日本列島に接近する台風10号の影響で、各地の新幹線駅や空港は14日午後、ふるさとからの帰京を早めたり、旅程を変更したりする人たちで混み合った。

 「東京、大阪方面の自由席、すでに満席となっております。台風10号の影響で大変多くのお客様にご利用いただいております」

 午後5時ごろ、JR岡山駅の新幹線改札口。大きなバッグや土産袋を手にした利用客らに、駅員がメガホンで呼びかけていた。

 東京都練馬区の小学5年生、安田茉希(まき)さん(10)は母親とともに帰省していた岡山市の祖母宅から15日に東京に戻る予定だったが、14日に前倒し。岡山ではプールや蒜山(ひるぜん)高原に行って夏休みを楽しんだ。「早く帰ることになって残念です」

 東海道新幹線で東京駅に降り立った東京都北区の青戸優子さん(37)は、夫(38)と長女璃子ちゃん(4)と広島県福山市の実家に帰省していたが、山陽新幹線の計画運休を知って帰京を早めた。「帰れなくなったら、仕事に影響が出る。早めに判断しました」と青戸さん。璃子ちゃんは「なんで早く帰ってきたの。(いとこの)お姉ちゃんともっと遊びたかった」と不満げだった。

 東京都豊島区の派遣社員の女性(32)は、岡山県倉敷市の実家から予定の1日前に帰京した。東海道・山陽新幹線の計画運休を知ったのは14日午前。16日から仕事があり、「仕事に穴をあけるわけにはいかない」。心配性の母からも「早く帰りなさい」とせかされ、14日夜に予定されていた親戚約20人が集まる恒例の宴会をキャンセルし、新幹線に飛び乗った。

 倉敷市は1年前の西日本豪雨で大きな被害を受けた。実家は無事だったが海に面した場所にあり、高潮が心配だという。女性は「警報が出たらすぐに避難してと母に言って別れました。心配で後ろ髪をひかれます」と話した。

 「このお盆は、台風のせいで予定が狂いまくりです」。品川駅では14日夕、津市の自営業の女性(46)が、長男(7)の手を引いて名古屋へ向かう東海道新幹線に乗り込んだ。

 夫の実家がある宮崎市に15日までの予定で家族で里帰り。宮崎空港を14日に発つ飛行機の全便欠航が決まると、運航の再開が遅れることを危惧し、13日夜の便で夫の単身赴任先がある東京へ。15日まで滞在するつもりだったが、今度は新幹線が計画運休することになった。「15日に乗れないと仕事に響く」ため、14日中に東京を発つという。

 羽田空港には、大きな荷物を持った人たちが続々と到着した。広島市の公務員川口知佐子さん(37)は、15日に広島空港を発ち、羽田経由で青森県に観光に行く予定だったが、広島は台風の進路に近いため、1日前倒しで東京入り。1泊して友人と青森に向かう予定だが、「バタバタで、旅行前から疲れました」。

 熊本県天草市の実家に帰省していた会社員の宮崎勇太さん(22)は予定していた飛行機より4時間早い便に乗った。「今日までゆっくり家族と過ごすつもりだったけど」と話した。

■阿波踊り、23年ぶり2日間中止

 台風の影響で各地でイベントの中止も相次いだ。

 12日から4日間の開催予定だった徳島市の阿波踊り。台風のため、14、15両日が中止になった。2日間の中止は23年ぶり。実行委の松原健士郎委員長は「盛況だっただけに残念。来場者の安全を第一に考え、早めに決断した」と話した。

 14日午前8時。中止を受け、晴れ間がのぞく徳島市役所前では業者が演舞場のちょうちんや電飾などの撤去を始めた。JR徳島駅前の案内所は、交通機関の運休などで足止めされた観光客らに宿泊施設などの情報提供を始めた。

 有名連(グループ)の一つ天水連の連長で、阿波おどり振興協会理事長の山田実さんは「また練習を積み上げて、来年はもっとすばらしい音と踊りを披露したい」と話した。

 チケットの払い戻しも決まった。方法は15日午前10時に公式ホームページ(https://www.awaodori.tokushima.jp/)で知らせる。

 香川、岡山両県の離島などで開かれ、国内外から多くの人が訪れる現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」は、14日午後から約160ある作品の大半が公開を休止した。15日も一部を除いて終日公開を見合わせる。野外の展示も多く、事務局の職員らは14日までに小さい作品は屋内に移し、大型のものはコンクリートブロックにくくりつけて固定するなどした。

 芸術祭は2010年から3年に1度開かれているが、会期中の全面的な公開休止は異例。事務局によると、お盆の行楽シーズンで混雑を見込んでいたが、来場者の安全確保を優先したという。会場の島と高松港を結ぶフェリーと高速船も15日は全便が欠航する。

 大勢の海水浴客でにぎわう和歌山県白浜町。台風の接近で高波の影響があるとして、町は14日に白良浜など町内4カ所の海水浴場を全面遊泳禁止にした。

 白浜観光協会の藤田正夫会長は「宿泊者のキャンセルが相次いでいる。影響が長引けば、18日に予定している花火大会の開催も危ぶまれる」と話した。

 大阪市中央区の大阪国際平和センター(ピースおおさか)では、15日午後2時から予定されていたイベント「戦争犠牲者追悼式と平和コンサート」が台風の接近に伴い、中止となった。(佐藤常敬、尾崎希海)