜は多くの人が星を見つめていたそうです。それなら僕もその中の一人に過ぎない。『震災の夜は星がきれいだったね』。誰かにそう言えるだけで、僕は少しホッとする」