プラスチックや医薬品といった様々な有機化合物を効率的につくる反応法を編みだすのに貢献し、2010年にノーベル化学賞を受けた米パデュー大特別教授の根岸(ねぎし)英一(えいいち)さんが6日、米インディアナ州で死去した。85歳だった。同大が10日、発表した。

 1935年、中国長春生まれ。神奈川県立湘南高、東京大工学部を経て、帝人入社。60年にフルブライト奨学生として米国に留学。帰国後に帝人を退社し、米パデュー大博士研究員などを経て79年に同大教授。99年には特別教授になった。

 根岸さんは70年代に、2種類の有機化合物の炭素同士を結びつけて新しい物質をつくる「クロスカップリング」反応の研究で、パラジウムを使った触媒に、亜鉛やアルミニウムなどの化合物を使うことで合成できる物質を増やし、効率を上げた。「根岸カップリング」と呼ばれ、この成果をもとに、今では医薬品や農薬、液晶などの製造に応用されている。産業化しやすい形にさらに改良した北海道大名誉教授の鈴木章さんらとともにノーベル化学賞を10年に受賞した。

 教育や研究のあり方についても、積極的に発言した。海外に積極的に出て見聞を広めることを若い人に説き、「学生に理解させるより、自分の趣味を優先するような授業はダメ」と語っていた。

 18年に米中西部イリノイ州で自動車事故を起こし、同乗していた妻すみれさん(当時80)を亡くした。

 ノーベル賞のほか、96年度日本化学会賞、98年米国化学会有機金属化学賞、00年度英国化学会フランクランド賞、10年文化勲章に選ばれた。東京大総長顧問、帝人グループ名誉フェロー、ソニー非常勤特別研究顧問、科学技術振興機構総括研究主監なども歴任した。