名古屋市長選(11日告示、25日投開票)に立候補する横井利明市議(59)の公約「全市民に2万円分商品券配布」が議論になっている。横井氏は「財源的に可能」とするが、4期目をめざす河村たかし市長(72)は「買収じゃないか」と批判する。

 横井氏は、商品券配布で「社会に漂う不安を解消し、市民に寄り添う姿勢を見せたい」と新型コロナウイルス下の経済対策と位置づける。市内で使える商品券を全市民約230万人に12月までに配るという。「商品券なのですぐ市中に環流し、経済回復に大きく寄与する」と話す。

 類似の公約は昨年10月に愛知県岡崎市長選で「1人5万円還元」を掲げた新顔が、同11月には兵庫県丹波市長選で「現金5万円給付」を掲げた新顔が当選したがいずれも財源問題や市議会の反対などで実現していない。名古屋市の場合、単純計算でも460億円必要。横井氏は、2750億円ある市の基金を活用し、国から交付金が出ればそれも活用するという。

 だが、市は「基金を目的外に使うことは地方自治法上できない」と説明する。基金の8割に当たる2299億円は市債(借金)の返済に積み立てた「公債償還基金」で、市債残高は1兆6442億円に上る。

 横井氏は「基金は市民のみなさまから預かった大切なお金。非常に生活が厳しいなか一度みなさんに戻し、景気がよくなったら基金に戻す」と説明する。

 実際は、市も今年度予算でコロナ下の「緊急避難措置」として17年ぶりに公債償還基金から70億円借り入れる形で収支不足を補った。市幹部は「国は計画的な積み立てを指導しておりグレーな手法。今後も国が何も言わない保証はない」とする。

 河村氏は「国もいいことは言わんはずでできないのでは」「愚民政治。買収じゃないか」と非難する。その上で河村氏がアピールするのは看板政策「市民税減税」だ。「名古屋は10年間で1千億円減税し、税収はその倍になった。毎年確実にみなさんに返し、安くすると可処分所得が増えて税収が増える」と訴える。さらに昨年4月以降に出産した世帯に5万円相当のベビー用品などを贈る事業を8月に始めると強調。2年分で約20億円を見込み、今後も継続するという。

 ただ、河村氏を支援する減税市議も「横井氏の2万円分商品券配布は市民の反応がいい」。河村氏は2次公約も発表するとしており、対抗策を「ちょっと考えている。1年だけ配るものではなく、効果が持続し、庶民に手厚くというのが政治の基本」と述べた。

 名城大・昇秀樹教授(地方自治論)は、現金などを支給する公約が相次ぐ背景について「平時ならバラマキ批判につながるが、コロナ禍で困窮している人が多く大義名分が立ちやすいのだろう。有権者は持続可能な政策か、税金の使い方として有効か、冷静に考える必要がある」と話す。(堀川勝元)