(17日、大相撲秋場所8日目)

 立ち合い、豪栄道は左で玉鷲のほおを張った。一瞬、顔を下げた相手の両脇に右、左とねじ込む。万全の両差しで一気に寄った。不戦勝を含め5勝6敗だった苦手に、完勝した。

 2日目からの7連勝。大翔丸と阿武咲の両平幕に後れを取ることなく、31歳の大関が1敗を守った。首位で中日を折り返すのは、2014年秋場所の大関昇進以降では2度目。前回は、同じくカド番で全勝優勝した1年前の秋だった。

 大関らしい相撲が今場所ずっととれているわけではない。会心と言えるのは正代を押し切った7日目とこの日くらいで、2日続けて立ち合い変化も見せた。八角理事長(元横綱北勝海)はこの日の張り差しにも「小細工」と顔をしかめ、「内容はまだまだ。阿武咲の方が(場所を)引っ張っている感じ」と厳しい。

 ただ、6度目のカド番大関はなりふり構っていられない。「どんな内容でも勝ちは勝ち。勝つと気分がいい」。内容より結果を求め、勝ち越しに王手をかけた。

 カド番で複数回の優勝を果たした大関はいない。今場所は白鵬、鶴竜ら合口で圧倒されている格上が不在で、「一人横綱」日馬富士も本調子ではない。豪栄道が存在感を取り戻すには、格好の舞台が整っている。

 「自分がやるべきことをしっかり決めて、実践すればいい」。99年ぶりに3横綱2大関が休場した、ただならぬ事態も追い風にして豪栄道が再び輝けるか。(鈴木健輔)