【2017年7月31日 VSOLJニュース】

著者:前原裕之さん(国立天文台)

たて座は天の川の中にあり、いて座とわし座、へび座(尾部; Serpens Cauda)に囲まれた比較的小さな星座ですが、変光星を観測している人にとってはたて座R星やたて座δ星でおなじみの星座です。たて座の中に6月に発見された新星ASASSN-17hxが、7月下旬になって9等まで明るくなり、小口径の望遠鏡でも見えるようになっています。

新星を発見したのは、オハイオ州立大学が中心となりハワイとチリでそれぞれ4台の口径14cmの望遠鏡とCCDカメラを使って超新星のサーベイを行っているAll-Sky Automated Survey forSupernovae(ASAS-SN, "Assassin")のグループで、6月23.47日(世界時)に撮影された画像から12.5等の新天体(ASASSN-17ib)を発見しました。その後、この天体は6月19.41日に14.7等、20.45日に14.1等に増光してきたところを発見された天体(ASASSN-17hx)と同一であることがわかり、ASASSN-17hxと呼ぶことになりました。この天体の位置は以下のとおりで、たて座γ星の近くです。


赤経 18h31m45.92s
赤緯 -14°18′55.6″ (2000年分点)

たて座の新星
たて座の新星(撮影:alphavirさん(投稿画像を一部編集)。画像クリックで投稿画像ギャラリーのページへ)

天体の分光観測は6月24日にブルガリアのロジェン天文台の2m望遠鏡で行われ、スペクトルに電離した水素の出すHαやHβ輝線の他、ヘリウムや窒素などの輝線が見られることがわかりました。また、中性ヘリウムの輝線はP Cygプロファイルを示しており、これらの特徴からこの天体は古典新星であることが判明しました。

新星は発見された後も増光を続け、発見直後には12等の明るさでしたが7月上旬には11等まで明るくなりました。それに伴ってスペクトルにも変化が見られ、発見直後には中性ヘリウムや1階電離した窒素の輝線が見られたものの、7月上旬にはそれらの輝線に代わって1階電離した鉄の輝線が見られるようになりました。このような、新星爆発直後のまだ完全に明るくなっていない状態では中性ヘリウムの輝線が見られ、その後極大付近ではヘリウムが弱くなり1階電離した鉄の輝線が強くなってくるようなスペクトルの変化は、極大光度になる前に発見された他の新星(V5558 Sgr=いて座新星2007や、V2944 Oph=へびつかい座新星2015など)でも観測されており、比較的遅い減光を示す新星の爆発直後から極大にかけてのスペクトルの変化として普遍的なものなのかもしれません。

この新星は7月20日ごろまでは11等ほどの明るさで観測され、大きな明るさの変化は見られませんでしたが、21-22日ごろから急増光を始め、7月23日には10等、26日には9等にまで明るくなりました。これに伴いスペクトルにも変化が見られ、水素のバルマー系列や1階電離した鉄の輝線のP Cygプロファイルの吸収成分が強くなりました。同様の変化は前述のV5558 SgrやV723 Cas(=カシオペヤ座新星1995)でも観測されており、今後の明るさの変化やそれに伴うスペクトルの変化が注目されます。

たて座の新星の位置
たて座の新星の位置。クリックで拡大(「ステラナビゲータ」で表示)