(9日、高校野球 明徳義塾6―3日大山形)

 自分の右手から離れた白球が、甲子園の土の上を転がっていく。「頭が真っ白で。どうしたらいいのか」。痛恨のミスで明徳義塾に決勝点を奪われた。日大山形の遊撃手、鹿野(かの)の涙が止まらなかった。

 同点の延長十二回。2死一、二塁で三遊間にゴロ。逆シングルで捕った。そこからの出来事は、忘れたくても忘れられない。「サードに投げようと思ったら、前に出てて。セカンドに切り替えて投げたんですけど……」。体をねじって送球したが、しっかり握れていなかった。大きくそれ、二塁走者が生還。その後も2点適時打で、計3点を勝ち越された。

 十回の守りでも、鹿野はエラーをしていた。だからこそ、心に誓っていた。「一つのアウトをしっかりとろう」と。十二回の場面、その気持ちが先走ってしまった。投げなければ、失点はしなかった。でも、リスクを冒してアウトをとりにいってしまった。「ボールを捕ったら安心してしまったんです。悔しいです。最後に僕が全部壊してしまった」。号泣した。

 その裏、3点を追う攻撃。荒木監督に「顔が死んでるぞ。前のことは忘れて打席に入れ」と言われた。2死からの四球と安打。仲間が鹿野に打席を回してくれた。ここまで二塁打2本と好調だったが、打ち上げてしまった。ショートフライ。最後のバッターになった。

 泣きながら取材を受けていると、あとからその輪に入ってきた記者が言った。「監督さんが『甲子園に来られたのは鹿野のおかげもありますから』って言ってましたよ」。でも、いまはまっすぐ受け止められない。「でも、自分がこの試合を崩してしまって。いままで指導してくださったのに、申し訳ないです……」

 後輩には必ず甲子園に戻ってきてほしい、と話した。「僕みたいなミスをしないように。伝えたいです」。泣き顔ではあったが、自分と向き合い、なんとか前向きに言った。立派だと思った。これが鹿野が野球を通じて学んできたことなんだろうと思った。(篠原大輔)