寺院や神社に集まったさい銭を、商店で出すお釣り用に両替する動きが広がっている。集まった小銭を紙幣に替えたい寺社側、お釣りの小銭が欲しい商店側。両替は双方にとって好都合という。動きが広がる背景には、金融に関する近年のある変化があった。

 「いやあ助かりますわ。うちは現金のお客さんなんでお釣りがないと困ります」

 大阪府大東市の野崎観音(慈眼寺)を訪れた巽泰子さん(47)が、顔をほころばせながら言う。「お役に立てるならこちらもうれしいです」。和尚の杉山雄峰さん(50)も笑顔だ。

■頭抱える寺社と商店 解決策に……

 巽さんは野崎観音近くの野崎参道商店街でパン店を営む。今年初め、「どうしよう」と頭を抱えた。近くの金融機関が2月、小銭に両替する際の手数料を引き上げるという。硬貨11枚以上だと手数料が660円以上かかる。「1円を両替しただけで結構な赤字や」

 地域に根ざし、お年寄りのお客も多い商店街では現金払いが好まれる。巽さんの店も9割が現金でのやりとりだ。お釣りのための小銭の確保は必須だった。

 その頃、大阪府交野市の住吉神社がさい銭を両替するサービスを始めたと知った。財務省によると、1998年の外為法改正で、現在は許可なしで誰でも両替することができる。野崎観音でもできないか、巽さんは杉山和尚に相談した。

 野崎観音の方でも、一部の金融機関にさい銭を入金する際の手数料を値上げされ、困っていた。ゆうちょ銀行は今年1月に硬貨預け入れの手数料を新設し、他の金融機関も続く流れにあった。杉山和尚は言った。「やってみましょうか」

 巽さんらは2月、野崎観音を訪れ、まずはさい銭を硬貨の種類ごとにえり分けてみた。「これがえらい大変で」と杉山和尚。4人で2時間かけ、約12万円分の硬貨を仕分け。硬貨は希望する商店に両替で渡した。

 2回目は4月。21万円が引き換えられた。杉山和尚は「アマゾンで硬貨を仕分ける道具を買い、ちょっと楽になりました」。巽さんは「ほんまに助かります。これからもお願いします」と頭を下げた。