元検事の落合洋司弁護士 確定判決で認定された死因に疑問を投げかける、事故死の可能性を指摘する新鑑定が限られた資料に基づいているのは事実だが、決定は第3次請求審で再審開始決定を取り消した最高裁決定を踏襲し、「疑わしきは被告人の利益に」という観点での踏み込み不足との印象を受ける。

 検察や裁判所は事件の「流れ」を重視する傾向にある。捜査機関によって作り上げられたストーリーに拘泥せず、事件を見直すことが無辜(むこ)の救済につながることを、裁判所は認識すべきだろう。一方で弁護側も「流れ」を否定するために、新たに提示する証拠によって「点をつなげて線にする」争い方が必要だ。

 元東京高裁判事の門野博弁護士 事故死の可能性を指摘する新鑑定を「否定はできない」と認めるも、今回も新たな証拠には高いハードルが設定された。科学的に供述を分析した証拠が採用されなかったほか、事件の根幹となる共犯者の自白の変遷など、旧証拠の信用性を検討していないことは、再審判断のあり方全般にも影響を与えかねない。新証拠は各裁判所が証拠に基づいて判断すべきだ。同一事件であることから『有罪』との烙印(らくいん)が押され、最高裁の判断内に収めようとしてはいないか。(中山直樹、古畑航希)

■鹿児島地裁の決定骨子

◆救急救命医の鑑定は、頸椎(けいつい)損傷に陥って呼吸が停止した可能性があることは否定できない程度で証明力は認められるが、確定判決の頸部(けいぶ)圧迫による窒息死との認定に合理的疑いを生じさせるものとは言えない

◆男性宅に運ばれた時点ですでに死亡していたとする救急救命医の鑑定の存在を踏まえても、軽トラックの荷台に乗せて男性宅まで届け、生きている状態で土間に置いて立ち去ったという近隣住民2人の供述は十分に信用できる