(9日、高校野球 松商学園12―3土浦日大)

 第99回全国高校野球選手権大会第2日の9日。9年ぶりに出場を果たした松商学園(長野県松本市)を応援する阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)の一塁側アルプススタンドに、昨年1月に急死した同校の吹奏楽部員、合屋(ごうや)和輝(かずき)さん(当時16歳)の写真があった。指揮者の譜面台の上に置かれ、応援曲を奏でる仲間の吹奏楽部員たちとともに、試合を見守った。愛用のサックスは他の部員が演奏した。

 「和輝がいるようで、うれしい」。和輝さんの母、ゆかりさん(48)は、土浦日大の最終打者を青柳真珠(ましゅう)投手(3年)が、三振に仕留めると、スタンドで目頭を押さえた。

 「甲子園で野球部の応援演奏をしたい」。和輝さんが、そう口にするようになったのは2年前の1年生の夏。長野大会で野球部を応援し、スタンドでアルトサックスを演奏したのがきっかけだった。帰り道の車中、ゆかりさんに「今日の試合はヤバかった」。野球部や、当時1年生ながらベンチ入りした同級生の青柳投手のことを誇らしげに話した。

 「甲子園で吹きたい」。部活動に消極的だった和輝さんの姿勢が一転した。朝練のため午前6時半に家を出て、練習後、午後9時半ごろ帰宅。日々の練習が実を結び、部内のオーディションにも合格した。

 ところが昨年1月17日、和輝さんは、家族と過ごして帰宅した玄関で、突然倒れ、亡くなった。心臓発作だった。

 葬儀には400人以上が参列。その中に青柳投手もいた。1年生の夏、「すごいね、がんばってね」と合屋さんから声をかけられた。同じ甲子園を夢見ていたと、死後に知った。

 3年になった最後の夏、青柳投手は、エースとして甲子園出場の夢をかなえた。甲子園で初練習を終え、初戦を控えた5日、和輝さんの母、ゆかりさんのツイッターに長文のダイレクトメッセージ(DM)を送った。

 「必ず合屋君を甲子園に連れて行くんだという強い気持ちを常に持ち続けてやってきた」「その夢を合屋君と共に叶(かな)えることができて本当によかった」「勝ち進んでいくことで1試合でも多く合屋君に甲子園を応援させてあげたい」

 初戦を完投し、2回戦進出を決めた青柳投手からは笑顔がこぼれた。

 「合屋君の夢をかなえられてよかった。次の試合も応援よろしくと言いたい」(関口佳代子、大野択生)