(13日、高校野球 星稜6−3立命館宇治)

 少し不可解な継投に見えた。星稜の林和成監督は九回、マウンドに左腕の寺沢を送り、奥川を右翼にまわした。リードは3点。六回のピンチで送り込んだ絶対的エースを、安全圏とはいえない状況で降板させた理由とは何なのか。試合後、林監督は言った。「私のエゴです」

 1年前の夏の甲子園。2回戦の済美(愛媛)戦で、タイブレークに入った延長十三回に逆転サヨナラ満塁本塁打を打たれ、11―13で敗れた。そのとき、マウンドにいたのが6番手の寺沢だった。

 林監督が続ける。「同じ2回戦でああいう負け方をしていましたし、なんとか最後、いいウィニングボールをあげたかったので。勝利の瞬間をマウンドで味わわせてあげたいと思った1年間でした」

 そんな思いを知らずに、寺沢はマウンドにあがった。「去年の怖さも思い出したけど、それに負けていたら、どんどん悪い方向にいく」。先頭に四球を与えたが、昨夏に得た教訓を胸に丁寧な投球を貫いた。「戻ってこないといけない場所に戻ってこられた。たくさんの観客の前で投げられて、楽しかった」。無失点でリードを守り切った。

 星稜にとって、5年ぶりの3回戦進出。「去年は、継投で悔しい思いをした。去年できなかったことを今年はできた。選手たちをたたえたい」。林監督の表情が、少しだけ緩んだ。(小俣勇貴)