2010年サッカーワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で、試合結果を次々と的中させたドイツのタコ「パウル君」を覚えているだろうか。ロシア大会でも、その大役を担う動物がいる。耳の聞こえない白ネコ「アキレス」だ。すでにロシア国内では人気者だが、その実力やいかに?

 そのネコはロシアの古都サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館にすんでいる。

 案内してくれたのは、ネコの「秘書役」というマリア・ハルツネンさん。世界遺産の壮大な建物の階段を下りていくと、天井の低いトンネルのような地下道が現れた。扉の一つを開けると、「ミャーオ」と声がする。

 「ここがネコのおうちです」。配管の上を歩いていたり、床に寝そべったり。よく見ると薄暗い地下室の至るところにネコがいる。

 エルミタージュ美術館の地下に70匹ものネコがすんでいるということは、知る人ぞ知る話だ。美術品をネズミから守る「警備員」として大切にされている。

 歴史は18世紀にさかのぼる。ピョートル大帝の娘、女帝エリザベータが、ネズミ被害への対策として「優秀なネコたち」を取り寄せたのが始まりという。

 以来、この建物にはネコたちがすみ続けてきた。第2次世界大戦では町が包囲され、60万人以上が餓死し、ネコがほぼ絶滅するという悲劇も。だがその後、中央ロシアから連れてきたネコたちが美術館の象徴として市民に愛され続けてきた。

 そんなネコたちに「大役」の依頼が舞い込んだのは1年前。W杯のテスト大会でもあるコンフェデレーションズカップに向け、「予言役のネコを1匹選んで欲しい」とサッカー協会から頼まれたのだ。

 特別なネコを選びたい。美術館職員らの目に留まったのが「アキレス」だった。真っ白な毛並み、青い目、折れた尻尾――。魅力的な外見に加え、「耳の聞こえないネコに幸せを与えたい」という思いもあった。

 アキレスはこの大会で、4試合中3試合の結果を見事に的中。一躍、注目を集める存在となり、W杯本大会での続投が決まった。

 アキレスにはW杯の観戦チケットを持つ人たちに配られる身分証「ファンID」も支給される特別待遇。ホスピスを訪問し、難病の子どもたちを勇気づける活動にも参加する。

 肝心の「試合予想」はこれからだ。

 まずは14日の開幕戦ロシア―サウジアラビアに向け、前日に記者会見に登場し、運命の予言をする予定。両国の旗を立てた2皿のエサのどちらかを選ぶ形式になりそうだ。

 一時はエサの食べ過ぎからか太りすぎてしまったアキレスだが、最近は900グラムのダイエットに成功。大舞台に向け、コンディションは万全だという。(サンクトペテルブルク=高野遼)