高知のご当地クラフトコーラ「sawachina(サワチナ)」を最近、高知県の観光地でよく見かける。200ミリリットル入りの小瓶に原液を詰めて売っている。土佐文旦や仁淀川山椒(サンショウ)など高知の産品が主原料。ふたを開けるとスパイスが香る。炭酸で3〜4倍に薄めて飲むと確かにコーラだ。甘すぎず、辛みがあり、体に良さそう。
商品化したのは、高知県いの町にすむ小野義矩(よしのり)さん(39)。もともと川崎市の会社員で2017年、いの町に移住して地域おこし協力隊員になった。「高知の新名物を作りたい。カッコ良くて、健康的なものを」と考え、19年初めに見つけたのが、東京で人気が出始めていた、果物や香草を煮詰めてつくるクラフトコーラだった。取り寄せて飲んでみたら、おいしくて、元気がでた。
高知らしさを表現できる原材料を、ネットや知人を介して探した。生産量全国1位の「生姜(ショウガ)」。香りのする植物「ヤブニッケイ」や「仁淀川山椒」。芸西村でサトウキビからつくる「白玉糖」、黒潮町の「天日塩」。ベースとなる五つの素材を見つけた。
さらに、高知の食文化を調べるうち、柑橘(かんきつ)を食材にかけて香りをつける「酢みかん文化」を知った。文旦、ユズ、ダイダイ、ブシュカン、レモン、ミカン……と多様な柑橘が高知にはある。その年の収穫量や季節に応じて使う柑橘を変えることにした。「味が変わる方が面白いと思ったんです。その時に一番良い物を使い、生産者に無理なく寄り添える」
クラフトコーラブームの草分け的な存在である「ともコーラ」の創業者で調香師の古谷知華さん(31)を東京に訪ね、試作品を作ってもらった。それを手に県内の生産者を訪ねて協力を依頼した。農家や観光協会職員に声をかけて試飲してもらったのが2019年暮れのことだ。
高知には、大皿に色々な料理を盛りつける皿鉢(さわち)という名物がある。「皿鉢みたいに高知を丸ごと1本に詰め込んだコーラ」という意味を込め、「皿鉢みたいな」を縮めて商品名にした。ラベルデザインやPRは、インスタマガジンを発信していた高知の若い女性2人組に頼んだ。
難航したのが、しっかり加熱殺菌・少量生産してもらえる工場探し。結局見つからずに大阪の業者に頼んだ。20年6月に通販サイトをつくって売り出した。
発売から3年。東京や神奈川の「あたらし物好きな人」が顧客の中心だ。いの町のふるさと納税返礼品になり、高知龍馬空港などで販売され、百貨店系の通販品にも選ばれた。年間8千本を出荷する。古谷さんは「高知の一級生産物を横串でつないだ傑作」と絶賛する。
原料の一つである青ユズを提供している安芸市の柑橘農家、千光士尚史さん(42)も「高知の特産品をミックスしているのに、うちの青ユズのフレーバーもしっかり残っていておいしい。なにより、高知の食材に価値を見いだして新商品を開発してもらえたのがうれしい」と話す。
小野さんは「このコーラを通じて高知の風土、生産者、食材を知り、その楽しみ方を知ってもらえたらうれしい」と話している。
◇
sawachina(サワチナ) 200ミリリットル瓶が税込み2160円、720ミリリットル瓶が4212円。商品の公式サイト(https://www.kochicraftcola.com/)で通信販売もしているが、現在は品切れ中で10月に販売再開する予定。(蜷川大介)