【2017年7月19日 IAC】

質量の大きな天体の近くを通る光の進路は、その大質量天体の重力によって曲げられる。この「重力レンズ効果」により、光を発した天体の見かけ上の形が変わったり明るさが増幅したりするので、重力レンズ効果がなければ見えないような暗い天体や細かい構造を調べることができるようになる。

スペイン・ポリテクニカ・デ・カルタヘナ大学のAnastasio Díaz Sanchezさんたちの研究チームはこの効果を利用して、かみのけ座の方向約100億光年の彼方に、天の川銀河の1000倍も明るい銀河を発見した。この銀河は、遠赤外線を強く放射するサブミリ波銀河の中で最も明るいものだ。

発見された銀河の重力レンズ像
(白い矢印)発見された銀河の複数の重力レンズ像(提供:Hubble Space Telescope)

「地球と銀河との間に位置する銀河団が作る重力レンズのおかげで、本来よりも11倍大きく明るい銀河の姿を見られました。さらにその銀河の像は、銀河団の最も密度の高い部分を中心とした複数のアーク(円弧)、いわゆる『アインシュタイン・リング』となって現れました。重力レンズ効果による光の増幅はスペクトルの特徴に影響を及ぼさないという利点があるので、遠方の天体をまるで近くから観測しているかのように調べることができます」(Díaz Sanchezさん)。

このサブミリ波銀河の特筆すべき点は星生成率が高いことだ。天の川銀河の星生成率は1年で太陽2個分ほどであるのに対して、発見された銀河は年間太陽1000個分の割合で星が誕生している。

銀河がもともと明るいうえに、その光が重力レンズで増幅され、明るい複数の像が見られるおかげで、銀河内部の特徴を調べることが可能である。「この種の天体には、宇宙で最も活発な星生成領域が存在しています。次のステップは、そこに存在する分子を調べることです」(スペイン・カナリア天体物理研究所 Susana Iglesias-Grothさん)。