(16日、大相撲名古屋場所8日目)

 「ここまで来たんだ」。初の横綱戦に高ぶる、25歳の宇良。受けて立つ白鵬はじっとその目を見ていた。

 一瞬の静寂の後、大歓声に包まれた立ち合い。白鵬は右手を宇良の眼前に出した。突進を止めつつ、左に動く。上からつぶしにかかったが、宇良は耐えた。

 しかし、互いに右が入って、形勢は一気に白鵬へ。左で相手の右を抱え込んで強引に胸を合わせ、右から豪快にすくった。宇良は仰向け。「宇良をウラ返したね」と、白鵬はしてやったりの表情で振り返った。

 4日目に対戦した20歳の貴景勝、6日目に挑戦を受けた25歳の北勝富士も初顔だった。10年前、白鵬が横綱に昇進した時、宇良と北勝富士は中学生。貴景勝は小学生だった。成長著しいこの新世代に、白鵬は警戒心を隠さない。

 東前頭4枚目の宇良は、上位に休場者が出たから対戦が組まれた相手だ。この日の朝は身長174センチの宇良を想定し、同部屋で173センチの石浦を稽古相手に選んだ。馬力のある北勝富士は、うまくいなしてつんのめらせた。「力でねじ伏せて欲しかった」と北勝富士からぼやかれたが、衰えを自覚する32歳の白鵬は、経験値をフルにつぎ込んで、15日間の長丁場を戦っている。

 43度目の中日給金。単独トップに立ったが、「当然でしょう」と薄く笑うだけ。勝てば元横綱千代の富士の通算1045勝に並ぶ9日目の土俵も、23歳の輝から初めて挑戦を受ける。(鈴木健輔)