【2017年8月8日 東北大学/国立天文台】

大きな銀河は長い年月の間に矮小銀河がたくさん集まることによってできたと考えられている。矮小銀河が親銀河と合体するときには潮汐力によって形が壊され、ばらばらになった星々は元の矮小銀河の軌道に沿って筋状に分布していく。この「恒星ストリーム」はこれまでに天の川銀河やアンドロメダ座大銀河で確認されており、「銀河の化石」として銀河の歴史を解明する上で重要な情報源となる。

東北大学の田中幹人さんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)を使って、「クジラ銀河」という愛称で知られるりょうけん座の渦巻銀河NGC 4631とその周りを観測した。クジラ銀河は約2300万光年彼方にあり、すばる望遠鏡で星一つ一つまで詳細に観測できる銀河としては最も遠い銀河だ。近くには杖のような形に見える「ホッケースティック銀河」NGC 4656があるが、2つの銀河の形が共に崩れていることから、両銀河は物理的な影響を及ぼし合って合体し、さらに大きな銀河へと進化し始めようとしているところだと考えられ、その間をつなぐ恒星ストリームのような構造が見えると期待されていた。

クジラ銀河とホッケースティック銀河
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC)で撮影されたクジラ銀河NGC 4631(右上)とホッケースティック銀河NGC 4656(左下)(提供:東北大学/国立天文台、以下同)

観測では両銀河をつなぐような構造はとらえられなかったが、恒星ストリーム2個と、クジラ銀河と合体する前の矮小銀河11個、計13個の「銀河の化石」が見つかった。遠方の銀河の化石をこれほど多く、一つ一つの恒星に分解して撮影できたのは世界初だ。

クジラ銀河とホッケースティック銀河、2つの恒星ストリーム
クジラ銀河とホッケースティック銀河、2つの恒星ストリーム。恒星ストリームはクジラ銀河とほぼ同じ距離にあり、右上の恒星ストリーム(NW)はクジラ銀河より向こう側、左下の恒星ストリーム(SE)はクジラ銀河より手前側に位置している

観測データをもとに恒星ストリームまでの距離を推定し、そこから理論的な星の進化モデルと恒星ストリームの星々の色や明るさを比較すると、恒星ストリームの金属量分布を調べられる。金属量分布からは2つの恒星ストリームの起源が同じであることが示され、その起源となった矮小銀河の質量は太陽の約4億倍と非常に小さいことがわかった。

また、合体前の矮小銀河はバラバラになっておらず原形をとどめた形で発見されている。恐竜の化石をバラバラになった骨として発掘したのではなく丸ごと発掘したようなもので、重要なサンプルといえる。

11個の矮小銀河
クジラ銀河の周辺の矮小銀河(3は、先行研究では矮小銀河だと思われていたが、背景の銀河や手前にある恒星などクジラ銀河とは関係がない天体が重なって見えていただけだということがわかった)

クジラ銀河は天の川銀河やアンドロメダ座大銀河に比べて小さく、周りの銀河と激しく影響し合っている特殊な環境下の銀河であることから、今回の発見は銀河の歴史の多様性を理解する上で重要な手掛かりになると期待される。