天皇陛下が退位の意向をにじませるおことばを発してから8日で1年。2015年まで侍従長を務めた川島裕氏(75)が朝日新聞のインタビューに応じた。川島前侍従長が在任中から、陛下は加齢により先々、象徴としての務めを果たすことが難しくなった場合でも天皇の位に在り続けることがあるべき姿なのか、「次第に考え始めておられた」と明かした。

 陛下は昨年8月8日のおことばで「全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています」と語った。それから10カ月たった今年6月、国会で退位の特例法が成立。川島氏は「陛下のお気持ちに共鳴した国民の総意にもとづき、退位が実現することになったのはよかった」と話す。

 川島氏が、陛下が追い求めた象徴の意味合いを「如実に感じた」のは11年の東日本大震災だったという。天皇陛下は、発生5日後にビデオメッセージで、「被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、様々な形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います」と語り、その後、皇后さまと7週連続で被災地や避難所を回った。宮城県南三陸町の避難所では、行方不明の孫娘の写真を差し出した女性を気遣い、福島県を訪れた際には県産の野菜も購入した。

 「象徴の具体的なあり方は憲法に書かれていない。両陛下は各地で出会う人々と、心を込めて話をされ、視線を一瞬でも合わせる。お迎えした側は喜び、元気づけられる。そうした相互作用の積み重ねこそが、象徴天皇の意味だと感じた」という。